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第2回 大阪・関西の未来を拓く
万博・成長型IR・夢洲まちづくりシンポジウム 開催報告

2019年12月18日
メイン会場:佐治敬三メモリアルホール
第2会場:301号室
第3会場:304号室

「第2回 大阪・関西の未来を拓く万博・成長型IR・夢洲まちづくりシンポジウム」を、2019年10月7日(月)、大阪大学中之島センター(メイン会場:佐治敬三メモリアルホール、第2会場:301号室/テレビ同時中継、第3会場:304号室/テレビ同時中継)において、夢洲新産業創造研究会主催で開催致しました。一般社団法人関西経済同友会様、公益社団法人関西経済連合会様、大阪商工会議所様に名義後援を賜り、厚く御礼申し上げます。株式会社梓設計様、伊藤忠商事株式会社様、株式会社大林組様、株式会社コングレ様、サラヤ株式会社様、けいはんな情報通信オープンラボ研究推進協議会様、株式会社JTB様、西尾レントオール株式会社様、滋慶学園グループ様、大成建設株式会社様、凸版印刷株式会社様、日本コンベンションサービス株式会社様、日本電気株式会社様、株式会社博報堂様、南海電気鉄道株式会社様、富士通株式会社様、丸一鋼管株式会社様、株式会社三井住友銀行様、吉本興業ホールディングス株式会社様、ロート製薬株式会社様、他複数社様にご協賛のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。平日午後からの開催にも関わらず、経済界、学界、医学界、経済団体、行政機関等から500名を超える方々にご参加いただき、第2会場、第3会場を増設して盛大に開催できましたことを御礼申し上げます。

開会のご挨拶

福島 伸一 氏
株式会社大阪国際会議場 代表取締役社長 公益財団法人大阪観光局会長
一般社団法人関西経済同友会 MICE・IR推進委員会委員長
本日は500名を超える本当に多くの皆様にご参加いただき、誠に有難うございます。このシンポジウムは夢洲新産業創造研究会主催の下、多くの団体、企業の皆様にご後援、ご協賛いただき、盛大に開催できますこと、御礼と感謝を申し上げます。本日は、夢洲新産業創造研究会の皆様と、各界を代表する方々からご講演、プレゼンテーションをしていただきます。素晴らしいお話をお聞かせいただけると大変楽しみにしております。長丁場になりますが、、最後までお付合いいただけますよう何卒宜しくお願い致します。
さて、3カ月前にG20大阪サミットが開催されました。全世界に大阪の魅力を発信し、おもてなしでお迎えし、そして、「大阪トラック」、「大阪ブルーオーシャンビジョン」という2つの宣言文も採択され、無事成功裏に終了致しました。そして、現在開催中のラグビーワールドカップ、10月末には、ツーリズムEXPOジャパン2019がございます。さらに2021年のワールドマスターズゲームズ関西、そして、本日のテーマでもあります2025年大阪・関西万博、IRの開業と、非常に国際的なビッグイベントが目白押しで、大阪はまさに国際都市へ大きく飛躍する絶好のチャンスを迎えているのではと思います。
万博につきましては、「いのち輝く未来社会のデザイン」の基本コンセプトの下、SDGs、Society5.0の社会を実現するために、日本の英知を集めて検討、議論をされているところでございます。一方、大阪・関西におきましても、経済会やアカデミア等々で非常に活発な議論がなされており、本日は夢洲新産業創造研究会第4部会が万博についてプレゼンテーションをするので、大変期待をしています。
IRにつきましては、ここ1、2カ月、目まぐるしい動きがあるのではと思っています。今年2月に「大阪IR基本構想案」、4月にRFCの事業者公募が開始されており、経済界がこれまで色々な提言や要望を行った内容が盛り込まれており、私共としては喜ばしく思っております。そのような中、8月に松井市長は環境アセスメントをIR事業者決定前に前倒しでやると発表されました。一方、国におきましても9月4日に「IR基本方針案」を公表され、現在、パブリックコメントを募集されています。この法律におきましては、私共が強く要望しておりましたRFPの早期の実施、一部早期開業といったことが法案に記載されており、大変喜ばしく思っております。IR事業者様にも、色々動きがございまして、新聞報道によりますと大阪のRFPに手を挙げる会社は3社あると報道されており、本日はその内の2社であるMGM様とギャラクシー様がこの場でプレゼンテーションをして下さるということで、熱い内容になるのではないかと大変期待しております。そして先日、松井市長、吉村知事からは年内にもRFPを実施し、来年の春には事業者を選定し、2020年万博前の開業を実現すると表明をされており、すごいスピードで前向きに動いていると、大変わくわく感を持っています。
関西経済同友会はこれまで大阪府市、国、IR事業者に対し、数多くの提言や要望を行って参りましたが、IRを成功する大きなポイントであるRFPと事業者選定は、まさに最終のステージに差し掛かっていると思いますので、今後もそのフォローと見届けをしながら、ここにいらっしゃる皆様方のご支援・ご協力をいただきながら、大阪・関西らしい、世界に類のない成長型のIRを実現をしていきたいと思いますので、今後とも宜しくお願い致します。
最後に、本日のこのシンポジウムが大阪・関西の成長を牽引し、さらに元気にするシンポジウムになることを祈念いたしまして、開会のご挨拶とさせていただきます。

ビデオメッセージ

西村 康稔 氏
経済再生担当大臣 全世代型社会保障改革担当大臣
本日は、大阪・夢洲の将来を語り合う第2回目のシンポジウムに多くの皆様がご参加をされて盛大に開かれますことをお祝い申し上げたいと思います。
私の選挙区は兵庫県の明石と淡路島ですが、地元の皆様、そして、大阪はじめ多くの皆様のご支援の賜物として、こうして責任のある仕事をやらせていただいていることに感謝を申し上げます。与えられた仕事をしっかりと責任を果たしていきたい。特に日本の経済をしっかり成長させていく。経済が成長すれば、税収は増え、担い手が増えておりますので、社会保障も余裕ができてくる。年金の財政、医療の財政も良くなると思いますので、安心の社会保障のためにも、まずは経済が大事。その姿勢で臨んでいきたいと思っております。日本経済、人口が減るから先行き苦しいのではという声をいただきますが、人口が減り始めているにも関わらず、成長できております。今年は過去最高の62兆円を超える税収の見込みでありますし、失業率は2.2パーセントと過去最低水準で、雇用所得の環境が非常に良くなっております。この成長の軌道をしっかり未来に向かって確実なものとしていくために、新しい成長戦略をしっかりと打ち出していきたいと思っております。そうした中で、関西は大阪万博、そしてIRも考えておられる。是非、起爆剤として大いに期待をしています。
今、ラグビーが非常に盛り上がっており、来年にはオリンピック、パラリンピック、ワールドマスターズも盛り上がります。どんどん盛り上がってくる中で、大阪万博、ぜひとも世界中の国が、それぞれの国の個性を出しながら、そして何より、日本の新しい姿、特にSociety5.0と言われる新しい技術、最先端のロボット、ドローン、自動運転等、様々なデータを活用して人工知能が色々な産業の新しい姿を世界に発信をするチャンスであります。
IRも色々と計画が進んでいるかと思いますが、カジノという施設は中核として必要ですが、一方で、ショッピングセンターやホテル、日本型の様々なエンターテイメントを示す場所となっていただきたいと思いますし、松井市長よりスーパーシティ、あらゆるものの自動化や、新しい技術を使ってデータをそれぞれのところから全部集めて活用することで、新しいビジネスや、住民の利便性が向上していく姿を描きたいというお話がございました。スーパーシティ法案も秋の臨時国会に提出する予定でございます。是非、日本の成長を引っ張っていく大阪・関西であってほしいと思います。
関西国際空港も昨年の大雨の被害から復活し、インバウンド1000万人を超えるお客様が来てくれていると思います。日本全体では3000万人を超え、来年オリンピックのときには4000万人、さらにその先には6000万人という大きな希望を持っております。是非、関西が牽引していかなければいけない。大阪、京都、奈良、姫路城へは既に多くの外国人が来てくれておりますが、淡路島も明石も美味しいものもありますし、大自然もあります。関西それぞれに魅力があり、美味しいものがあり、そして何より人情があります。勿論、商売上手な面もそこにあるわけですけれども、是非、大いにアイデアを出していただき、日本の成長を引っ張っていただきたい。新しい技術を開発し、それを見ていただく、活用していただく、海外の人にも味わっていただく機会を、万博、IRの計画を通じて花を開かせていただきたい。
東京は東京で頑張ってもらって、日本の成長、引っ張ってもらいたい。国際金融都市として頑張ってもらいたいところでありますけれども、大阪も東京に負けずに頑張っていただきたい。
私も関西の皆様のご支援をいただきながら、こうやって仕事ができております。関西代表として、日本全体が明るい未来が切り開いていけるようにしっかり頑張っていきたいと思いますので、ご指導いただければと思います。
本日お集りの多くの皆様の知恵と力が結集し、大いに盛り上がって、将来に向けてこのシンポジウムが大きな一歩となることを期待申し上げたいと思います。本日は本当におめでとうございます。参加できなくて本当に申し訳ないですが、このような形で激励のメッセージとさせていただきます。ご盛会、おめでとうございます。

