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祝万博!新産業創造&夢洲まちづくり産学公共創シンポジウム
~万博と成長型IRが大阪・関西の未来を拓く~ 開催報告

2019年5月9日
メイン会場:佐治敬三メモリアルホール
第2会場:507号室(テレビ同時中継)
第3会場:406号室(テレビ同時中継)

「祝万博!新産業創造&夢洲まちづくり産学公共創シンポジウム~万博と成長型IRが大阪・関西の未来を拓く~」を、2019年2月1日(金)、大阪大学中之島センター(メイン会場:佐治敬三メモリアルホール、第2会場:507号室/テレビ同時中継、第3会場:406号室/テレビ同時中継)において、夢洲新産業創造研究会主催で開催致しました。伊藤忠商事株式会社様、株式会社コングレ様、サラヤ株式会社様、滋慶学園グループ様、凸版印刷株式会社様、南海電気鉄道株式会社様、日本コンベンションサービス株式会社様、株式会社博報堂様、富士通株式会社様、丸一鋼管株式会社様、株式会社三井住友銀行様、ロート製薬株式会社様、他複数社様にご協賛のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。平日午後からの開催にも関わらず、経済界、学界、医学界、経済団体、行政機関等から450名近い方々にご参加いただき、第2会場、第3会場を増設して盛大に開催できましたことを御礼申し上げます。

開会の御挨拶

福島 伸一 氏
株式会社大阪国際会議場 代表取締役社長、(公財)大阪観光局会長、(一社)関西経済同友会 万博&MICE・IR推進委員会委員長
本日は、祝万博!新産業創造&夢洲まちづくり産学公共創シンポジウムにご参加いただきまして、誠に有り難うございます。本シンポジウムは、夢洲新産業創造研究会が主催をされ、非常に多くの企業や団体の皆さんにご協賛いただきました。このように盛大に開催できますこと、お祝いとお慶びを申し上げたいと思います。
本日、第1部は夢洲新産業創造研究会の皆さんによるスピーチ、その後、医学分野、ロボット分野で日本が世界に誇る大阪大学の澤先生と石黒先生によるお話、そして、このお二人に加えまして、塩野義製薬株式会社の手代木社長と伊藤忠商事株式会社の深野常務理事、この四方によるパネルディスカッションという素晴らしい企画になっています。第2部は、申し込み先着順で3社のIR事業者さんのプレゼンテーションがあり、大変盛り沢山です。この後、素晴らしいお話と実りある議論を私も期待したいと思いますので、最後までお付き合いをいただければと思っております。
昨年の11月23日に2025年大阪・関西万博の開催が決定し、本当におめでとうございます。皆さん共々喜び合いたいと思います。博覧会協会が発足し、いよいよ2025年に向けてスタートをしたところです。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。AI、ロボット、ビッグデータ、IoT、VR、自動走行、さらには空飛ぶ車等、夢洲で社会実験、実装を実現し、世界中の人々がわくわくする万博を創っていければと考えております。一方のIR(統合型リゾート)は、昨年の7月にIR整備法が施行され、ほぼその全容が明らかになってまいりました。現在は、国におかれましては、ガイドライン等の基本法の検討、大阪府におきましては、事業者公募に向けての募集要項の作成、夢洲まちづくりのマスタープランの検討が急ピッチで進められていると聞いております。また、IR事業者さんにおかれましては、応募の準備について、更に本格的な検討を進められているのではと拝察します。
私共の関西経済同友会はこれまで、世界初のスマートIRシティをというコンセプト提言、経済効果、募集要項に盛り込むべき内容、直近では関西が強みとするウェルビーイング産業を新しく創り、夢洲全体を丸ごと特区にする等も含めての夢洲のまちづくりに提言を行ってきました。IRの誘致と開業については、まさに最終の第4コーナーにかかっていると私は思っております。改めて、IRは大阪、関西の経済の発展と地域の活性化に貢献をするということが強く求められると思いますし、日本や関西の文化を含めた世界最高水準のエンターテイメント、国際競争力を持つMICE、新しいビジネスやサービスをインキュベートする等の機能が求められてくると思いますが、第2部のプレゼンを楽しみにしていただければと思っています。
このIR、私の課題認識の1つと致しましては、開業の時期についてです。これは当然、万博とのシナジー効果を創出するという観点からも万博開催以前にIRを開業するということであり、これについては非常にタイトなスケジュールではありますが、国、大阪府、大阪市、民間企業、IR事業者が皆でアイデアと知恵を出し合い、力を合わせて初めて実現できると思います。是非、2020年度中のIRの開業、この実現を目指して私は頑張っていきたいと思っております。
万博とIRを起爆剤と致しまして、1つは夢洲が世界中の人々に感動、夢、楽しみを与えるまちになること。そしてもう1つは、日本の大手企業、中堅中小の企業、スタートアップ業者、大学、こういう人が集い、かつ、日本人のみならず、外国人と若い人が集い、イノベーション機能を持ちながら新しい産業、新しいサービスを創り出す、創造するまち、まさに夢洲ドリームアイランドを、是非、皆さんと議論しながら、創り出していければと思っています。
大阪はご存じのように、今年6月にアジアで初めてのG20サミットがあり、秋にはラグビーのワールドカップ、うめきた2期、中之島の開発等があります。インフラ基盤の整備等、本当にビッグプロジェクトや大型の国際イベントが目白押しでございます。是非、スピーディーに着実に実現をしていきたいと思っております。
本日のシンポジウムが、大阪、関西が次の新しい成長と発展のステージに飛躍できるきっかけとなる、起爆剤となるようなシンポジウムになることを祈念致しまして、簡単ではございますがご挨拶とさせていただきます。

「夢洲新産業創造研究会」概要説明

井垣 貴子 氏
夢洲新産業創造研究会 事務局長、株式会社健康都市デザイン研究所 代表取締役社長
夢洲新産業創造研究会は大企業を中心に30社近い企業が集まり、Society5.0とSDGsを進める万博と成長型IRが核になり、産学共創で新技術、新製品、新サービス、新事業を創出し、夢と創造に出会える未来都市夢洲、新たな都市創造モデルを世界に発信するオープンイノベーション拠点と、実証・実装の場となるべく、昨年3月に設立準備研究会をスタートし、6月に設立致しました。準備研究会から数えると1年に渡り研究会活動を重ねてまいりました。本研究会は万博と成長型IRが生み出す新事業、新産業を夢洲全体のまちづくりに連動させ、うめきた2期や中之島4丁目等、大阪、関西のイノベーション拠点と、win-win-winのシナジー効果を発揮し、夢洲を世界初のウェルビーイングイノベーション・リゾート・シティに成長するために5つの産学共創領域を設定しております。
1)エンターテインメント、スポーツ、アクティビィティー領域、2)ホスピタリティー、おもてなしサービス領域、3)ライフサイエンス、アクティブライフ領域、4)Society5.0、SDGs領域、5)都市魅力創造領域。この5つの領域を踏まえ、部会を設け、研究会活動を進めており、次の第1部でその内3つの部会が発表します。
万博とIRが起爆剤になり、国内外から夢洲、大阪、関西、西日本に来訪される方々に新しい価値や感動を与え続けるためには、大企業のみならず中堅中小企業、スタートアップ企業、大学、大学院、研究機関の皆様と共に、本研究会が産学共創プラットフォームとなり、IR事業者とも知恵を出し合い、万博、IR、夢洲まちづくり、本研究会はこの3つを連鎖し、ビジネスが生まれ、イノベーション・エコシステムが育ち、シリコンバレーや幸せの代名詞ともいえるリゾートと融合する夢洲ならではの創造拠点、イノベーション・ハブの役割を担ってまいります。
本研究会に参加できる条件はただ1つ。人々と社会が幸せになる未来を創る。新しい歴史を創る。このミッションに共感し、志をビジネスや研究に繋げたい人、企業、大学、研究機関です。ご関心がある方はアンケート用紙にご記入いただくと、後日、当事務局から当研究会についての情報をお知らせ致します。今はまだ一般社団法人ではなく研究会なので、参加費は無料です。是非、素晴らしい未来を一緒に創りましょう。