特別講演

演題「これからの50年をデザインする」 奥山 清行 氏
工業デザイナー 株式会社KEN OKUYAMA DESIGN代表取締役
大阪メトログループ最高デザイン責任者(CDO)
皆様が、恐らく理解していらっしゃるデザインというのは、スタイリングというか、色とか形だけで終わってしまうお話が多いですが、ちょうど万博のテーマであります「いのち輝く未来社会のデザイン」という言葉そのものに代表されるように、色々な創意工夫や、設計がデザインの本来の意味です。
1964年の東京オリンピック、その後の1970年の大阪万博は世界にとって画期的なイベントで、日本がこれを機にモダンな近代国家に脱皮していく1つの大きなきっかけになりました。実は、1964年の東京オリンピックは色々な世界で初めてのことがあったのです。例えば、市川崑さんの記録映画が、映画として一流以上の素晴らしい内容であったということ。それから、ピクトグラム。色々な公共の場でサイン計画というのはよくご覧になると思いますが、これが始まったのが東京オリンピックです。世界で初めてきちんとデザインガイドラインをつくり、色々な方が読まなくても分かるサイン計画をしました。それから、建築は1964年をきっかけにして素晴らしいモダン建築を、東京に関しては新幹線、首都高等、素晴らしい様々なインフラがこれからできあがりました。それを受けての1970年の大阪万博は日本の経済成長の真っ只中で、岡本太郎氏の太陽の塔をはじめ、素晴らしいものは今でも残っております。
さて、今、それを受けて、2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博、そして、2024年を目指してIRが開業されるこの機会を使って、何をできるのかを考えたいと思います。都心で仕事をしながら、郊外に対してきちんと交通機関をつくり、住宅を作って、都心へ通勤通学をするという考え方はあの万博のころから始まりました。さて、我々は今回何をできるのか。本日はウェルネスという中でも元気が出るまちとは何か、未来都市のプロトタイプを夢洲につくりたいという2点に絞ってお話をさせていただきます。
まず、無理を承知で申し上げますが、万博はどうしても国単位でパビリオンをつくる仕組みになっています。同じ国でも色々な産業、企業があります。1つの考え方として国という枠はあったとしても、それをプロジェクトや1つのテーマを単位としてパビリオンができないのかと以前から思っています。国という枠を取って、テーマや技術、未来のビジョンを主点にして集まったパビリオンという考え方もあるのではないかと思います。
さて、50年後の未来をデザインすると2070年です。2025年が決してゴールではなく、その先の今から50年後の夢洲・大阪、そして、日本・世界の未来がどうあるべきかということをまず考え、そこから遡って2025年までに何ができるか。その後の2期、3期計画で何ができるかということを考えるべきだということを皆様に申し上げたいです。万博とIRの壁を越えて2070年に向かって残るべきまちは何かを皆様と一緒に考えていきたいというのが本日のテーマです。
2070年から遡って、2025年までに何をすべきかと考えると、ゾーニング、動線計画、モビリティ等色々な課題が見えます。昼間だけ潤うまちではなく、人に住んでいただき、起業家や若い方、世界中の富裕層等に来ていただき、住みたくなるまちをつくることで24時間生きているまちを構築できないかと思います。
デトロイトとシカゴという2つの例があります。デトロイトはダウンタウンに自動車の工場やオフィス街をつくって、郊外に住宅地をつくりました。ですから、夜になると真っ暗で怖くて入っていけません。シカゴは町の中に住宅地、商業地区、オフィスを全部同じ場所につくりました。マンハッタンも同じです。ですから、24時間生きているまちというのは、人が住んで、働いて、楽しい色々な行いをして、それで初めて24時間生きていくまちがつくれると思います。
今の高層ビルのコミュニティの問題は、垂直方向にはエレベーターという素晴らしい人類の発明があります。実はエレベーターのスピードというのはフェラーリよりはるかに速いです。あの加速度、減速度で垂直に人間が動くことができるのは、重力に反して重力を使って動いているからです。ところが、水平方向になると人が倒れます。物につかまったり、シートベルトをしたりしないと、水平方向に移動できないのが現在の技術です。
品川新駅の新しいまちづくりの懇談会で課題になったのが、6本の高層ビルを建てて、横方向で何とかブリッジでつなげないかということです。つなげられれば横方向の各層でコミュニティがつながりますが、その技術は今ありません。ですから、これを機に色々な方々に技術開発をしていただき、世界で初めて横方向に動くエレベーターをつくれないかという課題です。高層ビルのコミュニティをつくり、横方向でつなぐことによって、地面は緑化することができ、屋上にはヘリポート等もつくることができます。
また、起業家、大企業の方は、他の国の時差に合わせて自分の労働時間をずらしている方がほとんどです。そうすると、24時間に渡っての移動パターンも問題になってきます。0時、1時で電車止めてしまってはまちとして機能しなくなります。
さて、2025年までに何ができるのかを考えましょう。例えば、大阪メトロの中央線をJR桜島線とつなぐことを将来的には実現してほしいです。それに向けて実際の計画を立てる必要あるだろうと。その場合に、商業施設もありますが、2025年の万博会場が大きく手前の敷地にあります。敷地の使い方、それを全体計画として一緒に考えていかないと、時間はそれほど残されておりません。震災のときに大変苦労されて、使用目的の明確でない夢洲に来ていただいたコンテナのターミナルですが、動線としてあの場所がベストじゃないかもしれません。動いていただけるとしたならば、今よりもっと良いところはどこなのか。決して損を与えず、この事業を動かす今以上の立地条件はないのかを一緒に考えていければ、全体効率にとって理想ではないかと思います。というのは、あの場所は海外から来る豪華客船の一番良いターミナルになる場所です。ですから、何とか活かしていければと思います。
さて、色々なブランド、施設において、エクスペリエンスピラミッドが重要です。一番上に全体イメージとして何を置き、その中に重要なコアになる部分として何を置くか。ピラミッドをつくり、ゾーニングを決め、構築していくことが極めて重要です。混ぜるのではなく、上に行ってみたいと思わせるようなピラミッドをつくるのが本当のブランディングであると思います。
まさかアートやデザインが経済を引っ張る時代になるとは私も思っておりませんでしたが、アートやデザインというのは、実は美術館にしても博物館にしても、再開発の計画の中で重要な位置付けを占めています。ポイントは、ウェブの時代だからこそ、その場に行かないと体験できないこと、例えば、祭りです。日本は各地に素晴らしい祭りがありますから、どんな祭りが夢洲でしかできないだろうと考えてみたいと思いますし、例えば、大阪には非常に素晴らしい芸人、芝居の文化があり、インバウンドの方が喜ぶ非常に素晴らしいネタがあります。
また、今年の夏ラスベガスで久しぶりに「O」を見て、本当に素晴らしく、涙が出るくらい喜んで帰ってきましたが、悔しいのは、シルク・ドゥ・ソレイユを呼ぶよりも、日本で何とかパフォーマンスはできないかということです。先日、ネザーランド・ダンス・シアターという世界で最高レベルのコンテンポラリーダンスの東京公演があり、非常に素晴らしいものでした。ところが、その中に6人の日本人の方がいました。本当のアートとしてのダンスというのは、東洋では日本人が飛び抜けて素晴らしいそうですが、彼らは日本に舞台がなく、所属する組織もないので、海外に出て、海外で生涯を終えるそうです。日本でこそ、生涯色々な人材が育って、活躍していただけるような舞台をつくるべきじゃないかと思います。
特にインバウンドに対して、日本・大阪って何だろうと考えたときに、祭りやアート以外にもe-Sportsやアニメもあります。本当の意味でのクールジャパンを実現し、体験していただきたいと思います。その中で収益源として極めて重要になってくるのがMICEです。ラスベガスというのはノンギャンブルの売り上げ75パーセントで、世界中のIT系の方や、ベンチャーの方が移り住んでおり、エネルギーや、モビリティ、ベンチャー等色々なイノベーションが集まっています。
誰がどこでMICEを行うべきかと考えたときに、家族の方が何をするのかが極めて重要になります。それがないと、大きいコンベンションセンターだけつくったって、誰も行きません。MICEの非常に重要なポイントとしてそれを理解すべきだと思います。
JRのクルーズトレイン「四季島」のプロデュースをしたときのお話ですが、最初はエクステリア、インテリアのデザインをJRの方から依頼されましたが、その旅で何をしていただくかトータルエクスペリエンスをプロデュースさせていただけるならばと受けさせていただきました。そして、日本で初めてミシュランの星を海外で取った中村氏に食の代表者になっていただき、お寿司屋さんやフランス料理店等全部で120軒ぐらいのレストランをまわり、どこに料理を出していただけるかを検討しました。また、家具メーカーや照明器具メーカーですが、家具の納品数は20脚程度です。1脚5万円として、100万円の売り上げにしかならないので、このために新規開発できないと断られました。そこで私はJRの方にこれと同じ商品を市販化し、四季島に納めたとPRで使えるように許可をくださいとお願いしました。参加メーカーが収益を上げられる形をつくり、初めて成立するのです。さらに、青森駅に朝着いて、乗り換えて、日本海をずっと東京まで戻ってくるのですが、そこで何をするのかが全然ありませんでした。青森には、青森県立美術館にシャガールがアメリカン・バレエ・シアターのために描いた実際の絵が、2021年まで4枚全部揃っています。そこで、四季島のお客様は朝5時半に青森県立美術館に入っていただき、誰もいないところで1時間その絵が見られるのです。そのためだけでもお金払っても良いと思うようなすごいことです。その近くに三内丸山遺跡があり、そこにある研究所には縄文の土器があります。四季島のお客様だけは研究員が横に付いて、土器に実際に触れるのです。
トータルエクスペリエンスを提供して、初めてその旅全体に意味が出てくると提案し、採用されました。ところが、これは34名のお客さまに対して17名の乗組員が乗るので、どう考えたって赤字です。3泊4日で1人100万円っていう値段だけが一人歩きしましたが、3泊4日で3400万しか売り上げが上がらないのです。それに対して乗組員が17人、4日間付きっきりで乗るのですが、問題はその17人の乗組員が色々なことを全部やるのです。JRの方だけではとても敵わないので、JALの方に2年間出向していただき、JTBの方も3名出向していただいて、サービスとはなんたるかをJRの方に教えていただきました。ところが、入り口でいらっしゃいませと言った服装で、ご飯を出し、リネンを替えていたら嫌でしょう。そこで、1人4着のユニフォームを皇室の衣装をデザインされている滝沢氏に、デザインしていただきました。滝沢氏は自分の作品として世に発表できるからと、ボタンからロゴから何から全部素晴らしい精度でつくってくださいました。そこまでやらなければ、サービス業は意味がないとJRの方々とお話をしました。
さて、アラブ首長国連邦のマスダール計画が進行中ですが、砂漠のど真ん中に人口 6万人のまちをつくる計画のモビリティデザインで2009年に私も参加しました。その段階で既に、ポッドカーというセグウェイの技術を使った2輪走行の無人車両が走行できる技術を川崎重工等色々な方と一緒に開発をしました。今回、動線で考えたいのは、これからは公共交通機関と個人の交通機関が一体化してきます。オンデマンドで、そのモビリティとして全体がつながってきます。未来の技術をベースにして、個人・公共の枠を超えて、全体のモビリティを考えましょうということがポイントだと思います。
大阪は、世界の中で非常に稀な道路と地下鉄、水上動線が、見事にバランスが取れている素晴らしいまちです。さらにこれを超えて、空に初めてエアモビリティを考える官民協議会に昨年参加させていただきました。最初、空飛ぶ車なんてあり得ないだろうと思いましたが、電動化することによって5億円のヘリコプターが数千万まで下がり、1年間に5000万円かかるメンテナンス費用もほぼただになります。ですから、これが実際にビジネスになる可能性を既にエアバスはサンパウロで、オンデマンドでのヘリコプターサービスを空港からダウンタウンまで行っています。ただ、日本に足りないのは、ヘリポートです。ヘリポートの許可が下りないので、都内には、23区内には1カ所しかありません。それ以外は、降りられないヘリパッドです。階段はなく、実際に荷重は1トン以上、受けられない。ちょうど、今のドローンが150m、そこから上のヘリコプターが150m以上の高さを飛ぶ、その中間のところで飛ばせるようになったときにインフラができているように、法令がきちんと整備されているために今から始めないと、世界に置いていかれます。
災害が多いまちのこれからのまちづくりは何だろうと思い、土台が20mあり、その下に色々な施設があるようなまちづくりはできないかと考えました。世界の色々な海沿いの町で海抜が0m以下のところが沢山あります。例えば、東北大震災の場合、地震から津波まで15分間ありました。15分間で、女性の方が子どもを背負って、老人の手を引いて歩ける距離は500mが限界ですので、1kmごとに避難塔をつくれば、多くの命が助かっただろうと考えると悔しいじゃないですか。ところが今鉄塔の避難塔を建てると50年持ちません。この前の台風でも倒れました。ですから、今こそ、国家プロジェクトとして、鉄を使わない新しい素材で避難塔を作りたい。例えば、鉄塔が安価で、耐久性が100年あっても美しい浜辺に醜い鉄塔が建ったら、嫌じゃないですか。美しくなきゃいけないということで、私は平成希望の五重塔と名前を付けて色々な方に見ていただいおります。
夢洲は色々な意味でこういったこともできる、大きいきっかけになるのではと思っています。これは世界に広がる大きい重要なプロジェクトになり得ると思います。私はファシリテーターで、こういった議論の場を設けるのが私の立場であって、デザイナーは皆様です。誰でもデザインできる時代です。だからこそ、今、企画書で書く1枚の絵をみんなでシェアすることによってビジュアリゼーションが起こって、1枚の絵に対して大反対も起きる、大賛成も起きる。そこから議論を始めていきましょうというのが、最後のポイントです。行政や業界の垣根を越えたマスタープランづくりを皆様と一緒に、今この場から始めていきたいと思います。ご清聴誠に有難うございました。

「万博・成長型IR・夢洲まちづくり」アンケート報告

栗原 智一 氏 皆様にも非常にご協力いただき、示唆に富んだアンケート結果と思っております。5つの論点をご紹介しながら、この後の部会発表や、IR事業者様のお話の中で、ソリューションが出てくるのではと期待したいと思っております。
このアンケートを始める前に、最初に当研究会のゴールとして、「夢洲モデルの新産業創出」ということで、夢洲が世界初のイノベーションリゾートシティとして持続可能に成長するためにゴールに掲げながら、4つの部会で今まで検討を進めて参りました。それぞれに検討している内容について、広く皆様の意見をお聞きしたいということで、21問のアンケート調査を実施させていただきました。
アンケートの概要ですが、対象者は経済会を中心にアカデミアや、行政の方々からも幅広くご意見を伺えました。内容は皆様の自由な意見を聞きたいので、選択肢を用意するよりも自由回答を多く設定させていただきましたが、85名もの方にご回答いただき、非常に有難く思います。基本的に自由回答で、質問数も多いので、関心を持つ分野に対して回答していただく方式を採用しましたので、それぞれの質問の回答数は異なります。実施期間は5月1日から6月20日までさせていただき、非常に長い文章で丁寧にご回答いただき、専門的な内容も含めて、新しいアイデアも示唆に富んだ内容が多く含まれておりました。誠に有難うございました。
それでは、5つの論点についてご説明させていただきます。まず1つ目ですが、「夢洲で体験できるコンテンツへの期待」です。これはエンターテイメント・スポーツ分野の質問で、リーディングエッジ・最先端と、トラディショナルを表現したいという声に分かれていました。VRを使った最先端の技術と日本の古典芸能等の伝統的なコンテンツ、さらにこれらを合わせるようなものをつくって、新しさを求めるような声もありました。ですので、夢洲開発は新しいものが生まれるような場所であるとともに、それをいち早く体験できる場所であるという皆様の思いがあると考えます。これからIRが開発されますが、このような考え方は2期、3期も引き続き、夢洲まちづくりにおける重要なコンセプトになるのではと思います。具体的なコンテンツについてですが、エンターテイメント分野は、国際的なエンターテイメント拠点の形成を目指す中で、コンテンツに対するアイデアはありますかという質問で、施設や演目、サービス等ご回答がありました。施設につきましては、日本をPRする施設が欲しいとか、e-Sportsに期待するという声も多く見られました。一方、演目については、伝統芸能について12件ご回答いただいていますが、こういった古典芸能に対する意見と共に、VRを活用したアニメ、関西ならではのお笑い芸人の拠点ができると良いという意見もあります。他にも花火大会や祭り等の意見が出てきました。スポーツ分野では、色々なサービスを、見るだけでなく、体験したいという要望も強いなと思いました。例えば、e-Sportsやマリンスポーツ、健康になる運動プログラム、モータースポーツ、日本武道もあっても良いのではという意見がありました。それにさらにVRや色々なバイタルデータを使って体験プログラムに反映されることを期待されており、スポーツ分野でもリーディングエッジとトラディショナルを組み合わせたものに期待があるのではと思います。
2つ目が、「イノベーティブであり続けることに対して期待」されています。今は、夢洲は住人もいませんし、1からインフラをつくるグリーンフィールドです。夢洲開発においては、国や行政の協力を得ながらドローンが自由に空を飛べる場所になる等の規制緩和を行い、新しい技術実証をできる環境づくりをすることに対して期待値が高いと感じております。
また、万博のコンセプトである「未来社会の実験場」が夢洲らしさを表現する言葉になっていると思いました。技術だけではなく、技術を考える・生み出すサイクルを仕組み化することで、新しい実証が起こり続けるサンドボックスがレガシーとして引き続かれることを期待されています。特にモビリティや、Well-Being産業に対して期待が大きいです。どんな規制緩和があったら夢洲の中で事業にチャレンジしたいと思いますかという質問では、次世代モビリティや医療分野、Well-Being等のサービス、データを使った事業に非常に関心があると思っております。
モビリティについて、夢洲の中、もしくは夢洲に来るときに、どんなモビリティに乗ってみたいかという質問をさせていただいていますが、空飛ぶ車や自動運転車に乗ってみたいという期待が多くありました。アトラクション感覚で体験したい、移動時間自体も楽しみたいという理由です。シームレスな移動体験、夢洲駅に着いたら、すぐ新しいモビリティに乗り換えられるだとか、夢洲の非日常的な世界観を体験できるモビリティに乗ってみたい、自らの運動神経も多少使った歩行サポートツールがあったら良い等、未来を感じさせるモビリティに対する意見が数多く見られ、先端的なものに興味を持たれている方が多いと感じております。
次に、万博でどのようなビジネス創造を考えておられますかという質問ですが、ロボットやドローン、センサー、自動運転、エネルギーの最適化、建築等の様々な新しい技術のご意見がありました。例えば建築分野では、新しく作られる街を建築設計や施工、維持管理の効率化を目指して、新しいCIMやBIMといった新しいテクノロジーを使っていくところに興味があるというご意見がありました。
万博のレガシーについての質問では、万博では建物をつくって、壊さないといけないことに対して違和感を持ち、何とかできないかという声を持たれている方が多く見られます。
3つ目が、「ツーリズムのゲートウェイとしての期待」です。夢洲は、国や府市の基本方針にも記載されているように日本全体のゲートウェイとしての機能が期待されています。各地のコンテンツの見本市的なショーケースだけでなく、大阪・関西共通ポイントといわれるインセンティブの仕組みも非常に積極的なご意見をいただいており、大阪にとどまらず、全国各地で使えるような観光客へのインセンティブ機能への期待が多く寄せられました。
夢洲で色々なサービスを受けたり、買い物したらポイントが付いて、他の場所で使えるなら、どこで使えたら良いかという質問では、観光施設、商業施設、宿泊、飲食等がありますが、大阪だけではなく日本各地で使えるとか、面白いのは交通機関や医療機関でも使われるようにしてはという声もありました。
どの駅から夢洲への直通ルートがあると良いですかという質問では、新大阪や大阪、梅田、伊丹空港、関西国際空港、神戸空港、さらに京都、奈良、瀬戸内等の観光地ともつないだらどうかというご意見があります。また、ヘリポートやバスターミナル、舟運も含めて、様々なモビリティを活用してつないでほしいという声が多く見られます。
4つ目が「MICEコンテンツ」です。MICEと聞くと、非常にビジネス的な内容を想像されると思いますが、実はカンヌのMICE施設を見ると、映画祭もあれば、色々なコンテンツで人が集まる仕組みを非常に上手につくっておられ、皆様もそれを期待していることがわかりました。関西の強みである健康医療でのアカデミックなMICEイベントは勿論ですが、クールジャパン、アニメ、食のイベント、映画祭、スポーツイベント、F1なんかもあったら良いという声もあり、そういうエンターテイメントコンテンツにも非常に期待されています。そのためには周辺施設だとか、周辺地域との連携とかも課題になってくるのかなと思います。
5つ目が、魅力的な夢洲をつくる上で、マンパワーの確保を心配する声が、多くありました。高齢者、若者、再雇用、女性、外国人労働者、海外ボランティア等、人を活用するという声がある一方で、IT化やロボット等、人工知能などによる合理化等も考えられています。
この後の各部会の発表、IR事業者様のプレゼンテーションもありますが、こういったアイデア、気付きの視点を今後とも継続してディスカッションし取り入れていただければと考えております。誠に有難うございました。

第1部会プレゼンテーション:エンターテイメント・スポーツ・アクティビティ領域

「関西におけるエンターテイメント・スポーツ分野でのエコシステム創造に向けて」 林 俊武 氏 部会の活動内容、今後の目標について説明をさせていただきたいと思います。第1部会は関西において、エンターテイメント・スポーツ分野でのエコシステム、つまり、新しいビジネスの生態系、ビジネスが生まれる土壌づくりを創造していきたいと考えています。キーワードは夢洲で起こる創造的な変化であります。
さて、部会議論では、夢洲をエンターテイメント・スポーツの聖地にしたいという意見がこれまで多く出されてきました。聖地、非常に響きが良いと思います。ただ、なんとなくぼんやりしてしまい、一体何の聖地なのか、誰のお金で事業を行い、リスクを取るのか、どのようなエンターテイメント・スポーツであればインバウンドのお客様や世界から評価されるのかをこれまで部会で議論してきました。ただ、世の中の状況はどんどん変化します。特にテクノロジーの進化は著しい。一体、2025年時点で世界が驚くエンターテイメントに関する技術進化というのはどうなっているのか。一方で、日本らしさ、関西らしさも大切にしたいというところも非常に重要な視点であります。
さて、何の聖地になるべきなのか。我々はエコシステムを創造することができるような聖地にしたいと考えています。ここに夢洲という場があり、ビジネスシーズという種を誰かが蒔いたとします。新しい取り組みができるこの場には、大企業にも中小企業にも、スタートアップ企業にも、関西の会社でも東京の会社でも、どんな会社でも種を蒔くことができます。そこに我々は水を与え、肥料を与え、大輪の花を咲かせられる場になったら良いと考えています。そして、大事なのはその花から出た種です。これがまた他の場所、世界各地へ飛び立ち、しっかりと根付いて、大きな芽を出してほしいと思っています。
さて、2025年に向けて、関西では様々な産業における変化や発展が見込まれていると思います。2025年には、夢洲は世界ともっとつながり、注目を集めるはずです。特にその中の1つがエンターテイメントであろうと思います。例えば、エンターテイメントは今よりも伝統的な日本文化を伝え、感じられる場になるべきであってほしいと思います。関西は歴史を強く感じられる地域だと思います。城郭や寺社仏閣、古墳。また、神楽等の伝統行事もエンターテイメントとして感じてもらえる取り組みができるのではないでしょうか。このように関西は歴史・伝統文化の宝庫だとつくづく思います。
滋賀県にある豊里小学校の旧校舎で、昭和12年建築の非常に美しい建物ですが、「けいおん!」の舞台になるなど、様々な映画、アニメーションの舞台になったということで、国内外から非常に多くの観光客が集まっています。まさか普通の小学校の跡地が人の集まる場所になるということを誰が想像したでしょうか。このように、まだ隠れている地域の良いものを浮かび上がらせることができるかもしれません。これをやるのは地域に根差した我々の役割ではないでしょうか。
そのような様々な日本・関西ならではのコンテンツも詰まったエンターテイメントをリアルに現地に赴くという感じ方もありますし、技術の進化に伴い、バーチャルで感じることも出てくるかもしれません。それを単独ではなく、様々な要素と掛け算することでより輝きを増して、より大きな花を咲かせてくれるものと思います。例えば、食、文化、ファッション、ツーリズムと掛け算すると非常に価値が上がっていくと思います。
さて、話は変わりますが、関西にはここ何十年もなかった追い風が吹いています。1つ目は、インバウンドを含めた観光客の増加であります。2つ目は、万博で世界から注目を集めるだろうということです。3つ目は、追い風というより関西の強みだと思いますが、地域にある会社同士の距離が近いということです。是非、当研究会参加企業も、本日シンポジウムに参加されている方々も、がっちりとスクラムを組んで、まとまって強さを発揮していきたいと思う次第です。
さて、e-Sportsのエコシステムを考えたいと思います。元は家庭用ゲーム機やゲームセンターのゲーム機であります。ゲーム会社さんがハード・ソフトを開発して販売し、消費者の方が店頭で買ったり、ゲームセンターに行ってやるという経済行為に留まっていました。そこに、それを見せるという人が現れました。見る人は入場料やオンラインで視聴するためにお金を払うという新しい経済行為が発生します。そして、これを支える企業が現れます。そのような企業が出現することによりイベントに賞金が付き、プロチームが現れ、プレーヤーが出てくるという状況になっています。元々は個人が自分の為だけに楽しむゲームがいつの間にか数千億円の市場規模にまで成長しました。このようなマーケットが急に現れるということを数年前に予想できた方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか。スポーツの分野における新しいエコシステムが登場したと言えるのではないでしょうか。
夢洲をエンターテイメント、スポーツ分野に関するエコシステムを創造する聖地にしたい。これは勿論、IRとも連携して、そして共生するものであります。それから、世界に通用することを考えると並の内容では駄目で、我々が目指すのは驚愕基準です。
大阪が前進するチャンスが来ているということです。でも、このまま放っといて上手くいくものではありません。色々なチャレンジをしていかなければいけない、挑戦する者だけが世界を変えると思います。様々な異業種企業が集まって、わくわくするような取り組みを進めていきます。そして、2025年に向かって変化するこの関西で、夢洲を場として新しいエコシステム、経済成長、そんな夢を一緒につくりたい方を第1部会では募集していきます。ご清聴有難うございました。