第1部 スピーチ&パネルディスカッション

1.「夢洲新産業創造研究会」部会スピーチ 「夢洲新産業創造研究会」部会スピーチでは、第1部会「市民が共感、参加できる日本発・関西発の文化・スポーツ・エンターテインメント新ビジネスの創出~リアルとITの融合によって~」、第2部会「夢洲IRにおけるゲートウェイ機能の方向性~ビジターセンターを起点に関西の強みを活かすアイデア~」、第3部会「夢洲モデルの新産業創出に向けたプラットフォーム構想とネクストアクション」をテーマに部会スピーチをいただきました。

第1部会:「市民が共感、参加できる日本発・関西発の文化・スポーツ・エンターテインメント新ビジネスの創出~リアルとITの融合によって~」 第1グループの活動概要をご説明いたします鷲野と申します。第1部会のプロフィール、具体的に今出ているアイデア、議論の中からみえてきた課題について簡単にご報告致します。
まず、第1部会のプロフィールですが、領域は先程の事務局からの説明にもありました通り、スポーツ、エンターテインメント、アクティビティー領域です。この領域において魅力ある観光資源、コンテンツ、サービスを創出していく、これが当第1部会のミッションです。現在参加している企業の業種としましては、エンタメ会社、スポーツメーカー、食品メーカー、電機メーカー、教育会社、広告会社、建設会社、金融会社という多彩な構成になっております。これらの多彩な企業間での掛け算で様々な可能性、アイデアを模索しているところであります。
それでは、具体的に現在議論に出てきているアイデアの例をいくつかご紹介致します。まず、エンタメ、笑い、祭り、こういうジャンルにおいて、IRのコンテンツでいうと、欧米のシルク・ドゥ・ソレイユや著名なアーティストのコンサート等がイメージされると思いますが、我々第1部会としましては、そういった輸入物だけではなく、日本発、関西発のものを考えていきたいと議論を重ねております。例えば、クールジャパンといわれるようなアニメ、コスプレ、フィギュア、こういった日本独自のコンテンツが1つ考えられます。そして、全国各地に非常に迫力のあるお祭り、岸和田のだんじり、青森のねぶた、徳島阿波踊り等を夢洲に一同に集め、バーチャル体験できるようなことは考えられないか、それを体験した上で実際に本物を見たいというお客様は現地に行っていただく、送客するという拠点に夢洲が成りえないかと考えました。
更に、日本伝統芸能あるいは日本古来の物語を最新技術で再現するコンテンツ。具体的な参考となりますのは、昨年末からスタートしています大阪城のサクヤルミナ。これはカナダのモーメントファクトリーという会社の技術を使って開催されているものです。さらに世界芸人道場。これは福島社長の発案だとお聞きしておりますけれども、そういったものをこの夢洲にエンタメの発信基地あるいは実験場として考えられないかいうアイデアが出ました。
次に、スポーツ、健康のジャンルについては、自然とITの融合あるいはeスポーツとリアルスポーツの融合。舞洲では既にリアルスポーツの非常に立派な施設もできており、夢洲のバーチャルスポーツの施設を創り出して、その2つの連携が図れないかというアイデア。それから、夢洲の人工的な緑、周囲の海を楽しみながら、バーチャルな映像の中でウオーキング、ランニング、トレーニングランニングできるような環境を創れないだろうか。更に、最近の技術の発展によって、低酸素施設が技術的に可能になってきましたので、それらを利用したJISSウエスト、いわゆる国立スポーツ科学センター、ナショナルトレセンの西日本構想を夢洲にできないか等のアイデアが出ております。
医療のジャンルにおきましては、当然、2025年の万博のテーマであります「いのち輝く未来社会のデザイン」、これを実現する場に夢洲はなっていくので、関西の強みである医療系大学の知見が活用できます。IRやカジノに来られると予想される富裕層向けの医療ツーリズムの提供。更に、エンタメ、スポーツ、笑いによる健康、美容、アンチエイジング等への効果といったものの検証や実証・実験の場ということが考えられます。
これらはアイデアの一例ですが、議論の中から見えてきた課題、問題意識がいくつかございます。1つ目はコンテンツ、中身です。ただ海外のものを持ってくるだけで良いのか、我々は日本発、関西発のもの、独自のものを打ち出していきたいと議論をしています。そして、それらを多様な最新技術、IoT、AI等で支えていく。2つ目は、IRやカジノに来られる富裕層のインバウンドのお客様のニーズだけを考えていたら良いのか。やはり、日本、関西在住の生活者、市民の視点を大切にしたいということで、市民、生活者の共感・参加、人々の集い、賑わいという意味での祭り、これらをキーワードにして考えていこうと議論を重ねております。3つ目は、関西万博、大阪万博との連動性であります。万博は半年間ですが、IRは50年、100年という視点で、恒久的なまちづくりを考えていかないといけません。また、夢洲単独ではなく、舞洲やうめきた、隣接府県とも連動して、関西、大阪を広く捉えたグランドデザインの策定が必要ではないかという議論がありました。4つ目は持続可能なまちづくりをということで、参画する企業がビジネスとして収益を得られることが重要です。将来に向けての実証・実験の場であると共に、経済的持続性も考えていかないといけません。
最後に、50年、100年とまちづくりを継続していくため、永続的なものにしていくためにも、教育、人材育成というのは極めて重要です。そういう機能も忘れずに備えていかないといけない、と議論をしてまいりました。まだまだアイデア段階ではありますが、これから更にこのアイデアを発展させていきたいと考えております。ご賛同いただける皆様、一緒に夢を創っていきたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。

第2部会:「夢洲IRにおけるゲートウェイ機能の方向性~ビジターセンターを起点に関西の強みを活かすアイデア~」 第2部会の吉村でございます。研究テーマは夢洲IRにおけるゲートウェイ機能の方向性ということで、IRに関西の強みを生かすアイデアを実装していくことをゴールにしております。IRは夢洲に独立して存在するのではなく、地域等の連携の中で相互に好影響を与えながら発展していくものでなくてはなりません。その上で、大阪夢洲が国から特定複合観光施設区域に認定され、かつ確実に認定が更新されることが必要になってまいります。私たちは、IR整備法の目的にある地域の創意工夫、地域経済の振興という領域が重要な評価ポイントになると認識し研究課題と致しました。
まず、創意工夫を引き出すためにIRから見た関西夢洲の強みを確認致します。1つ目は流入顧客の多さ、年間3000万人以上を超える訪日外国人のうち3割超の1000万人以上が大阪を訪問します。また、大阪での宿泊旅行客は年間3000万人を超え、その経済圏、大阪府内の消費量は1兆円を超える経済圏となっております。2つ目は産業分野、特にものづくり産業やライフサイエンス産業とアカデミアが集積していること。3つ目は大阪ならでは立地、年間に1200万人が利用する関空に近いこと、IR候補地の夢洲は海に囲まれた島であるということです。最後に、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにした万博が夢洲IR開業後に開催されるということが挙げられます。
私たちはこのような関西の強みを生かす夢洲IRのゲートウェイ機能として次の4つのテーマを取り上げています。テーマ1は流入顧客の多さとその経済効果に注目して、地域とともに成長する触媒として関西共通ポイントを導入すること。テーマ2はライフサイエンス産業とアカデミアの集積する関西で、万博で活性化するオープンイノベーション環境をレガシーとして継承し、夢洲が産学公共創のイノベーション拠点となること。テーマ3は夢洲IRをオープンイノベーションの最先端サービスや商品の実証・実装の場として機能させるというショーケース機能の充実。テーマ4は海に囲まれた夢洲の特性を活かし、不利なロケーションを強みにすることと設定して議論を重ねてまいりました。
テーマ1は、将来、キャッシュレス決済が更に普及していることを想定し、大阪関西共通ポイントを導入しようということで、夢洲IRと大阪市域、関西一円との双方向で送客を実現し、両者がwin-winとなるようなスキームが検討できないかということです。キャッシュレス決済に関しては、現在急速に普及しつつあるペイシステム。この仕組みをコアプラットフォームとして想定しております。夢洲IRへの訪問顧客はIR施設のキャッシュレス利用はもちろんのこと、同じ決済手段で大阪、関西の各施設でも利用でき、かつ共通のポイントが付くというふうな仕組みを検討しております。共通ポイントに加えて、夢洲IR施設内ではIR事業者からロイヤリティープログラム、府内の特定施設については、例えば、公の機関等から支給されるポイントが加算される仕組みが構築されて、それぞれにインセンティブとして付加されることで、大阪に流入する多くのお客様を夢洲IRや関西圏内の各施設へ送客する効果が期待できます。一方、全国で利用可能な既存ポイントとの交換も可能にします。その交換レートは1対1ではなく、少し低めのレートに設定することで交換するよりは所持し続けた方が得、これが再来訪の動機付けになるような仕組みも検討できます。運営組織は公とIR事業者及び民間企業で構成され、お客様の購買データ等をマーケティングに利用する仕組みも検討したいと考えております。
テーマ2は、夢洲IRを産学公共創のイノベーション拠点とするということで、人、モノ、情報、技術の交流拠点として夢洲が機能することを検討しております。関西はライフサイエンス、健康、ヘルスケア産業の集積が強みです。ものづくり産業との融合で、医療を中心に未病予防、生活の質向上というウェルビーイング産業発展の素地があります。一方、未来社会の実験場をコンセプトとする夢洲万博を機に、スタートアップやアカデミアとのコラボレーションは活発化し、そこで共創されるウェルビーイング新産業、新サービスは夢洲IRが実証・実装の場として提供されて、商品化や新たなイノベーションに繋げるといったインキュベーション拠点として夢洲IRが機能することを想定しております。その基盤としては、IR施設内で取得される様々な情報やデータが集約されて、ウェルビーイング産業と共創イノベーションサイクルを担うプラットフォームとしてオープン化される、安心・安全なデータ管理の下、健康管理や新サービス創出に活かすことが重要な要素であると議論しています。
テーマ3は、ウェルビーイング産業の夢洲IR施設内での事業展開をショーケース機能の1つと位置付けることです。産学公共創による生活の質を高めるような最先端技術、例えば一晩で肌が若返るホテルなどの体験の場として、また、健康状況の見える化の最新技術を導入して実感いただくような、例えば各種センサーを駆使したジョギングコースの設置等、ウェルビーイング実証フィールドとして夢洲IRが機能することを目指します。そして、エクスペリエンス機能をマネージする組織の在り方等についても研究したいと考えております。
最後のテーマ4としては、白地の島という不利なロケーションを強みに変える方法。これは地域と隔離された島であるということを活かして、トライアル、実証の場としての魅力付け、国家戦略特区制度を活用して、各種開発規制の緩和やビジネス環境を整備していく、このような経済活動の拠点形成をしやすいような環境であります。また、課題となっているアクセスの改善については、海上交通を上手く組み合わせることや次世代エネルギーを活用した魅力的な移動手段の提供等、アイデア提案等も重要な要素として研究してまいります。これらの研究に関して、本日、ご参加の皆様方からご意見や提案等ございましたら、事務局を通じてお寄せいただければ幸いと考えています。