第2部会プレゼンテーション:ホスピタリティ・観光・Well-Being領域

「関西の強みを活かすアイデアを夢洲IRへ実装する」
~Well-Beingを起点にした顧客体験価値の向上~
吉村 佳展 氏 第2部会は、Well-Beingを起点にして、顧客価値を向上させることをゴールにしております。9月4日に公開された国交省の「IR基本方針案」に、大阪府市がIRの設置区域に認定されるための5項目の評価基準が示されています。私たちはこの中で、国際魅力ある滞在型観光の実現の中で規定される、魅力増進施設、送客施設の領域と、経済的・社会的効果で規定される観光への効果、地域経済への効果等の領域で関西の強みを生かすアイデアを実装するという提案をしたいと考えています。関西・夢洲の4つの強みですが、第1は流入顧客の多さです。第2は産業分野、特にものづくり産業やライフサイエンス産業、アカデミアが集積しているということ。第3は大阪ならでは立地ということで、多くの歴史・文化等の観光資源が周辺にあって、健康関連のサービス、アクティビティも豊富に点在しております。第4は大阪万博の同時開催ということです。この4つを合わせると、関西に実装すべきテーマとしてWell-Beingというのが相応しいのではと考えています。
夢洲IRが関西のWell-Being領域でどのようなポジションになるのかを考えました。横軸を健康状態とし、左の治療が必要な病気の状態から右の健康な状態までを表します。縦軸を提供されるサービスの先端度とし、上が既存の汎用的なサービスで下にいくほど先端なサービスを表します。中之島で提供される先端医療というのは、左下領域に入り、関西に集積する大学病院や既設の民間医療は左上の領域にプロットすることができると考えます。ここに夢洲IRの領域をプロットしてみると、大阪・関西に点在するようなIR施設外の温泉や健康食、健康アクティビティなど、右上の既存領域を除いて、予防から健康までの広い領域の中で新しい領域から先端のサービスまでを占める、これまでにない新しい領域を占めると思います。
夢洲まちづくりアンケートで、夢洲に行きたいと思うようなWell-Being領域の施設とかサービスについて、アイデアをいただきました。例えば、健康と治療の間に予防医療という領域があると想定すると、ここでは学びの場として体内を探検するようなアトラクションがあれば栄養の吸収や血液の役割、神経の伝達など、体のメカニズムや不思議をバーチャル体験することができるでしょう。そして、アンチエイジング。最近ではウェルエイジングという言い方をしますが、この領域では実験場として、運動、食事、精神から環境への実践モデルの体験というアイデアがありました。大人のキッザニアのような施設があると良いと思います。そして、視力や聴力、脚力等若返るホテルがあったら良いという話がありました。一晩で肌が若返るようなホテルも夢があって良いと思います。
これらを総合して、Well-Beingを起点として顧客体験価値を向上させるというコンセプトに、3つの研究テーマを出しました。第1の研究テーマでは、Well-Beingのバリュージャーニーの体験を実現させるのに必要な基盤として、2つの研究をしています。1つ目はIDMプラットフォームの構築です。IDMとはアイデンティティーマネージメントということで、夢洲内でお客様の属性情報とか行動履歴とかバイタル情報がデータとして蓄積されることを想定しています。このIDMシステムによって集約されるようなIR施設内や大阪・関西の多くのWell-Beingのサービス情報から、お客様にとって最適な新しいサービスを提案していくことが可能になります。また、蓄積されたウェルネス関連情報は匿名化したのちに、開発事業者や産官学と連携することでまた新しいサービス創出にも役立てると思います。2つ目は、お客様とのコミュニケーションとして、リアルとデジタルのタッチポイントを融合していくことです。リアルのタッチポイントで1つのアトラクションやサービスを体験されたお客様のバイタルや行動情報、デジタル情報をベースにし、新しいサービスを提案していくといったバリュージャーニーを体験していただくことで、お客様のIR訪問時の健康状態から少しでも改善され、更に健康な状態での旅路に寄り添うという考え方で、点と点をつなげて面として対応するサービスを実現したいと考えています。これにはお客様のバイタル情報などの連携なども必要ですが、初回のタッチポイントで夢のあるアクティビティとかアトラクションを設定し、そこで得られた情報をベースにしてお客様の健康状態の改善プログラムを提示するということで、ウェルネスへの関心を高める取組みが求められます。
第2の研究テーマは、ウェルネス基軸のニューツーリズムの創出です。第1の研究テーマのバリュージャーニーの延長線上で、IR域外のウェルネス関連施設やサービス、アクティビティとのネットワークの形成が連携できればウェルネスを基軸としてニューツーリズムの創出が可能になります。冒頭の関西・夢洲の強みで健康関連のサービス、アクティビティが豊富と申し上げましたが、更に関西は食、日本酒、温泉、スポーツ、テラピー、笑い等のエンターテイメントまで様々なサービス、アクティビティが点在しています。これらのIR域外のウェルネス関連の産業情報をコンテンツ化したいと思っています。これが実現できれば、バリュージャーニーがIRの中に留まらず、関西全体をディストネーションとして広がり、経済効果が期待できると考えています。このサイクルをぐるぐると回していくとニューツーリズムのパッケージ化が促進され、IRのブランドの1つになっていくと考えられると思います。経済効果の点からこの領域で研究課題の1つに挙げているのが、キャッシュレス、チケットレスの推進です。サイクルを回す為の触媒として、キャッシュレス、チケットレス、これを活用すると同時に、多くのお客様に利用していただくことで、夢洲IRから何人のお客様が、どの地域に送客され、幾らの消費がなされたかというデータが送客施設にフィードバックされ、そのデータは国交省のIR区域の年次評価に寄与することができると考えます。様々な支払い手段が乱立する中で、夢洲IRに向けた新しい仕組みをつくることではなく、既存の支払い手段と連携できる夢洲IRウォレットを提案したいと考えています。既存のクレジットカードやデビットカード、各種プリペイドカード、銀行口座、電子マネー、QRコード決済等も含め、あらゆる手段と連携し、関西の温泉や精進料理、ツーリング、エステでの利用はIRウォレットででき、これらの施設やサービスの利用に関して、特別に夢洲健康マイルのようなものを付与する等、利用者にとってのインセンティブを与えることで利用割合を高めることは可能になります。
第3の研究テーマは、夢洲にイノベーションハブ機能を整備することです。当研究会では、以前から夢洲IRをWell-Being産業の実証フィールドにと提唱し続けて参りました。今回のアンケートの夢洲実証フィールドのアイデアとして規制緩和に関する質問でいただいた幾つかのアイデアですが、例えば、来訪者の各種データが一定のルールの下で使えるような規制緩和であるとか、健康管理機器の試行に際して、衛生管理や薬事法の規制緩和があれば良い等、ウェルネスというしっかりした目的と、夢洲の中での運用と考えますと、規制緩和の対象として認められやすいのではと期待しています。これらの規制緩和はウェルネスに関して最先端の技術が夢洲IRで実装していく追い風になると考えています。
夢洲IRには関西のライフサイエンス産業、ものづくり産業の集積でもございます。生活の質、QOLを高める最先端の技術体験として、一晩で若返るホテルや心のデトックスシアターの実装、アンチエイジングやウェルエイジング、美容の領域で最先端のサービス、ウエアラブル端末、ICチップ入りのシューズ等が実現できるサービスや先端技術の在り方を研究したいと考えています。
最後に、これらのイノベーションを満たす仕組みとして提案したいと思います。最新の施設やサービスというのは、実装された瞬間から陳腐化が始まっていって、それから数年もすれば最新ではなくなることが自明の理でございます。常に新しいサービスや体験できる夢洲IRを実践していこうとすると、IRの事業主体、地元で活躍される皆様、企業自らが主体的に新しいサービスを売り込み、支援する仕組みを構築しなければいけません。幸い、大阪にはうめきたにイノベーションハブがあり、新しい技術や考え方を持ったベンチャーやイノベーターによって様々な新しいビジネスが誕生していく仕組みがあります。この仕組みを活性化させながら、Well-Beingの領域の新しいサービス実装に向けて、当研究会が関西の大学や研究機関とともにアクセラレーションとかメンタリングを実施しながら、ウェルネス、Well-Beingのビジネスプランコンテストを実施するという考え方はいかがでしょうか。IR事業者には開発資金をファンドとして提供していただき、産官学とIR事業者が一体となった実証検討チームによって詳細検討され、夢洲IRを実証フィールドとして実装していくことが実現できれば、夢洲IRだけでなく、地域全体が活性化していくようなムーブメントを引き起こせると考えています。地元企業も汗をかきながら、地域全体で夢洲のビジネスを盛り上げていく取り組みができればと考えておりますので、ご賛同いただける皆様のご協力を宜しくお願いいたします。ご清聴有難うございました。

第3部会プレゼンテーション:都市魅力創造・MICE領域

「シームレスで統一感のあるサステナブルなまちづくり」
(夢洲まちづくり、モビリティ、環境デザイン、MICEを通じた地域活性化)
栗原 智一 氏・宮本 義博 氏・納 賢一 氏・松田 健 氏 第3部会は、夢洲まちづくり、モビリティ、環境デザイン、MICEを通じた地域活性化という4つのテーマを設定し、ワーキンググループを立ち上げておりますので、それぞれで説明させていただきます。

テーマ:「夢洲まちづくり」 我々はまちづくりという観点で提案内容をまとめさせていただきました。提言内容としては、夢洲全体としてのシームレスで統一感のあるサステナブルなまちづくりとさせていただいております。情報プラットフォーム基盤によるデータ連携というところをベースにし、スマートシティを構成するような各領域のシームレスなイメージを持っていただけるようにさせていただいております。
夢洲は約400ha弱という広大なエリアです。そこを1期から3期まで段階的に開発するということで、この中で世界に誇れるスマートシティを構築するには、夢洲全体の最終目的をきっちり共有し、情報プラットフォームの基盤を活用したエリア間連携が必要じゃないかと考えています。エネルギーでは各エリア、それぞれでもエネルギープラントを持つことにはなるかと思いますが、各エリア間のエネルギー相互利用等も考えないといけないのではということです。また、防犯、防災、観光、送客等、色々なデータが共有されると思いますが、そういったものも各エリア間での相互連携が必要になるのだろうと考えています。自動運転や交通インフラも夢洲全体で連携を考えないといけません。そして、リアルな世界からIoTを通じて収集されたデータを、加工、連携、活用し、夢洲で開発を目指しているデータ連携で、夢洲発の持続的なまちづくりにつなげたいと考えています。
では、提言を実現させるためにということですが、夢洲全体の持続的なまちづくりの推進体制等を中心として、産官学で議論を設けないといけないと考えています。例えば、色々な町で活躍されてるエリアマネージメントと事業者が中心となり、持続可能なまちづくりを夢洲モデルとして構築できればと思います。産官学の連携ですが、万博、IR等、タイトなスケジュールで進めていかないといけない状況になっておりますので、それぞれの機能を最大限に発揮して、これからのまちづくりに向けて取組まなければと思っております。検討課題例を5つ挙げさせていただきました。
1つ目は持続的なまちづくりということで、誰が主体となり、どんな役割を担うのか。必ず発生するコストをどういうふうに徴収し、持続的なまちづくりにつなげるのか検討が必要だと思います。
2つ目はスマートシティの実現ということで、これも1期、2期、3期と異なる事業者がありますので、そこから収集された情報プラットフォームのデータをいかに運営していくか、運営体制の検討も必要と思います。
3つ目は産業の成長ということで、夢洲まちづくり構想でショーケースというキーワードや、万博で未来社会の実験場がキーワードになっておりますので、キーワードを基に、新たな産業、夢洲ならでは産業をいかにつくり上げるかも一つの課題と思います。
4つ目は万博のレガシー活用ということで、折角夢洲の中で万博が開催されるので、そのレガシーを活用して、夢洲のまちづくりに貢献することを検討しないといけないと思います。
5つ目は夢洲での居住ということで、現在は夢洲での居住というのは考えてない状況ではあるかと思いますが、Well-Being産業と連携することを考えたときに、居住ということも検討の視野に入るのではということも検討できればと思います。

テーマ:「モビリティ」 モビリティとインフラ整備について議論を行いました。今回の提言は、ストレスフリーのアクセスを実現するインフラ整備と、夢洲ならでは域内交通のエンターテイメント化という提言にしました。まずは夢洲へのアクセスという観点と、夢洲域内でのモビリティという観点で議論して参りました。夢洲へのアクセスについては、万博、IRで夢洲に訪れる多くの方をストレスフリーに夢洲へ運ぶアクセス、インフラ整備が必要です。そして、夢洲域内については、夢洲という限定空間を生かし、先進技術を活用し、かつ非日常的なエンターテイメント性の味わえるモビリティを導入していこう、そういう提言になっております。それにより、夢洲の全体がモビリティの観点からも魅力が高まっていくと思います。
そのためには、規制緩和や特区認定、実用化できるような助成の仕組みの構築が求められますし、世界に先駆けた次世代モビリティ社会を実現するために、あらゆる分野の有識者から意見を募る機会づくりが必要になると思います。
まず、夢洲のアクセスについて、現在、トレーラーが何台も列をなすような状況ですが、このままで万博やIRを迎えると多くの交通渋滞が予想されます。それに対して、我々は3点提言いたします。
1つ目は道路渋滞の解消ということで、例えば、特に万博期間中は乗用車の入島規制が必要ではないか。一般車を立入禁止にする、一部有料化するロードプライシングを実施する。あるいはダイナミックマップを活用して、渋滞予測をすることで入島をコントロールするというアイデアが考えられます。
2つ目は、現在の物流施設運用を見直す。これは非常にハードルが高い面もあるかとは思いますが、例えば、名古屋港のような集中管理ゲートの設置や、物流のゲートオープン時間延長というアイデアが考えられます。
3つ目は、夢洲は海上立地なので、海上輸送は不可欠であります。それに伴い、例えば、鉄道駅から船へ乗り換える等、新たな交通体系が構築されることで利用者にとって、選択肢が広がるのではと考えます。そして、時間軸的には将来的かもしれませんが、夢洲に大型船対応の岸壁を整備したり、自動航行船の運航の可能性もあるでしょう。
ソフト面でもユーザーエクスペリエンス向上の仕組み、利便性を高めるような仕組みということで、MaaSのような包括的な決済システムを推進することも考えられます。
夢洲域内はシームレスにつなぐ、かつ、エンターテイメント性溢れるモビリティが必要です。まず、夢洲全体をつなぐという観点においては、自動運転バスや空飛ぶタクシーで、1期、2期、3期、全ての主要ポイントをシームレスにつなぐことが考えられます。それから、各エリアの中においても、例えば、歩車分離した交通エリア、あるいは様々なモビリティが共存できる歩道を整備するエリアが必要です。モビリティについても、今までは想像できないような、好きなときに好きなモビリティが利用できる、パーソナル化は追求する必要があると提言しております。
そして、それ以外のアイデアということで、例えば、ベンチャー企業が研究している先進モビリティを実験的に採用し、ベンチャー企業育成をする土壌とする、あるいは蓄電池を搭載したモビリティを、非常時の電源に活用することで、モビリティの活用の幅が広がることが期待されます。