第3部会:「夢洲モデルの新産業創出に向けたプラットフォーム構想とネクストアクション」 第3部会を代表しまして栗原と申します。我々の部会は領域5の都市魅力創造です。都市魅力創造といっても非常に幅広く、例えば、アメリカの旅行雑誌が出しているベスト・シティーズ、イン・ザ・ワールドという内容を見ますと、食事が大阪はランキング12位、日本で最高に美食の都市だと評価されています。たこ焼き、お好み焼きは絶対食べるべき、ベースボールカルチャーが凄い、大阪城等々、歴史的なところを把握することで、都市魅力というのは創造されていくと思います。第1部会は領域1、第2部会は領域2、3、4を取り組んでおり、ここをサポートしていけるような内容を創っていけないか、4つの領域のイノベーション促進に向けた夢洲型のプラットフォームを創っていけないだろうか、特にハード的なもの、ソフト的なものの基本的なデザインを創っていくことにより、最終的には研究会の最終ゴールである夢洲モデルの新産業を創っていけないだろうかに考えています。
これまでの経緯から、ウェルビーイングの新産業創造というのは関西経済同友会で議論をしてきており、このようなサイクルを使いながらイノベーションを起こして新産業を創っていけないだろうかという議論しています。この内容というのは4つ、この夢洲の中に機能を入れ込みたいと考えており、新産業を起こせるような実証フィールド、実証フィールドやビッグデータ。先程、第2部会さんからもお話がありましたようにビッグデータを収集、管理、分析、新しいサービスを提供するような、サポートをするような機能を設けられないか。もう1つは、オープンイノベーションを起こすような企業に集まっていただいてビジネスのマッチングができるような機能を創っていけないか。そういう企業のスタートアップを支援するようなものを夢洲に創っていけないだろうか。以上をパッケージにして、夢洲の新しい産業を創っていくことを考えておりました。
夢洲実証フィールドと呼んでいますのが、単に、IR施設の中にできるようなサービス広場やホテルの客室内等だけには留まらず、公園、広場、道路、いわゆるパブリックの空間にも広がり、2期、3期という形で夢洲も開発が進んでいく中で、IRではない施設も含み、実証フィールドに来られた方が楽しみ新しい体験を生み出していけるような仕組み、仕掛けを創っていけないだろうかというのがこれまでの議論でございます。これを何とか実装に向けて進めていけないかという議論を第3部会では続けておりました。
例えば、夢洲型のイノベーションプラットフォームを創る上で、ハードのデザインの要素としては、広場空間、公園空間、オープンスペース、MICE施設、文化を発信するシアターのようなハード等ができるでしょう。また、宿泊の体験ということであれば、やはりホテルの客室内でも色々な楽しみができると思います。また、先程出てまいりました道路。例えば、大きなスケールのラグーンができるかもしれません。どのような新しいサービスが生み出していけるのかということを考えていきたいと思います。
ソフトとしては、企業同士、アカデミアとのコーディネーションがどうできるのか。スタートアップ支援にはどんなことが必要なのか。マッチング支援の内容、空間活用の方法等をデザインとして考えていかなくてはいけないと思っています。
今回の題目として、ネクストアクションとさせていただいております。これまで第1部会、第2部会で出されたイメージ、新しい産業のイメージを皆さんと創っていくためのアクションとして、この意見交換先のイメージと書かせていただいておりますが、大企業だけではなく、最先端の技術、事業に携わっておられる様々なステークホールダーの皆さんと議論を進めながら、考えていきたいと思っております。例えば、アカデミアももちろんですが、アントレプレナー、企業内で新規事業を生み出すようなイントレプレナー、デザイナー、データアナリスト等のアイデア、こういったものが欲しいというようなアイデア、もしくはこういうビジネスをしたいというようなことを踏まえながら、次のステップとしてハード、ソフトのデザインイメージに関する意見交換を始めていきたいと思っております。
それについて具体的に事務局とも調整をさせていただいておりますが、ディスカッション対象とするようなハードとソフトを、我々のほうでこういうことができますというのを皆さんに示しながら、アイデア募集を開始しながら、5月または6月頃に新産業のアイデアのパネルディスカッションを開催させていただきたいと考えている次第です。この会合にはアカデミアの方々、行政の方々、もちろんIRの事業者様も含めて、多数お越しになられているので、基本的にはアイデアをここで皆さんに披露していただくようなプラットフォームとして機能していければと考えています。
先程、第2部会の発表でもありましたように、一晩で肌が若返るホテル、心をデトックスするようなシアター、和食に注目しながらスマートシェフやライフログ等、基本的には楽しいことをこの夢洲で体験していただけるようなことがアイデアとして出せないかと考えており、アイデアを募りながら、必要なハードやソフト、空間、機能等を広く知っていただきながら、その開発の中に取り込める仕組み、仕掛けを創っていきたいという活動を第3部会でしていきたいと考えております。

2.産学共創パネルディスカッション 「夢洲新産業創造研究会」部会スピーチでは、第1部会「市民が共感、参加できる日本発・関西発の文化・スポーツ・エンターテインメント新ビジネスの創出~リアルとITの融合によって~」、第2部会「夢洲IRにおけるゲートウェイ機能の方向性~ビジターセンターを起点に関西の強みを活かすアイデア~」、第3部会「夢洲モデルの新産業創出に向けたプラットフォーム構想とネクストアクション」をテーマに部会スピーチをいただきました。

●モデレーター ・齊藤行巨氏
 政治と経済研究所 代表、(一社)関西経済同友会 前事務局長

●パネラー ・澤芳樹氏
 大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科学 教授、(一社)日本再生医療学会 理事長、(一社)医療国際化推進機構 理事長
・石黒浩氏
 大阪大学大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 システム科学領域 知能システム構成論講座 教授
・深野弘行氏
 伊藤忠商事株式会社 常務理事 社長特命(関西担当)、(一社)関西経済同友会 常任幹事
・手代木功氏
 塩野義製薬株式会社 代表取締役社長、大阪商工会議所 副会頭

齊藤氏:
それではパネルディスカッションを始めさせていただきます。一昨日、日本国際博覧会協会が発足し、いよいよ2025年の開幕に向けて準備が本格的スタートを切りました。大阪府、市が計画している夢洲におけるIRの誘致が成功するのは時間の問題と見ております。しかし、万博とIR、その2つを大阪、関西の成長、日本全体の成長のチャンスとして生かすにはどのような万博にすれば良いのか。あるいは、どのような夢洲に育てれば良いのか。そして、万博とIRをどのように融合すれば良いのかなど、様々な課題があります。このパネルディスカッションではそのあたりの課題と処方箋をパネリストの皆様に大いに語っていただきたいと存じます。
さて、松井知事は万博について、2025年を起点に50年後の社会を見据えた万博にしたいと語ったことがあります。では、2075年とは一体どんな社会、どんな世界になっているのか。澤先生と石黒先生にはそれぞれの研究分野からどのように予想あるいはイメージするのかをお話しいただきたいと存じます。
澤氏:
2030年までに世界に起こる変動について、アメリカが2012年に発表したところによると、20、30年後に起こるであろう経済力の変化、人口構成、科学進化に加えて、アフリカの人口爆発は大変大きな問題になり、食料、水問題、大量殺戮兵器も権力の行使の下にとられるのではといわれています。
医療はといいますと、ゲノム医療、予測医学、精密医療。これらは医療の合理化を進めて、精度を上げ、かつ医療経済まで含めた適切な医療を、ということになると思います。それから、特に日本では労働人口が減りますが、やはり人工知能を駆使したAI、ロボティクスは非常に重要になるということです。ロボットの話は石黒先生にお願いしますが、私がやっているのはiPS細胞で、これが実用化されると大きく医学は変わるだろうといわれております。ロボット分野は既に、我々も昨年からロボティクスの手術を導入しております。ロボットが人間をすぐ追い越してしまうくらい進化というのは目覚ましいものだと思います。
iPS細胞による細胞シート。この拍動は大変大きな期待を皆さんにいただいておりますが、実は先日山中伸弥先生と2人でトークショーした時に、彼の目標はマイiPS細胞を100万円以内でつくることだと爆弾発言をされました。今は臓器移植を行っていますが、マイiPS細胞が多くの臓器不全を治していくよう、将来的に変わっていくと思っております。
さて、今、大阪府を中心に未来医療国際拠点構想が進んでおります。ご存じのように、まさにこの土地、大阪大学の中之島センター、この周りの土地はかつて大阪大学医学部、理学部、歯学部等が帝国大学の下に設置されていた場所であります。ここに美術館と共に医療センター、研究所を建てるという構想が進んでおり、この周りに鉄道も造ることが大きな流れになってきております。ここにどのような魂を込めるのかということですが、これほど立地が良く、川に挟まれ、世界的に見てもパリのシテ島のような、文化や産業が発祥する地に相応しい場所で、私があるべき姿として思い描いているのがエコシステムです。やはり柱は教育。そして、アメリカ等では当然のことですが、色々な人がアントレプレナーシップを学ぶ、その人たちはベンチャーを創る。ベンチャーをインキュベーションする。それをオープンイノベーションして発展させるところで、やはり目利きと投資の場があればエコシステムは流れるのではないか。この2年程、海外の色々な人とお話しさせていただいているなかで、皆さん一緒にやりたいと言っていただき、その機運が高まっているところであります。一方、うめきたも事業者が決定して、2024年にはライフデザインイノベーション、ライフサイエンス、命は非常に重要だということであります。
inochi未来プロジェクトをご紹介します。これはソーシャル・イノベーション・プロジェクトであり、高橋政代先生や、京大の当時の医学部長である上本先生らと共に、命の大切さを考え、行動しながら関西に医療の国際拠点、それから健康長寿のまち、2013年には202X年に命の万博を関西でということを実は謳っておりました。私、実は万博っ子でありまして、1970年のボーイスカウトの集いで実は手旗信号隊で出演したという経験がございます。しかも、私ども大阪大学は25年前に阪大病院が万博の横に移りまして、毎日毎日万博公園、太陽の塔を見ております。太陽の塔の1番上の顔は未来を見つめている。私たちがいつも毎日毎日見ているのは、この過去の顔です。この真ん中にある何とも言えない顔、これが現在の苦悩を表しているという、深い岡本太郎先生の太陽の塔のシンボルは、やはり今の大阪を大きく変えた原動力ではないかと考えております。
本日は財界の皆さんが多くいらっしゃっています。2015年の財界セミナーにお招きいただいて、inochi未来プロジェクトとして万博をということも発言させていただきました。その後、私たちのプロジェクトの中に学生プロジェクトが参加するようになり、彼ら自ら万博誘致若者100の提言ということを打ち出しました。彼らが言うには、今、万博を考えている人の平均年齢は62歳で大丈夫ですか、若者自らが私たちの万博を考えるということが知事の心に届き、山中先生と共にプレゼンテーションをして、京都大学医学部の5回生の女学生はインパクトのある頼もしいプレゼンをしてくれました。「いのち輝く未来社会のデザイン」、このテーマは非常に絶妙で命と未来という言葉に非常に重きを置いていただいているというふうに思います。
このライフサイエンスと命でつながる、大阪、関西、中之島、うめきた、本当に大きな発信力が、ライフサイエンス、そして命ということ。命は世界公用語になるようにローマ字表記が良いと考えます。ライフのような生命でも生活でもなく、命という言葉の中に死生観も込めた健康を大事にする気持ちが大事ではないか、それがSDGsの実現にも繋がるのではないかと思っています。
知事からいただいた50年後の医療とその進化、最良のシナリオ、最善の場合について、AIやゲノム医療が合理化達成していて、そして、予測医学で予防できるということも繋がります。ロボットが私より上手な手術をして、超低侵襲に外科治療もできるようになります。山中先生のマイiPS細胞が再生医療を完成することによって臓器移植もなくなるのではないでしょうか。癌や循環器等、多くの病気や生活習慣病等も克服される可能性があり、老化の制御や認知症の回復にも繋がり、多くの人が元気に天寿を全うする時代が訪れると思っています。
一方で最悪のシナリオは自然環境の破壊。社会や国家の体制が崩壊しているかもしれません。これは一番恐ろしいことですが、制御困難なウイルス、細菌が出てくること。細菌やウイルスも実は生命体です。生命体のミッションはサバイブすることです。人もサバイブするために一生懸命生きて戦っています。ウイルス、細菌が勝つか、我々が勝つか、この戦いは永遠に続く可能性があり、免疫破綻ということが大きな病気に繋がるかもしれませんし、感染症でコントロールできなくなると死んでしまう。それも自然淘汰や遺伝子変異ということで進化するかもしれません。人生は80歳時代というよりは、終戦直後のような50歳時代になるかもしれない。これが最悪のシナリオです。恐らく最悪のシナリオと最良のシナリオの間が、大体50年後ぐらいではないかと思います。
最後に、「いのち輝く未来社会のデザイン」、このテーマの下に50年後の生活や人類を考えるということでは、良いことばかりではないと思います。ただ、命がどうやって輝いた、どういうデザインをしたらどう輝くか。人と社会に健康と元気を与える空間。命の安心、安全、癒しの空間実現。どう実現できるかということや、目を背けていけない高齢化、認知症、介護についても、先ほどのような最悪のシナリオも色々考えながら、そしてポスト万博も考える必要があると思っております。
石黒氏:
私が考える50年後の未来を話してみたいと思いますが、50年はもう想像ができないです。研究を始めてから30年、阪大で1991年にドクターもらってから大体30年経ちますが、2つのことが言えると思います。情報機器は大変進歩しました。スマホがここまで普及するとは誰も想像しなかったし、タブレットもそうですし、ユーザーのデータがどんどん集められて、色々なソフトウエアが登場しています。今後もどこまで発展するのかというのは想像することが難しいと思います。一方でロボットはあまり発展していません。産業ロボットはもちろん発展しました。でも、それは1990年から徐々に発展してきて、例えば、鉄腕アトムのようなロボットができるのではと皆、夢描いていました。かつての万博でも、私の師匠の辻三郎先生と大阪の有名なSF作家が2人で対談された際に、鉄腕アトムは出ていません。ホンダのASIMOが登場した時にもしかしたら鉄腕アトムがもっと早い段階で実現できるかと思いましたが、まだ実現できてない。やはり、それほど人と関わるロボットというのは難しいわけです。50年後はさすがに登場するだろうと私自身は期待します。
私も万博とは関係が深く、愛知万博はロボット万博と言われ、ロボットの展示が非常に盛んに行われていました。2004年の愛知万博にNHKのアナウンサーの藤井彩子さんのアンドロイドを作らせていただいて、そこから世界的に私の研究が知られるようになりました。その時に人間らしいロボットが、外見的にできるということを示せたわけですが、そこからずっと研究開発続けていますが、まだ人間の中身に似せることができていません。短い対話はできますが、長く関われるようなロボットがなかなかできない。それを残りの7、8年ぐらいに目途をつけ、50年先に実現したい、実現されるのではと思っています。それは、意図や欲求を持つロボットということです。ロボットの普及は色々な難しい問題があります。1つはスマホのようにグローバルスタンダードのプラットフォームの上で色々なソフトが走るという仕組みを造ることが難しい。スマホは世界で販売し、非常にコストを下げて、高機能にしているという実態があります。たくさんのソフトウエアがあり、ものすごく大きな付加価値を付けているわけですが、ロボットはそれがまだなかなかできないわけです。今のロボット、実際どうなっているかというと、スマホの部品で作られているケースがほとんどです。世の中に出ているものは、例えば、カメラもCPUもスマホの部品の流用です。1番安く、安定して沢山作られているからです。それが更に進んでくると、本当にロボットが世の中に出てくるような時代になると思います。
人間とロボットは共生する時代です。共生とは何かというと、今までのロボットと人間、機械と人間の関係は一方的に命令するだけです。でも更に機械が賢くなり、人間に色々なサービスを提供するようになったら、指示が要らなくなります。例えば、エアコンがどうなるか考えてみましょう。エアコンは今、24度に温度を設定して下さいと人間が命令するわけですが、恐らく近い将来は健康管理してくれというような命令の形態に変わるはずです。どういう時には温度を上げて、下げて、人の顔色とか体温を見て、温度を上げて、下げてとかいうようなことをきめ細かにやってくれると。まさに家で家族と話すかのごとく、家族はお互いに健康に気遣いながら、お互いのために良かれと思い色々なサービスを提供するわけです。そういう状況になって初めて、機械との対話が生まれ、お互いに意図や欲求を持ちます。お互いの意図や欲求を推し量りながら共生していくというのが50年後の未来と思っています。
そこで必要なのは言語です。言語は人間にとっては1番重要で、言語がなければ多分、人間は人間になれません。言語があるから自然に人と対話ができたりするわけです。機械と今、言語を使って対話をしようと思うと、意図や欲求を機械が持たない限り無理かと思います。例えば今、Amazon EchoとかGoogle Homeがありますが、話して欲求を伝えることはできません。言語はそもそも曖昧です。だから、本当に人間にとって自然なインターフェースである言語を使えるようになるには、機械も人間も互いに意図や欲求を持つようなそういう関係が必要だし、今後、更なる自動化や知能化が進んだ機械というのは必ずある種の意図や欲求を持つようになり、それが50年後の社会、そういう社会を実現するために色々なロボットを作っていきました。
全て人間らしくなります。人間の脳は人間を認識するために作られているわけですから、色々なものが人間らしくなるというのが当然起こる未来の姿と思います。実際にそういうロボットを作りながら人間の高次の認知機能を理解し、今はまだ意識は何か、感情は何か、心は何か、そういう人間の深い側面は全然研究できていません。認知科学と脳科学がいくら発展しても、そこはなかなかアプローチしにくいところだと思います。でも、人間とロボットが共生するような社会においては、実際にロボットと関わりながら意識を感じるようなことが起こると想像されます。ロボットと関わり合いながら、人間について新たな考えやアイデアを持って、理解を進めるというのが次の社会と思います。
これは今うちの1番のアンドロイドです。