テーマ:「環境デザイン」 環境デザインの視点で提言させていただきます。緑に溢れ、統一感のある環境デザインの実現ということで、IRや万博を起爆剤とし、リゾートをつくるというのが夢洲に求められているということで、世界の人々を魅了する環境デザインも必要と考えます。緑化や建築物の照明、景観、建築物や構築物におけるエコサイクルを今回は提言をとしてまとめさせていただいております。
また、デザイン要素のコントロールについては、ネガティブなコントロールという意味ではなく、積極的に提案、採用し、みんなでやろうと議論を進めるための国際観光拠点として相応しいアイコニックな景観づくりが必要不可欠であると考えています。そういった意味で、4つ視点を提案させていただきます。
1つ目は、緑被率という言葉がありますが、緑視率という言葉もあり、緑視率というのは単に上から見たときの緑の面積だけではなく、人が潤いを感じるような視点の考え方で、こういった緑あふれる都市のイメージを構築するのが、夢洲国際観光拠点の相応しいアイコニックな景観という意味で必要になると思います。道路空間等の行政の管理する空間も含め、こういった緑視率のような質の高い空間づくりが必要になると考えます。
2つ目は、国際観光拠点に相応しいアイコニックな景観の実現とコントロールです。人々を惹きつけるアトラクションを含めたダイナミックな夜間の照明の在り方や舟運の活用を想定した水辺空間からの見え方が非常に重要な要素になるというところで、ルールづくりを検討したいと思います。そのためには夢洲全体と知見者同士の調整を行える協議会や組織も要るかと思います。また、民間だけでなく、公共空間、例えば、橋梁や護岸、コンテナ、キリンと呼ばれてるようなものも併せてライトアップをすることでコラボレーションしていくことで夢洲の景観をつくっていけないかと思います。
3つ目は、地元木質素材の活用と産地との連携というところで、アンケートにも出させていただいておりますが、リーディングエッジとトラディショナルというようなテーマとしても使えると思っています。単に木質、木材を使うだけではなく、木質の素材も最近は新しい技術が開発されているので、こういった新技術を積極的に採用してく、もしくは多くの人々が木造や木質の魅力をさらにアピールできるような場になることで、地元の木材産地と連携することができたらと思います。
4つ目は、再生材、廃材の活用というところで、万博は特に、半年のイベントで、それが故に単なる、つくって壊すではなく、廃材を積極的に使う等、循環型の万博レガシーを残していくということを考えていきたいと思います。

テーマ:「MICEを通じた地域活性化」 MICEを通じた地域活性化ということで、国交省、観光庁がMICEの意義というのは、直接の消費効果、ビジネスの機会やイノベーションの創出、都市の競争力・ブランド力向上という3つと言われています。それを実現するためにどのようなことを行えば良いのかということで、提言内容をまとめさせていただいています。
1点目は、MICEによる海外と地域との交流活性化の推進ということで、6つ挙げさせていただきます。1つ目がMICEの参加者が地元、企業と積極的に関わる機会や仕組みをつくり、単に来場された方同士が交流するだけでなく、地元の方とイノベーションが巻き起こるきっかけづくりをしましょうということです。2つ目は、MICEの主催者、参加者に対する各領域の専門家による支援策の充実です。
3つ目は、スタートアップ企業へのMICE参画のための支援策で、スタートアップ企業がMICEに参加するというハードル、例えば展示会などで参加する出展料がまだまだ払えない、あるいは、サプライヤーネットワークがどんなものか分からない等に対する支援が必要ではということです。4つ目は、近隣諸国と連携したMICEの支援です。昨今、特に国際会議の領域では世界中を回るような国際会議だけでなく、アジアの中で回るような国際会議の領域をつくっていこうという動きも出てくる中で、近隣諸国と合わせて、アジアの中で回るような国際会議をつくっていこうということです。5つ目は、MICE開催時の多言語コミュニケーション支援です。シンガポールや香港に比べると英語力に関しては、日本・大阪は、まだまだ遅れており、強化していく必要があります。6つ目は、地元MICE業界そのものが活性するような支援策です。MICE業界に携わる企業が、そもそも意義を感じない、生き残っていけないというようではサービスの提供がままならないので強化していく必要があるのではないかということです。
2点目は、多様性の視点での受入れということで、4つ展開させていただきます。1つ目が富裕層だけではない、多様なMICE参加者への配慮です。IRの中でMICEが行われるということは、富裕層の方が非常に多く参加されると思われますが、実際には、例えば、アカデミアの会議に関しては、学生から教授、企業等、多様な方が来られますし、バックグラウンドも様々です。そういった、宗教、あるいは収入面で多様な参加者を受け入れられる仕組みづくりというのが必要になってくるのではと思います。2つ目がIR区域外のサービス産業との連携、多様な需要の対応も必要となると思います。全ての方が夢洲にお泊まりになるわけではないので、情報提供、手配のサービスも常駐させる必要があるというところです。3つ目が海外留学生、学生の参画による、多様性のMICEの開発・運営ということで、留学生の方が関西に多いので、そういった方々に参画していただき、将来日本でそのまま就業・就職されるということも含めて、意義のある視点ではと考えています。4つ目が、例えば、近大マグロの寿司店のように若者の意見を取り入れた大阪らしい新鮮なMICEということで、アカデミアとはいえ、研究開発が実際にコンシューマーのところにいかに届けられているのかということは、皆様も感じられていると思います。そういったことも生かしたような多様性を持って進めていってはということです。
3点目は、ソフトとハードの連携ということで、5つ挙げさせていただきます。1つ目がIR区域内外に設置される様々な施設とMICEが相互に連携できる仕掛けです。これはMICE施設の連携だけではなく、商業、あるいは、ユニークベニューと連携することも重要だと思います。2つ目がMICEや国際会議に来られる動機付けという中では、美味しいものが食べられることも非常に大きな要因となりますので、食の充実。3つ目がWell-Beingの拠点。参加することによって色々なスポーツが体験できる、あるいは、健康になって帰れるということも、大阪の新しいIRの魅力ではと思います。4つ目がIR区域内外の施設とMICEが連携するため、開発段階からMICEの関係者との意見交換ということが必要です。5つ目が各施設の運営者とMICE関係者の連携推進協議会。こちらはIR区域内だけでなく、大阪全体にMICEの効果を持たせるために、場合によっては官民連携したような協議会の設置ということを通じて、大阪全体、あるいは、大阪・関西全体にMICEの効果を広げていくということも肝要ではと考えます。

第4部会プレゼンテーション:万博(Society5.0・SDGsなど)領域

「万博を活かした関西の成長戦略」 石川 智久 氏 第4部会は万博をテーマに議論する部会です。ちょうど協会も立ち上がり、徐々に話が進んでいるところですが、第4部会ではどういう万博であるべきか、ビジョンや方向性を議論しました。我々のテーマとしては、万博を生かした関西の成長戦略ということで、2025年、万博はどんな姿を目指すべきかと議論させていただきました。まず、結論から先に申し上げますと我々が考えた2025年の万博が目指すべき姿は4つです。
1点目は、子どもたちにとって楽しい万博です。万博の話をすると、皆様プロフェッショナルなので、AIとかIoTとか、すごく最先端の技術みたいな話になります。あとは建設会社の方が、一生懸命やってくれるので、建物どうするか等、真面目な話になってしまいます。ただ、やはり万博は、楽しい万博でないといけないと思います。2000年にハノーヴァー万博がございました。そのときに、すごく真面目に万博をやったのです。社会課題の解決。それを見に行った人は、万博を見て楽しい思いをしたいのにと。必ずこの5年間忘れないでほしいのは、子どもたちが見て楽しいということを絶対どこかに持ってこないといけません。
2点目は、元々、我々が立候補したときに、我が国や世界が抱える課題の解決を世界に約束しているので、やはりそれは忘れてはいけないということです。でも、ここを1つ目ではなく2つ目にしているのは、この課題解決が全面的に出ると真面目になりすぎてしまいます。やはり、子どもたちにとって楽しいという万博をベースに置いていかないと、大阪らしくない万博になるのではと思い、1つ目は子どもたちにとって楽しい万博にしています。その結果、課題が解決したら良いという提言です。我が国や世界が抱える課題ですが、2025年の崖という言葉があります。2025年は団塊の世代全員が後期高齢者になり、日本のIT産業が色々な問題を抱えるということです。その解決を万博で示すことができれば、まさに国益につながるという話です。あとはSDGs、Society5.0。これは万博のテーマであるので、必ず認識していかなければいけないというところが課題解決という話です。
3点目は、地方創生と東京一極集中の是正ということで、万博は大阪2回目ですけれども、東京でやっていません。今、日本の抱える閉塞感はどこに帰結するかというと、東京一極集中だと思います。これがもう少し変われば、日本は絶対良くなると思うので、そのきっかけになるのが万博ではということです。
4点目は、関西経済の復活です。日本で2番目に大きい都市圏である関西が復活することが地方創生になり、結果として東京一極集中が是正される。これが万博の持つ意味だと思います。ここで最も言いたいことは、大阪・関西万博ですが、必ず忘れてはいけない一言があります。国益です。我々が良い万博をすることにより、大阪・関西が栄えるだけではなく、日本全体が良くなる。日本全体が良くなる、アジア全体が良くなる、世界全体が良くなるというメッセージを発信することにより、我々の万博は成功する。世界中、日本中から、お客さんが来ていただいて盛り上がる。そして、関西経済も復活する。そういう万博を目指していかなければいけないというのが我々の結論です。IRを活用したグローバルなMICE都市になる、世界的な観光都市になる必要もあります。そのためにも、やはり、IRと万博を成功させなければいけない。また、関西のイメージ向上、ブランド戦略を進めていくということもありますし、インフラ整備も大事でしょう。そして、奥山氏のプレゼンにもありましたが、夢洲を眠らないまちにする。これもとても重要なコンセプトだと思います。海外のお客様は日本のナイトエコノミーがつまらないとおっしゃいます。それを変えるのも今回の万博、IRではないかという話です。そして、世界中の有望な人材に活躍の場を提供する。更に、アジア屈指の都市圏に相応しい万博を目指すというのはとても重要だと思います。東京を過度に意識せず、グローバルな都市圏、アジアの屈指の都市である関西をアピールしていくということが、重要になっていくと思っています。
さて、議論で出たサマリーを説明させていただきます。
まず、SDGsのビジネス化です。SDGsというと、日本の場合はどうしてもCSR的になりますが、世界は今、SDGsをビジネスの単位に変えています。我々はSDGsを関西の地場産業に変えていく必要がある。つまり、それが持続的に発展していくまちづくりなのです。そういう意味で、SDGsをCSR的な存在から持続可能なビジネスに変えていく。そしてバリアフリー、ユニバーサルデザインをビジネスに変えていく。そのためには関西の大企業から中小企業までが協力してつくることが重要になっていくということです。
次に、夢洲を世界最高水準のスマートシティにすることです。400ha弱の土地があって、今、空き地が200ha、ゴルフ場36ホール分です。それが平らで、都心からも空港からも近い。こんな良い場所はなかなかありません。これを世界最高水準のスマートシティにすれば、まさに、世界にアピールできます。イーロン・マスク氏が今最も興味があるのはまちづくりです。それも火星でまちをつくりたい感じですけども。つまり、世界中の経営者、技術者がまちづくりに関心を持っている。その最先端のモデルを大阪でつくることは、非常に重要になっていくと思います。
次に、万博をきっかけとした新商品・新サービスの提供です。関西には有力な大学が沢山あります。そのナレッジを使って新商品をつくることも重要になると思います。
次に、関西の強みとITを融合していくことです。関西魅力を発信するに当たって、ITと掛け算せ、フードテック、メドテック、アグリテック、観光テック等を強化することも重要になります。
次に、関西らしい楽しく明るい万博ということも重要になると思います。2005年の愛・地球博、非常に良い万博だったと思いますが、やはり、名古屋での開催ということで、非常に真面目にきちんとやったって感じがあると思います。それとは違う、関西らしい楽しく明るいみんなが来て楽しめる万博、子どもたちが見て楽しいという万博にてしていかなければいけないということです。
次に、国際的なMICE都市、高級リゾートとしてのイメージをつくることです。G20サミットと万博2回を開催した都市は、世界ではほとんどありません。私が調べたところ、G20サミットと万博を複数回やった都市はロンドンだけです。つまり、大阪はロンドン並みのMICE都市です。それを積極的にアピールする必要があるのではと思っています。
次に、万博のコンテンツの発信ビジネスということで、2025年の万博は、リアルとバーチャルのコンテンツを初めて融合していく万博ではないかと思っています。
次に、建物以外のレガシーをつくるということです。具体的にどんなレガシーがあるかというところで、議論で出てきたのが、万博をきっかけに新しい言葉や制度、慣習をつくっていく。10年か20年経って、こんな制度なかなか面白いよね。2025年の万博がきっかけだったとなると良いのではと思っています。あとは防災・防犯等もレガシーにしていくという議論もありました。2025年は阪神・淡路大震災から30年ということになります。そういう意味で、阪神・淡路大震災を認識するタイミングでもあり、そのためには防災に強い万博であることは非常に重要になると思います。
次に、誰もが参加できる万博です。万博は2800万人の来場者数が注目されますが、実は参加人数80億人という言葉があります。それは何か。インターネットを通じて参加する万博になるということです。2025年の大阪万博は、ネットとリアルを融合する初めての万博になる。そういう認識を皆様に持っていただくのも非常に重要になると思います。技術だけでなく、文化やライフスタイルもコンテンツです。更に、日本初、世界初をアピールするのも重要になると思います。
次に、新たなまちづくりのスタイルをつくるということも重要になると思います。1つはウォーカビリティです。みんなが気軽に歩ける町をつくるのは、非常に重要と思います。東京は、マーケットサイズも大き過ぎて、なかなかウォーカビリティが確保しにくいと思うので、まず、関西・夢洲でやっていくのは重要だと思います。
次に、市民一人一人の協力が重要です。早い段階から、1人でも多くの人に参加意識を持ってもらう必要があると思います。先日、お亡くなりになりました、堺屋太一氏もおっしゃっていましたが、万博は絡んだ人が絶対楽しめるコンテンツだ、全員が楽しめる珍しいイベントであると。ですので、私は堺屋先生のその言葉を実現する必要があると思っています。
ここまでは、中長期的な話をしてきましたが、最後に、ある程度現実的な話をさせていただきます。第1部会から第3部会までで出てきた話と重なるところもありますが、おさらいする意味で、簡単に触れていきたいと思います。
1つは、幅広い層の人材登用ということで、世界中から性別を超えて人を登用していくことが重要です。今、世界の企業で、誰もが関わっていける、取り残される人がいない社会をつくっていくことが議論されています。やはり、その先進地域になれるのは関西だと思います。
次に、これから5年間で万博を準備しなければならないとなると、色々な法律的制約が出てきます。それを避けるためには、特区の積極的活用は絶対必要です。
次に、関西全体で協力すること、国との協力関係も構築していくことも大事だと思います。これだけの大きなプロジェクトです。国とどう協力していくのかも重要になると思います。
次に、万博とIRがほぼ同時に開催されるとどうしても混雑の問題が出てきます。海の上にあるので、船を使えないか、海上交通をどうするのかは必ず問題になります。
また、1人でも多くの人に参加意識を持ってもらうためには、幅広い意見を吸収する仕組みをつくっていくことがあると思います。よく勝手連というのがあります。ここもある意味、勝手連です。万博協会からお願いされたわけでもないのに、勝手にこれだけ集まっています。お客様500人集まっているわけです。こんなイベント、東京でオリンピックの為と言えばこんなに集まるか。集まりません。あれは大きな会社がやってくれるだけみたいになるのです。そういう意味では、勝手連を組織してやっているということもあるので、そういう勝手連の意見をどんどん吸収する仕組みが非常に重要になっていくと思います。
次に、アニメやメディアを活用した機運醸成も重要になります。
そして、海外の人々へのおもてなしということで、世界中から沢山の人が来ます。2025年にはインバウンドは今以上に来るはずです。そういう人に対して、どうおもてなしをするのか。日本のファンをつくることも大事ですが、関西のファンをつくることも重要だと思います。
次に、これは死活的に重要ですが、災害発生時の対応も万博で考えていく必要があると思います。5月から11月までの万博期間中、台風は必ず来ます。夢洲で大変な事態になることはあり得るわけで、そのときにどう対応していくのか。まだまだ案が出尽くしているわけではないですが、例えば、夢洲に行けないときには、関西の他の地域への誘導をするという対応もあると思いますし、非常に美味しい非常食を供給する等、災害があっても全然困らないといった対応が重要になっていくと思います。
最後に、沢山の企業の方に参加していただき、積極的に議論していただいて、大変実のある議論ができたと思っています。我々としては、こうやって議論したものを万博協会や大阪府等色々なところに出していきたいと思っています。ご清聴有難うございました。

自治体プレゼンテーション

演題「万博、IRから世界へ発信」 野田 義和 氏
東大阪市市長
こんにちは。東大阪市市長の野田義和でございます。本日は唯一、当研究会に自治体として参加をさせていただいている東大阪市として、自治体から万博、IRに対してどんな思いを持っているのかを話させていただきます。
まず、東大阪市の位置は、万博、IRの夢洲と大阪メトロ1本でつながっており、非常に利便性の高いまちです。併せて、東大阪市内には駅が、現在26あり、約10年後には大阪モノレールが南伸をし、東大阪地域まで入りますので、4駅増え、30駅になります。また、本年3月16日にはJRおおさか東線が新大阪駅まで全線開通をしたことにより、東大阪市が新幹線と結ばれました。新幹線の切符で東大阪市内のおおさか東線、JRは乗り降りできますので、大阪24区、あるいは東京23区と同じような扱いを受けている自治体です。こういった鉄道交通から近畿日本鉄道と阪神電鉄とが乗り入れをしていますので、神戸市内、京都、奈良にもつながっています。
次に、道路交通ですが、東大阪市から約1時間あれば、関西国際空港、伊丹空港、大阪港、神戸港、神戸、京都、奈良、大阪市、和歌山市、新大阪駅等も車で行け、東大阪は関西の中心地であると自負もしているところです。バスも空港との直通バス等々で運行されています。また、非常に道路交通が良いということで、大阪でも有数の東大阪のトラックターミナル、流通基地もあります。また、紙文具や金物等、5つの企業団地がある自治体で、モノづくりとともに流通の1つの拠点の自治体となっています。
現在、花園ラグビー場でラグビーワールドカップを開催させていただいておりますが、国際規格を持ったラグビー場を近い将来、ラグビーだけでなく、ウィルチェアースポーツ広場を敷地内の中に準備中です。勿論、野球場も、陸上競技場も整備されており、夢洲と花園に最も近い吉田駅も1本で結ばれています。1本で結ばれているところに、ラグビーワールドカップを開催した花園ラグビー場があり、そのラグビー場を進化させようと取組んでおりますので、是非、スポーツとIR、あるいは万博とつなげていきたいと考えています。
東大阪市はモノづくりのまちということをIR、万博に対してPRをしていきたいと思います。東大阪市の製造業の密度は非常に高く、高井田や水走の辺りには製造業が密集しています。そして、4人に1人は製造業で働いており、製造業そのものが東大阪市の大きな屋台骨です。この製造業というのは、非常に優れものをつくっており、日本の自動車のほとんどに東大阪市の会社の部品が入っている程、東大阪市の製造業が日本のモノづくりを支えています。まちとしてモノづくりを積極的にPRしているところです。
モノづくりの中で、特に医学の分野、歯学の分野で、モノづくりのまちとしては一日の長があると自負しています。大阪大学医学部、歯学部と協定を締結している自治体は本市だけで、医学部、歯学部の研究者の皆様や臨床の先生方から、こういうものつくれないか、ここを改善できないだろうかといった様々なご意見を、市として承って、市内のモノづくり企業に研究者の皆様の思いを伝えて、取組んでいます。これを、リアルタイムにするために、本市の職員1名が大阪大学医学部の職員の身分も持ちながら、仕事をさせていただいており、単なる協定ではなく、積極的に東大阪市として、医学、歯学の医療産業に東大阪市のモノづくりの技術を生かしていこうと考えています。また、市として、1件当たり500万円を上限に補助する新制度もつくって取り組んでいます。
東大阪のモノづくりは部品産業が多いもので、消費者が直接買うような完成品をつくっているところが少ないですが、そういったところもチャレンジしていただこうということで、喜多俊之氏という世界的に有名な工業デザイナーを本市のデザインクリエイティブアドバイザーとしてお招きをし、セミナーを開催したり、アドバイスをいただいたりしています。
東大阪が責任を持ってこの製品は良いですよという東大阪ブランドを確立しているところで、積極的に、IRや万博を通じて、東大阪のモノづくりの素晴らしさを世界に情報発信していきます。
今各国から東大阪のモノづくりをもっと知りたいということで、ミートアップ事業を始めました。8月30日には駐大阪・神戸米国総領事館と9つの州の経済担当者もお越しになられて、市内のモノづくり企業とミートアップ事業をやろうと。これはもう万博、IR事業等の様々な調達についても市が積極的に関わっていこうということで取組んでおり、様々な国々と既に予定が組まれています。東大阪は、モノづくりのまち。そして、そのモノづくりを、市として積極的に後押しをして、スクラムを組みながらチャレンジをしていこうという考え方で取り組んでいます。そして、交通の利便性が非常に高いということも、最大限に活かしながら、IR、万博に東大阪という自治体、丸ごと取り組んでいく決意で、勉強中ということです。有難うございました。

アカデミアプレゼンテーション

演題「健康創生学が拓く未来社会」 友田 幸一 氏
関西医科大学学長
関西医科大学の友田でございます。関西の公立大学、私立大学、合わせて8大学がございまして、関西公立私立医科大学・医学部連合というのを結成しております。各大学が万博を後押ししよう、あるいは健康維持に何らかの協力をしていこうということで、連合で一致して各部会に入っています。
本日は私がその代表で、関西医大のどういうところを提供できるかを少し紹介します。
「健康創生学が開く未来社会」というタイトルにさせていただきました。皆様が病気になる、あるいは調子が悪いと、病院へ行って、診断を受け、治療を受けます。それを経て元気になって、健康で幸せである、あるいは身体的、精神的、社会的に良好な状態。これをWell-Beingといいます。この健康で幸せの状態をつくり、維持していくことが重要です。新たなライフサイエンスとして、健康創生学、少しWell-Beingをもじった「ウェルビルディング」という言葉を提唱したいと思います。これは、実際辞書で引くと全然違う意味の訳が出て参りますが、あえてこれを、健康を創生するという意味で使わせていただきたいと思います。
この健康創生学の中心となるコンポーネントとして3つ挙げさせていただきます。
1つ目は生体情報。色々な各個人の情報を得るにはウエアラブル生体センサーやIoT、AIによるデータ、非接触センサーも開発されておりますが、こういうところから得られる様々な生体情報。その1つの生体情報を得る例がウエアラブルセンサーですが、例えば腕時計型のもの、本日装着しておりますこれによって歩数や活動強度、脈拍数、睡眠時間が測れます。これを自動的に健康の評価、リアルタイムデータが蓄積されていますので、そういった情報が得られるわけです。
2つ目は、健康予備能。どれぐらい今健康なのか、余力を持っているかを調べようと。これは基礎医学領域の研究だと思いますが、例えば、遺伝子機能、細胞、ミトコンドリアの機能、神経機能等がございます。そして、さらに細かいところになりますと、遺伝子です。健康の寿命、寿命を測ろうと。こういうDNA、あるいは染色体レベルで測定することができます。
その1つが、ストレス耐性を調べるタンパクとしてチオレドキシンというマーカーがあります。このチオレドキシンが出てくるとストレスに対して防備をしようと働きます。これが高くなるとそれだけストレスがかかっているということを意味しますので、ストレスの程度、生活指導の効果判定に応用が可能と考えております。非常に迅速に測定することができます。もう一つ、マイオカインというのがあり、これは運動能を調べる因子ですが、筋肉から産生されます。その量を測定すると、今、どれぐらい筋肉の力が付いてきているかが分かり、運動の予備能や運動療法の効果の判定に使用できるのではということが分かって参りました。細胞レベルではミトコンドリアの機能を測ることによって、細胞のエネルギー産生モードを推定することができ、これはリンパ球という血液を採って調べます。それによってその細胞がどれぐらい元気であるかということで、見かけは元気でも実は細胞レベルでかなり老化しているということが推測できるかもしれません。それから、遺伝子レベルになりますと、これは本学の廣田教授らが、少し、発表されていますが、超小型のシークエンサー遺伝子検索の機械があり、これをいろんなとこに持っていき、オンサイトで遺伝子情報を得ることができます。これを駆使することで個人のゲノム情報まで簡単に調べることができるようになってきております。このように、様々な生体情報、医療情報があります。
3つ目は、行動変容と言いますか、最近、行動医学という分野が新しく広まってきております。これはどういうことかと申しますと、自分は絶対健康で、病気はしないと。しかし、モニタリングして、何かデータ的に異常が見つかると、本当に健康なのかと気付きの第一歩を起こさせることです。所謂生体センサーを付けて、毎日測っていますとどこかで異常が出てきたときに、変化が起こっているのではないかという気付きが最初の気持ちを変える、行動を変える大事なポイントだと思います。また、色々な検査値のデータ解析等を行うわけですが、ヘルスビリーフモデルというのがあり、これは健康を自分の信念としている人のことで、自分は絶対大丈夫とか、病気にならないとか、この中にも沢山いらっしゃるかと思います。病気になった方は、自分で自覚していますが、そうじゃない方は、いつ病気になるか分かりませんよと口で言ったぐらいでは変わらない。これを変えさせるためには、データを示していくことで、本人の気持ちが変わります。
この3つを主軸として医療機関、市民、企業が協力して健康創生をしてこうということです。
様々なデータを利用して、健康創生ステーションにデータが集まっています。例えば、ウエアラブルセンサーでデータを取って、示して、健康、無関心な方に対して気付きをつくる健康サービスを提供・紹介していきます。
こういった健康サービスの認証を私共のステーションでも行います。そして、健康サービスを提供していく。または健康サービスを利用・購入する。そして、企業としては利潤の提供をしていく。このようなビジネスモデルが発生するわけです。それぞれの関係機関、あるいは利用者、企業がWin-Win-Win、あるいはB to C to Bの関係がつくれるということです。
最後に、色々なデータを共有し、時系列で評価し、個人がそこに介入をすることによって、データバンクを仮につくり、健康であるというデータも、場合によってはバンクに預ける、提供する、病気の人は病気のデータを預け、企業がそれを利用することができる。そこに利用料、利益が発生するというビジネスも将来的には発生するのではというビジョンも考えております。今後とも私どもの「ウエルビルディング」事業にご協力を宜しくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。