(映像紹介)

全て合成音で、初対面の人と大体10分対話できるようになっています。相手に対する好み等もシミュレーションできています。でも10分です。これが20分、30分色々な場面で話せるようになるというのが我々の未来です。人口減少の中、我々はこの問題を深刻に考えないといけないですが、ロボットの技術は色々なところで使えます。人を理解する、人とは何かを深く考えるようなそういう社会がやってくるのではないだろうかと思います。それが私の考える人間とロボットの共生社会であります。
齊藤氏:
有り難うございました。伊藤忠商事株式会社の深野さんに発表をお願いしたいと存じます。2075年とはどんな社会か、どんな世界になっているかをイメージし、それを万博にどう落とし込んだら良いのか。そういう観点からお話しいただきます。
深野氏:
2070年頃についてどんなことを人々は考えているのか。
非常に多いのが環境の問題、気候変動の問題でありまして、2070年以降になると気温が2度から5度ぐらい上昇し、特に高度地域は大変上昇が大きいということで、食料に非常に影響が出てきます。日本でも鹿児島ではもうソメイヨシノのサクラが見られなくなる、竜巻がどんどん発生する、感染症患者が倍増する等ございます。もう1つ多かったのが人口について、人口は今も増え続けていますが、90億人ぐらいでピークに達するのではないかと言われております。これは世界中がだんだん裕福になってくると子どもの数が減ってくる、どこかで頭打ちになるという話ですが、そういった中で日本が今、直面している高齢化の問題、これは世界中の問題になることが想像できるわけです。日本では1人の高齢者を支える働き手の数が1人を下回るということで大変なことになっていきます。人口と気候のことは比較的数値的にも予測がつきやすいものです。これは地球温暖化の今後の見通しを評価したものですが、仮に4度ということになると、食料生産にまで非常に大きな影響が出てくるということでございます。
これらの課題をどう解決していくのかを見せていくのが、恐らく今回の万博の趣旨であり、その中で先ほど両先生がおっしゃられた色々な技術というのが大きく貢献をしていくと思います。それによってむしろ社会そのものの在り方をどう変えるのかということを考えないと、先程申し上げたような問題が解決できないと考えます。例えば、健康寿命の延伸、医療の進歩、あるいは高齢者等の活動の支援ができることになると、働く年齢というのも60歳ではなくて70歳になり、それ以上になるかもしれないということであります。そうなると支える人が増え、先程の問題の1つは解決します。それから、気候変動の問題についてはフードテックが色々出てきておりますので、例えば、昆虫食も最近よく話題になっていますが、そういうものによって食料問題が解決される。それから、何よりも地球温暖化の大きな引き金を引いているのはエネルギーの問題ですが、これについては非常に出力の変動があって使いにくいといわれている再生可能エネルギーが最適制御により本格的に使え、普通の場は全部ゼロエミッションになっていくということになると非常に大きく、問題の解決に繋がるわけです。
ただ、一方で技術の進歩による副作用というのも考える必要があります。特に今、情報関係の技術が発達をしています。例えば、SNSが普及をしていくと何が起きているかというと、興味のある人が興味のある情報にしかアクセスしない。従って、自分の興味のない話は聞かないということになり、その結果、社会が分断され、色々な人々の考え方が極端から極端に走りやすくなります。そういうことになると本当に社会の安定、あるいは世界の平和が維持できるのかどうかということについて大変問題があるわけであります。こういったことについてどう解決していくかというのがもう1つの大きな課題だと思います。
SDGsは今申し上げたようなことを解決していく上での、いわば通過点だと思っております。少なくともこの問題、これらのことぐらいは2030年までに解決できていないと色々な問題が解決できないということだと思っています。この万博はみんなにこういうものの解決策をどう見せていくのかというのが非常に大きな使命でありまして、昔の万博のようにこういうことができたぞとアピールするものではなく、世界課題を皆で一緒に考え、オープンイノベーションでどう解決するかというのが、見せ方になると考えております。
齊藤氏:
それではパネルディスカッションを始めます。手代木さんに伺います。今から50年後、あるいは万博から50年後の2075年の社会をどう見ておられ、それを万博にどう落とし込むかということについてお話しいただきたいと思います。
手代木氏:
特に澤先生がおっしゃられたところというのは、ベストケースとワーストケースをお描きいただいて、その真ん中あたりにということはその通りだと思うのですが、私共は今、色々なビジネスプランを考える時に、さすがに2075年は厳しい、2050年ぐらいはどうなっているかということを考えているつもりです。特に医療、健康ということになると、無論、健康寿命をどう延伸するかですが、仮説として持っているのは個人の情報、例えば、ゲノム情報、メディカルヒストリー、こういったものは全部個人が十分に管理できるような世の中になると。もちろん個人情報をどう取り扱うかは難しい問題ですが、スマホ等の中に全部入っていて、それで今の自分の体の状態をインプットする。多分、あなたがかかっている病気はこういう可能性がありますというのがすぐ出てくるような世の中になり、もっといえばあなたにとってのベストな治療はこういうことが考えられます。つまり、お医者様がそれをどのように伝えるのかはともかく、同じような情報を同じように皆さんが持ってしまう時代というのは来るだろうと思っていて、あとはそれを社会実装としてどういうふうに実行に移すのかということが2050年、特に人口のブースティングを考えますと、アジア、アフリカのどちらかというと現在は裕福でないところが非常に人口増えていくわけですから、そこにどういうシステムを置いていくのかというのは、実はSDGsを解決していくためにリアルには非常に重要だと思います。
その中において、戦後の復興期に平均寿命なりをこれだけ延ばすことができた奇跡の国日本としては、この仕組みをどのように、ある意味で輸出をしていくのかというのは産業上でも非常に重要だと思っています。これを万博で何かモデル化できないだろうかと。つまり、こういう仕組みの中で社会を動かしていくことによって、現在のアジア、アフリカのこれから伸びていく国が健康寿命の延伸という点で非常に大きく前進をする。そういうモデルケースが是非万博の枠組みの中で実現できれば、産業的にはそれを輸出するモードに何とか転換できないかと思っています。我々も薬屋ですから医療系ですが、食、運動、予防未病、大変大事なのはターミナルフェーズで人間がどうお亡くなりになるかということも、これは議論をした上で、それを含めて輸出をできるようなパッケージを、万博をモデルケースとしてできないかなと考えています。