IR事業者プレゼンテーション

合同会社日本MGMリゾーツ
エド・バワーズ氏
代表執行役員兼最高経営責任者
私は、MGMリゾーツジャパンの代表執行役員、CEOを務めておりますエド・バワーズと申します。本日はこのような貴重な機会をいただき、誠に有難うございます。大阪府市が実施したコンセプト募集に3社が事業案を提出し、MGMもその1社となりました。MGMはこのようなイベントに参加させていただくことで、皆様からのご質問や懸念点をお伺いすることができ、今後につながると感じています。これがMGMの企業としての基本姿勢です。地元コミュニティの一員として参加させていただくことが非常に重要で、真剣に取組んでいます。この度提出させていただいたコンセプト案は、現時点では内容が公表できないため、本日の私のプレゼンテーションが皆様の疑問点等に、本日直接回答する内容となっていない可能性がありますがご了承ください。予めお詫び申し上げます。
本日は大阪のIRに関する6つのテーマに焦点を当てたいと考えます。まず、第1に成長型IRについて。第2にWell-BeingIRについて。第3に大阪・関西のステークホルダーから求められている役割につちえ。第4に地元との付合い方について。第5に新たなJAPANエンターテイメントの創造と、伝統文化・芸術との融合について。そして、第6に地域への送客についてご説明します。これら6つのテーマに関係して考察を進める中で、MGMからの回答は9つの重要な経営諸分野と経営哲学を中心にしてお答えすることがふさわしいと感じました。そして、5つのテーマに関してはそれぞれ、MICE、ホスピタリティ、エンターテイメント、観光、ショーケース、特に日本を海外へショーケースしていくといった具体的な事業領域が挙げられます。そして、4つの経営哲学としましてはパートナーシップ、コラボレーション、イノベーション、リーダーシップが挙げられます。
IRの中心には幾つかの中核的な経営分野があります。MICE、観光、ホスピタリティ、そして、エンターテイメントです。これらの分野はIRの将来の成長を実現する基盤となります。そこに、イノベーション、コラボレーション、そして、パートナーシップを重ねていくと、大阪市が求めている力強い成長型のIRを実現する基盤を構築することができます。そして、イノベーションを推進するのは学術や、イノベーターとのコラボレーションです。最も成功を収めることのできるIRとは、他のビジネスとコラボレーションを蓄積し、パートナーシップを構築できるIRです。パートナーシップとコラボレーションを通して、継続的なイノベーションが可能となり、更にIRに付随するその他のビジネス領域においても積極的に関与していくことが可能となります。
私達は大阪のIRでイノベーションを推進するコラボレーションとパートナーシップを後押しし、MICE、観光、ホスピタリティ、エンターテイメントに注力します。特にMICEは、イノベーションを強力にサポート・推進できる事業分野です。最先端のMICE施設を開発し、特に関西の強みであるイノベーション分野のビジネスを世界に発信したいと考えます。こういったイノベーションは、新たなビジネスの創出だけでなく、大阪・関西全域に経済効果を波及させ、より多くのイノベーターの方々を誘致することにつながります。しかし、IRだけで全てを解決できるわけではありません。重要なのは、まずIRの中核的な事業に注力することです。そして、素晴らしいパートナーシップと連携があれば、イノベーションを実現する触媒となることができます。MGMはWell-Being、そして、万博のテーマでもある未来社会のテーマの重要性を理解しております。Well-Beingを実現させるIRは、サステナブルでもあり、お客様が心身ともにリフレッシュできる「体験」を提供する場所です。私達が構想している大阪IRでは、スマートでイノベーティブなデザインを採用し、お客様にご提供します。
MGMは、ウェルネス分野のパートナーとも協業しており、ウェルネスに配慮したホスピタリティとMICE空間をつくって参りました。「StayWell」-ステイウェルというブランド名でラスベガスのホテルで既に提供しております。関西においても、関西地域のウェルネス分野の方々と協業することで、ウェルネスの要素をふんだんに取り込んでいきたいと考えています。パートナーシップとコラボレーションを通して、既に大阪で実施されているサステナビリティ分野における取組みを支援し、例えば、使用済み電池の再利用やクリーンエネルギーの取組み、ライフサイエンス分野等をサポートしていきたいと考えます。
私達は、幅広い関西のステークホルダーの方々と長期に渡るパートナーシップを構築したいと考えます。そして、ステークホルダーに応じて様々な役割が期待されることが予想できます。2つの大きな内容としては、地元コミュニティでのリーダーシップの発揮とイノベーションの促進が挙げられます。関西はイノベーションと起業家精神に富んだ地域として有名です。アイディアを行動にに移すメンタリティーに富んでいることも大きなプラスです。また、大阪の方々は非常に率直です。大阪のステークホルダーの皆さまにおかれましては、大阪IRに関しても、大阪流の率直なご意見をお願いします。日本での初めてのIRを世界最新、世界最高のIRとするために、地域パートナーの皆様には、大阪コミュニティのリーダーとなっていただき、IRの恩恵について地域の皆様に向けて今後も説明を続けていただきたいと考えます。
続きまして、地元ビジネスへのアプローチについて、ご説明させていただきます。弊社のグローバル飲食担当・調達チームは既に関西で多くの時間を投じ、日本の飲料品や食材の調達先を訪問しています。MGMは地域企業と協業し、ビジネスに参加していただくことで、大阪・関西の経済成長を最優先させる考えです。また、地域の中小企業と連携、協業するためのプラットフォームを構築します。そして、今後地域企業や経済、企業団体、教育機関等と協力していく予定です。
では、次に地元との付合い方についてですが、MGMは開発を行った全ての地域で地元コミュニティと良好で建設的な関係を構築してきました。地域コミュニティと築いてきた絆は私達の誇りです。また、コミュニティと交わしてきた約束を実現してきたことを非常に誇りに思います。アメリカで言えば、MGMナショナルハーバー、MGMスプリングフィールドの施設がまさにその実例です。これらのIRを開発するにあたっては、建設を開始する何年も前から地域で活動を始め、コミュニティの方々と緊密に連携し、話し合いを重ねて、協業してきました。説明会、コミュニティリーダー向けミーティング、企業団体や雇用促進団体とのミーティング、学校や大学との対話も行いました。MGMナショナルハーバー建設期間中は1700人以上の地域住民の方を雇用しました。そして、施設がオープンした現在は4000人の従業員が働いています。建設費の40パーセントは、マイノリティーの方々がオーナーである企業に発注し、そして、32パーセントは地元企業に発注しました。結果的に、地域コミュニティと合意した当初の目標を大幅に上回りました。また、労働力開発の戦略や購買戦略は、コミュニティとの直接対話を通して構築されました。大阪でもこれらの取組みを実施して参ります。実際に既に始めている内容もあります。5月にはグランフロントにて、3週間ブースを展示し、一般の方々に、MGMとIRについて説明させていただきました。これからもより多くの大阪の皆さまにMGMについて知っていただきたいですし、もし、機会に恵まれましたら、大阪の皆様の全ての質問や懸念点等の全てにお答えしたいと考えています。
以前に行ったプレゼンテーションの中でも、開発にあたって10の命題を紹介させていただきましたが、本日はこの中で特に1つを強調させてください。MGM大阪のIRは関西圏の企業、関西各地の観光アトラクション、地元コミュニティとの協力・協業を通して経済を活性化させ、全てのステークホルダーにメリットをもたらします。私達にとって、地元コミュニティの声を直接聞き、学んでいくことは非常に重要です。継続的にコミュニティと交流し、皆様のご質問にお答えし、ご意見をお伺いしていく中で、関西の方々のIRに対する見方が少しずつ変化してきた手応えを感じています。そして、IRについて実感していることは、皆様にIRについてより知っていただくほど、IRに行くことへの抵抗感が少なくなるということです。前回、大阪でアンケート調査を行った際、61パーセントの方がIRに行ってみたいと回答してくださいました。去年は50パーセントでした。
我々はパートナーシップ、コラボレーション、イノベーションを軸として、日本の伝統文化・芸術を融合させたまったく新しい大阪発のエンターテイメントを提供したいと考えています。MGMは過去5年間に渡り、日本の伝統文化から最先端のポップカルチャーまで、幅広く学び、吸収してきました。新しく刺激的なエンターテイメントを提供したいと思います。また、MGMのグローバルなネットワークを活用して、異なる文化を融合させた新たな体験をもたらしたいと思います。MGMは、IR業界の中では、エンターテイメントのリーダー的立ち位置にあると自負しております。そして、本物のエンターテイメントと、訪れる方一人一人にパーソナライズされた特別な体験を提供するために、MGMだからこそ実現できる強力なパートナーシップで取組みたいと思います。例えば、ラスベガスで歌舞伎の上演を2度に渡って行いました。また、アメリカのリゾート施設で様々な日本の美術品を展示し、ベラージオのアートギャラリーでも展示しております。また、過去数年に渡り、ベラージオのアーティスト・イン・レジデンス・プログラムで日本のアーティストを招聘しています。また、ワシントンDC郊外のリゾートにおいては、『関ヶ原」という映画のプレミア上映会を実施しました。また、最近ではベラージオで人気のある室内植物園において、2025年大阪万博の招致を記念し、大阪城のレプリカを展示し、大阪を世界に向けてアピールいたしました。
MGMは皆様に驚きや感動を与える方法を熟知しており、過去5年間に渡り、日本においても様々な努力を続けてきました。今、日本の観光産業は大きな成長期にあると考えています。過去数年に渡り、日本政府のリーダーシップも功を奏し、訪日観光客数は大きく伸び、去年は約3000万人に達しています。その内約85パーセントはアジア圏からのお客様となっており、特に韓国、中国、台湾、香港からの旅行者が多い状況です。観光客が望んでいるのは、日本食や着物体験、世界遺産訪問、温泉旅館で四季を楽しんだり、日本人とのふれあいなどだと思います。しかし、観光客の増加により、有名な観光地では経済的なバランスが崩れたり、インフラに負担が掛かったり、一部の日本の魅力は観光客には伝わりづらいといった課題もあると思います。例えば、京都では観光客が増え過ぎているという問題がありますし、型にはまったおもてなしスタイルは時に外国人には窮屈に感じる場合もあります。しかし、日本の皆さまは親切で優しく、おもてなしの心があり、綺麗好きでありますので、そういった要素は海外のお客様にとっても非常に魅力的だと思います。そして、特に大阪・関西は、面白さ、楽しさを熟知しているので、体験に根差した観光コンテンツはより魅力的に映ると思います。
私達としては、観光業界に関わるあらゆるステークホルダーと連携することにより、日本型の新たな観光モデルをつくりたいと考えます。パートナーシップ、コラボレーション、イノベーションが我々のIRにおける日本の魅力発信を可能とし、それによって、お客様が関西地域、日本全国に送客されていくと期待しています。また、リゾートにおけるテクノロジーやホスピタリティを一段と刷新し、新たなサービスを提供していくことができれば面白いと考えます。現在は新幹線の中でも、クレジットカード払いができないなどの、観光産業における技術的な課題が数多くあります。我々と企業、学術界が連携することでこういった問題は必ず解決していけると考えます。
IRに関連して、万博との関連性、夢洲まちづくりについてのお問合わせがありましたのでコメントをさせていただきます。我々としましては、万博が開催されることを非常に嬉しく思います。日本の良いところ、アメリカの良いところを取り合わせて最新のものを導入していきたいと思います。夢洲のプロジェクトは我々にとって非常に大きな挑戦となりますので、政府や皆様の協力がなくては実現はできないと思います。
最後に、MGMの大阪に対する理念をご説明申し上げます。MGMは大阪ファーストを掲げています。そして、他の地域に移ることなく、ずっと大阪にコミットし続けているのは私達だけだと信じています。私達は、約束をしたら、破ることなく、実現にむけて邁進していきたいと思っています。これまで手掛けてきた大柄プロジェクトにおいて、ラスベガスのシティセンターのプロジェクトのときも、マサチューセッツ州のスプリングフィールドの施設をつくったときにも、約束を守って参りました。
実際に施設がオープンした暁には、マサチューセッツ州のケースでは、現地のゲーミング委員会からこのようなコメントをいただきました:「私達はMGMがこの特殊な多目的開発プロジェクトにおいて、全ての点で私達の期待を凌駕してくれたと思っています。ディテールへのこだわり、スプリングフィールドの歴史や文化への理解、地域社会とのコラボレーション、歴史遺産の保全、ダイバーシティとインクルージョンへの取組み、こういった約束を果たしてもらえたことは、本当に素晴らしく、非常に感謝しています」。私達は大阪においても、同じことを約束します。リゾート施設は建物よりも、人が第一だと考えます。リゾート施設は人がいてこそ成り立つものであり、コミュニティに支えられていると考えます。ですから、我々はコミュニティの一員として溶け込むことを非常に重視しています。
MGMの大阪ファーストは本気です。大阪だけを第一に考えています。御静聴有難うございました。

IR事業者プレゼンテーション

ギャラクシーエンターテインメントジャパン株式会社
岡部 智 氏
総支配人
ギャラクシーエンターテインメントジャパン総支配人の岡部と申します。よろしくお願いいたします。本日は、私も非常に色々な情報を得ることができ、大変感謝しております。私共は、大阪府市の募集するRFCに提出し、精一杯の力を発揮したいと思っています。
私達はマカオのライセンスを2002年に取ってから、マカオの良き市民であることを一番大切にしています。そして、ファミリー中心にお客様をかなり獲得し、主に中国のお客様が非常に多く、富裕層から一般の方々まで幅広く迎えています。このマカオの経験をこれからの日本でも活かしたいと思います。特にIRは観光産業に一番寄与していかなければいけません。国としても2030年までに6000万人のインバウンドを達成しなければいけません。インバウンドにどれだけ貢献できるかが大きな1つの使命と考えております。
ギャラクシーはマカオでライセンスを取得後、一番成長の著しいオペレーターとなっています。まだ、ギャラクシーについてご存じのない方もいらっしゃいますので、本日はギャラクシーについてできるだけ深く、知っていただきたいと思っています。
ギャラクシー・マカオは、2011年にフェーズ1がオープンしました。その後、フェーズ2が2015年にオープンし、合計するとほぼ夢洲と同じような面積の開発となりました。これからフェーズ3の開発が2021年の上期に完了する予定です。マカオは、昨年より香港空港から橋で直接行けるようになりました。これによって新たなMICE需要を見込めるのではと思い、MICEを大々的にオープンする予定です。
ギャラクシーの従業員はマカオで2万人以上おり、男女比率はほぼ半々です。平均年齢は38歳。客室の稼働率は全ホテルとも100パーセントの稼働率で、年間約2000万人の方にご来場いただいております。実はギャラクシーはK.WAHグループという親会社があり、日本との取引は60年を超えます。建築資材を扱うところからスタートし、今でも日本の各メーカー様とお付き合いしています。そして、不動産事業、ホスピタリティ事業、ホテル事業、IR事業の4本の柱で展開をしており、日本に最も近いオペレーターだと考えています。
我々の強みは財務体質が非常に良く、あらゆる意味でのパートナーシップを非常に強化している点です。また、地域との共存共栄はマカオでも非常に重要なテーマになっており、地域の中小企業や零細企業と一緒に事業を展開しています。2011年にオープンしてから、かなり驚異的な数字を上げさせていただいております。中国のお客様に関しては、ギャラクシーは非常に得意としており、日本においてもインバウンドの半分以上が中国のお客様となるであろうことを考えると、まさに我々の出番ではと考えています。
収益に関しても、毎年約2000億円の利益を出しており、現在も時価総額では大体3.6兆円という数字になっています。ここで重要なことは、我々は2015年からヨーロッパのモンテカルロSBMと業務提携をしました。どうして提携したかというと、モンテカルロSBMもアジアに展開をしたいが、自分たち単独ではいけないので、ギャラクシーと組んでいきたいためでした。IRと言えば、ラスベガス、シンガポールが話題になりましたが、我々はこのパートナーシップをもって、ヨーロッパを大きなコンセプトとして日本市場にぶつけたいと思います。
モンテカルロSBMは、150年の歴史があるカジノリゾート会社で、150年やってきた経験は非常に大きいと思っております。そして、本物志向であり、世界中のVIPがここに来ているということを考えますと、我々の考えている戦略とぴったり合っていると考えています。
我々はモナコと全面的に提携し、ウェルネスと、モナコが得意としている分野も日本で展開できると思っています。モナコといえば、今、世界的に高名な4つのホテルがあり、非常にラグジュアリーな展開をしています。世界中のVIPが訪れ、イベントも盛んに行われております。一番有名なのは、モンテカルロ・ロレックス・マスターズです。こういったこともモンテカルロSBMがオーガナイズしているということは、あまりは知られてないかもしれませんが、まさにモンテカルロ全体が1つのIR、つまり市と会社が一体となって世界からのリゾートやお客様を魅了する施設、地域になりました。これが非常に重要です。
マカオにおいても同様です。マカオをギャンブルの町から大きく観光都市に変貌させるためには、市民、地域の協力が絶対必要ですが、これはこれから夢洲で行われるIRも全く一緒で、本日の皆様のお話に全部包含されると思いますが、我々はまさに、ヨーロッパのフレーバーを持って、大阪・夢洲に臨みたいと考えています。
それから、もう1つ忘れてはならないのは、フェーズ1のときから、ホテルオークラ様とはパートナーシップを結んでいます。もう非常に長いお付き合いですので、当然、これからも末永いお付き合いをしていくという意味では、オペレーターの中でこれだけ日本の企業とお付き合いしている会社も、おそらく多くはないと思っています。
それ以外に、我々は世界のホテルオペレーターとコラボしています。リッツ・カールトンは約200室ですが、全てがスイートルームです。そして、アジア最大級のJWマリオット。それからバイヤンツリー。バイヤンツリーには50種類のスパのメニューがり、非常に多くの方にご好評いただいています。そういった世界の超有名ブランドホテルを日本でも、この夢洲で展開していきたいと思っています。
ここから非常に重要な、ギャラクシーの経営の根幹をなしている9つの要素を説明します。
IRオペレーターは国からライセンスをいただくことになりますが、加えて我々は社会からこのライセンスをいただいているという認識を持っています。それだけ、このIR事業の責任は重いと考えています。特に責任あるゲーミング、あるいはレスポンシブル・ゲーミングとして、業界最高レベルの責任あるプログラムを提供し、ルールと規制が確実に順守されるように安全性を高めるゲーミング情報を豊富に提供しています。また、政府主導のあらゆる政策を支援し、地域の啓発イベントや従業員への定期的な教育セミナー等、当社独自の包括的なプログラムを実施しており、特にギャンブル依存症対策においては、全社員が必須で教育を受けて対策に臨んでおります。それから、コンプライアンスはマカオ政府が制定した厳格な規制を順守し、マネーロンダリング対策を実施しております。そして、持続可能な環境整備ですが、省エネルギーや持続可能性に向けた取組みを実施し、ISO14001を取得しております。また、CSRと慈善事業については、ギャラクシーは2015年に基金を設立しました。約180億円を投資し、次世代のリーダーとなる人材を育成することを目指しています。また、2011年からボランティア活動を通算160回以上実施し、120を超える慈善団体に、合計9450時間以上奉仕してきました。地域にどれだけ寄り添うかが、我々にとって非常に重要です。それから、地域の中小企業との共存ですが、中小企業向けパートナーシッププログラムを実施し、ホスピタリティや不動産、サービス、IT、食品といった様々な業界と共存しています。そして、地域からの調達と購買について、商品やサービスの調達に関してはマカオの地元企業を優先し、地域の事業者1000以上と協力していますので、日本でも同じ考え方をもって臨みたいと思っています。それから、地域住民の積極雇用と組織の多様性については、優先的に地域住民を雇用し、ギャラクシー・マカオだけでも1万3000人を超えるスタッフを雇っていますので、この大阪においても、IRによる多くの雇用がここで生まれると思っています。それから、地域社会への貢献としてマカオ国際マラソンや女子バレーボール大会等を支援し、地域社会が一体となるものを、楽しみを分かち合いながら推進しています。最後に、地域社会への教育支援としては、人材育成を支援したり、数多くの教育機関や芸術文化協会と協力したりしながら、多様なプログラムを開発・実施しています。
当社の経営哲学は、地域社会との共存共栄を重視していますが、統合型リゾートを運営するにあたり、次のようなことを優先しています。地域社会からの雇用優先、調達優先、すなわち90パーセント以上をマカオから調達しております。また、地元の中小企業を支援する独自のプログラムを実施しており、30社以上に参画していただいております。この結果、マカオ経済、特に観光についての貢献はかなりできているのではないかと思います。マカオ全体の観光客は現在3500万人に到達しており、滞在日数も増えています。そして、客室数も3万6000室にまで増えているということで、マカオで得たものをベースにしながら、更に日本でも発展させていきたいと思っています。
それから、本日最もお伝えしたいことの1つに、次世代をサポートする人材育成が最も重要だと思っています。メンターシッププログラムという、昨年2018年は東洋大学の学生4名をギャラクシーの施設に送り込み、マカオ大学と共同しながら、1カ月のプログラムを組みました。座学中心ではありますが、IRについての理解促進のために昨年からスタートし、今年は京都産業大学、福岡大学も加わり、オークラ ニッコー ホテルマネジメントの新人社員の方々も参加して、今年は合計8名の方が参加しました。こういったことを来年以降も続けていきたいので、是非、関西の大学、それ以外の大学も含め、更に拡張していきたいと考えています。
また、世界最高峰のスポーツエンターテインメントを日本で行う取り組みとして、7月27日に横浜日産スタジアムで英国プレミアムリーグのマンチェスター・シティと横浜マリノスが対戦した国際親善試合を、ギャラクシーエンターテインメント ユーロジャパン・カップ2019としてサポートしました。これに関連して、ジュニア選手支援のため、ジュニア向けのサッカートーナメントであるギャラクシーエンターテインメント ジュニアサッカー杯を開催し、300人以上が参加しました。これも地域に寄り添うイベントです。このような地域密着型のイベントを、これからも続けていきたいと思っています。
さて、ギャラクシーでは統合型リゾートの開発を通して、現地の皆様の目的達成へ貢献してきました。継続的な投資を行い、皆様と協力して、どなたにも満足していただき、長く愛されるリゾートを開発したいと思っています。我々にとって大阪は非常に重要な場所です。本当に我々は、人と社会が寄り添うものを、ギャラクシーとしてどう貢献、サポートできるかをこれからも考えていきたいと思います。万博も開催されますが、部分開業もありだと国からの方針でありましたように、1日でも早く皆様にギャラクシーの姿をお見せできればと考えています。Well-Beingについては、夢洲は健康産業の集積地を目指すということで、まさに切っても切り離せない新しいビジネスになっていくと思っています。また、高品質のサービスや製品についても、当然ながら我々の最も得意とするところです。
最後になりましたが、IRを通して、私達が誇る日本の文化、芸術、おもてなし等、あらゆる日本の良さをもっと世界の人々に紹介したいと思います。アジアの最高、ヨーロッパの最高、そして、日本の素晴らしさを合わせた、世界最高峰のIRを皆様と協力し、つくっていけたらと思っています。ご清聴有難うございました。

閉会のご挨拶

福島 伸一 氏
株式会社大阪国際会議場 代表取締役社長 公益財団法人大阪観光局会長
一般社団法人関西経済同友会 MICE・IR推進委員会委員長
本当にお疲れ様でございました。この後、情報交換会もありますので、一言御礼を述べさせていただき、閉会のご挨拶にさせていただきたいと思います。まずは特別講演の奥山氏、東大阪市長の野田氏、関西医科大学学長の友田氏、そして、MGMのバワーズ氏、ギャラクシーの岡部氏、夢洲研究会の発表メンバーの皆様方、本当に素晴らしいお話、プレゼンテーションを有難うございました。会場の皆様、是非、御礼の念を込めまして今一度、拍手をお願いしたいと思います。本当に有難うございました。
もう観光は、大阪・関西の基幹産業と成長してきております。大阪・関西は、歴史・文化はもとより、本日も沢山出ましたが、食、スポーツ、ウェルネス等、本当に魅力的なキラーコンテンツが沢山あり、現在も多くの海外からのお客様をお迎えしております。そして、これからMICEをどれだけ戦略的に進めていくかということですが、本日ありましたように、IRの開業により、まさに大阪・関西の観光産業は更に高い成長を遂げていくのではと改めて痛感しました。
本日プレゼンテーションをしていただきました、バワーズ氏と岡部氏、有難うございました。新聞報道によりますと、今年中にRFP、来年の春には事業者選定ということですので、素晴らしい魅力的なご提案をしていただくことを期待したいと思っております。
そして、冒頭にも申し上げましたように、IRに関して、ここ1、2カ月すごいスピードで動いております。これまで当研究会も、多くの方と議論をしてきておりますが、より具体的に、タイムスケジュールを視野に入れながら活動していったらどうかと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。本日は、長時間本当に有難うございました。

シンポジウム後は9階交流サロンにおいて、丸一鋼管株式会社代表取締役会長兼CEO鈴木博之氏の乾杯のご発声のもと、情報交換会が盛大に開催され、ご登壇者も交えて、多くの参加者による交流と意見交換が行われました。