ということからすると、万博の後、そのモデルセットを5年後、10年後、15年後にこうなりましたというのを連続物のデータとして取って、世界に発信するような足の長い取り組みを、今から仕組みとして入れておくのが極めて重要ではないかなと思っております。
齊藤氏:
有り難うございました。50年先といわれても、なかなか想像ができないですが、先生方のお話はやはり人間がもしかしたらいなくなるかもしれないというお話や、ロボットと人間の本格的な共生が始まる等、そういうことは十分考えられると非常に興味深く伺いました。石黒先生と澤先生に、先程お述べになりましたイメージを、今回の万博、2025年の万博にどう落とし込むか。例えば、どんなアイデアが考えられるのか。それについて、それぞれお願い致します。
石黒氏:
万博の役割というのは、技術開発においては常に大事な役割を持っているのは間違いないと思います。重要な点は2つあると思っていて、1つは万博だけで絶対終わることは絶対駄目だということ。万博に向けて努力をし、更にその万博をやったから新しい色々な問題が見つかり、50年先に繋がるようなことをしないといけない。今から継続的に取り組んで、万博を上手く利用して発展的な展開ができるかということかと思います。私たちも愛知万博でアンドロイドを展示させてもらいましたが、かなり無理して展示しました。非常に目標が高かったので、毎晩徹夜して色々なものを作っていって、何とか形になったわけですが、その後に複数修正箇所が分かり、色々な研究テーマが出てきて、その後もずっと研究開発を続けさせてもらうことができたわけです。そういう意味では、万博では少し背伸びした目標を持ち、様々な研究者や企業が野心的なものを展示するというのは凄く大事と思います。ただ、それで絶対終わらないということが重要で、その先にも必ず研究開発が続き、その前にも研究開発が続いていると。持続的に続く研究開発が大切です。万博がなくても持続的な研究開発は続けないといけないわけですが、万博があるから更に加速できるというような道筋をよく考えないといけないなと思っています。答えがないですが万博だけが目標ではないというところが1番重要かと思っています。
澤氏:
私は過去の万博で大阪が大きく変わったことを少年時代に経験して、動く歩道、電気自動車等、そういうものが本当に今の世の中当たり前になっているようなことは、その万博をきっかけにした大阪の大きな変化、日本の変化に繋がっていると強く思います。今回の万博もそういうふうにすごく変わるかというと、あの時代と今の技術革新、変化は全然違うと思います。あの時代に新しいものが出てきて、それが展示されてどうだというよりも、社会の課題や悪いことへも目を向けた展示を考えて、深刻性から絶対目を背けてはいけないと感じます。例えば、認知症について、これからの高齢社会において益々認知症の方が増え、これをどうやって解決するか。例えばですが、私が考えているのは認知症テーマパークというのがあったら良いなと。子どもさんも減るので、これからはキッザニアではなく、ジイザニアの方が良いかと思っています。徘徊の人がいくらでも歩けるまちに入れて、ぐるぐる回ってもらって、疲れたらまた家に帰ってもらう。そういうところは実証の場、研究の場、開発の場に使えるわけですし、様々なお薬を使わせていただきながら。どうしても認知症という目を背けたくなるところを、ど真ん中のテーマに持ってくるというのも1つのやり方だと思います。本当に色々な問題、課題が沢山あると思います。環境、高齢化、その課題をど真ん中にして、それでいのち輝く社会をどうデザインするかというそういう議論がないと、良いことだけ、そして良いものだけを展示しても、5年、10年で多分追い付いてしまいます。50年先を考えていくと、そこまで踏み込んだ社会課題をど真ん中に据えた解決策、解決したらどんな明るい社会デザイン、未来がデザインされるか、そういう体で万博をやれば良いのではないかと思っています。
齊藤氏:
万博の会場の隣に、現在、夢洲いわゆるIRが計画されています。大阪府、市、私の所属する関西経済同友会では万博開催前のIR開業ということを関係者に働き掛けておりますが、この万博とIRのシナジー効果を高めていこう、これが狙いであります。そこで、産業界のお2人にお尋ねしたいと存じます。シナジーを高めるにはどのようなIRが望ましいとお考えになられるのか、手代木さんからお願い致します。
手代木氏:
IRに限ったことではないですが、この夢洲全体を考えた時、我々、産業界が継続的に資金をお約束できる環境というのは、万博後に我々として、メリットが取れるのだろうか、ということだと思っています。つまり、継続性だと思っていて、私はIRと万博の跡地だけが後に残ると、申し訳ないですが、企業として、特に我々のような製薬会社は継続して投資をし続けるのは極めて難しいと思います。そこに本当に人が住んでいるリアルなまち、人の生活があって、その中にIRが溶け込んでいる中で、半年間万博があるという、そこに住んでいる方、少し違うモデルケースのまちを造って、そこの中で取っていくデータで澤先生がおっしゃったように認知症の患者さん、例えば、健康な方がどういうふうに発症されるか、それらが継続してデータとして追えるということであれば、我々とするとすごく興味がありますし、当然、そういったことを専門とする病院、介護施設、特に高齢の方々で我々も困っているような社会問題について、ストレートに取り組むようなものと、それとIRが一体化するっていう。若者もそこに行って色々と楽しめるし、ついでに居住ご家族のところにも訪問をして、1泊して帰っていく等、そういうようなリアルな生活の上にIRや万博が乗るというのを是非目指していただければと思っています。
深野氏:
常々考えているのは、大阪なり関西が発展していくためには、日本の中の殻に閉じこもっていたら駄目だということです。やはり世界の中で1つの重要なハブとしていかに機能を発揮できるかということを考えるべきだと思っております。大阪の人口は、800万人位だと思いますが、香港の人口と大体一緒ぐらいでして、香港は国際会議、見本市、非常に活発に開いていて、アジアあるいは世界から人を集めています。恐らく、大阪もそういう方向を目指していかなきゃいけないと思います。そのために、やはり色々な施設が必要で、いわゆるMICE機能、そういう観点から、施設の整備と併せて、如何に世界の中でハブ機能を発揮できるかと。一緒のプロモーションする体制というのも必要だと思っております。香港貿易発展局というところはまさに色々な国際会議、見本市の誘致を徹底的にやっておりまして、貿易発展局が関わってやっている見本市だけでも30位あると象徴しておりますけれども、この国際的な見本市、あるいは国際会議の数を見ても、大阪は全然世界水準には及んでいないという状況です。これを1つのスプリングボードにして、そういうところにいくべきじゃないかということでございます。
齊藤氏:
例えば、澤先生の70年先のお話の中に、ウイルス、感染症、そういうものがもしかしたら人類に強烈なダメージを与えるかもしれないというお話があったかと思います。そういうものを万博で見せることはできるのでしょうか。
澤氏:
バーチャルリアリティーになるかもしれません。何か警告を発するというわけはないです。環境問題、感染症の問題も、実は生命の営みの根幹です。ウイルスもバクテリアも私たち人間もみんなサバイブすることが本能です。バクテリアもウイルスも別に人を殺そうとは思っていないけれど、サバイブするために人に感染して増殖すると。それを抑えようとしたら、細胞、バクテリア、ウイルスはものすごい数で増殖し、遺伝子変異をどんどん起こして、耐性菌がどんどん出てきます。そういう戦いになってきたら人間が勝つか、バクテリアが勝つか、最後はそこにいくかもしれないということも我々医学者で考えます。体は免疫力で戦っていますけど、免疫力が破綻すると負けちゃうわけです。それをお薬で抑えてくれると良いが、だんだん耐性菌ができるとそうなるかもしれない。そういうことも社会的な課題として、日常、環境等、そういう課題を集めたパビリオンからどうやって考えるか、どう経験するかということを抽出するような、課題解決型的な万博って面白いのではと思います。そこから新たな産業、対策を含めた産業が生まれるのではという気はします。
齊藤氏:
石黒先生にお尋ねしたいのですが、今、澤先生が言われたような課題型のパビリオン。例えば、ウイルスや感染症によって人間が全部滅亡した時にロボットだけが生き残って、自己増殖して、新しい世界を創るということは考えられますか。
石黒氏:
それは50年先ではなく、多分、1000年先とかでしょうか。要するに、人間と機械の境界はどんどんなくなり、例えば、今、義手や義足を使われている方々を見ても、1ミリも人間らしさを損なわれていなくて、むしろ凄い人になっているわけです。生身の体というのは現時点で我々人間の要件にないとさえ思えてくるのではと。そういう意味では、テクノロジー、技術は人間と融合していくと思います。それよりも、澤先生の発言で良いなと思ったのは、課題解決。かつての万博は夢見がちで明るい未来だけを見せていましたが、人間が機械になるかも含め、人間は何か、どう生きるべきか、技術はもう十分に開発できているなかで、どう人間が受け入れて、どう生きていくかという問題はもっと深刻になってきているような気がします。単にサバイブするというよりも、生き方の問題、もしかしたら死ぬ権利の問題等そういったことまで考えないといけない。そういう課題も解決もしますけれども、人間に関する根本的な問いかけを感じるような、そういう万博になると良いと思いました。
齊藤氏:
今回のシンポジウムの主催者であります夢洲新産業創造研究会は万博終了後の夢洲を単なるリゾート地に終わらせるのではなく、新産業を生み出す、あるいは創造する拠点にしたいと考えています。それは万博のレガシーにもなると思います。では、夢洲から生まれる新産業はどのようなものが考えられるのか。そして、生むためにはどのような条件が必要なのか。まず、澤先生からお話いただきたいと思います。
澤氏:
先ほどの課題解決型は、私は非常に重要だと思っているのですが、ブレストで考えると、今のこの情報が過剰に溢れた社会の中で、人の心というのが最後に唯一残ります。仕事も人の心が重要と思われるような仕事が残るというようなことも、よくロボット、AIが進んだらどうなるかという議論の中でいわれていますが、人の心をつかむものの1つはエンターテインメントかなという気がします。そうすると、エンターテインメントと医療、病気と健康をつなぐエンターテインメント。先程、私が申し上げた認知症のテーマパークというのは凄く良いと思っていて、今日はこれだけ事業者の方がいらっしゃるので、是非ジイザニアやってほしいなと。アイデアが色々あるので。私も自分で笑いながら、ひょっとして自分がそこに入れられるかもしれないとか、入るべきかもしれないというくらいに思うほどです。認知症が暗い、介護、負担ではなくて、認知症になった人も生活されているわけですから、エンターテインメントの中に引き込んでしまうというところに新しい産業が生まれるということも考えるべきじゃないかと思います。もう1つのターゲットは若者だと思います。この万博に関連している人は60代後半だといわれていますが、一方で、今、20代前半の子たちも7年後はもう30近くなって、年代、世代というのは変わっていくわけです。常に若い人が出てきますし、世界の若い人が集まる仕掛けというのをどうやってつくるかは万博の大きなテーマかなと。それによってニーズドリブンがはっきりしてくる。課題解決もそうですが、若い人のニーズドリブンということも考えるべきで、例えば、世界からバックパッカーをどんどん呼ぶ等、そこから新たに産業は生まれるのではと思います。
石黒氏:
私も割と無責任で勝手なこと言うと、価値観が変わってほしいなと思います。要するに、今までの経済合理性だけを追求するような社会では、多分持たない気がします。一方で、技術は創ろうと思ったらいくらでも創れるような時代に入ってくる。そうすると、人間の持つ価値観はどうあるべきかということを考えないといけない。それはどういうものかというと、知識産業なのかもしれない。要するに、より1歩、人間の深い側面を感じられるような場がつくれれば、そこに人が集まって、産業が自然に興ると。それは如何に既存の価値観から脱却して、豊かな技術に支えられた新しい人間社会の価値観をつくれるかというのが大事と思います。
深野氏:
なかなかこの産業分野は難しいと思うし、むしろ、そういう産業がどんどん湧き上がってくるような環境、エコシステムをどうやってこの機会に強化するかということを考えたら良いと思います。第1部会から第3部会の方も随分言われていましたけれども、オープンイノベーションというのは凄く大事だと思っていまして、オープンイノベーションを何とかこの万博の場を使ってできないかと。これは是非この研究会でも知恵を出していただきたいと思います。やはり、前の万博のように未来の技術を自慢するのではなく、むしろ、命の問題、認知症等、難しい問題も含めて色々なテーマを挙げ、そのテーマをどうやって解決するかというのを、大企業から中小企業、ベンチャー、大学まで含めてチームを作って取り組む。そういう動きが広がってくると、そういうやり方のフォーマット自体が、もしかすると万博のレガシーとして残るかもしれないと思っています。是非、オープンイノベーションの仕組みがこの万博を通じて定着をしてもらうと大変良いのではという気が致します。
せっかく大阪でやる、みんな参加型の万博でやるとすると、やはりエンタメの要素はすごく大事だと思っています。
色々な深刻な問題、難しい問題も芸人の方にも一緒に入っていただいて徹底的にトークショーやってみる等、今までと違ったアプローチ、もう少し参加型のようなことをやって、一般の方も参加して、面白いアイディアを集め、どんどん社会から注目されるという仕組みもできれば、すごく面白いという気が致します。
手代木氏:
澤先生のスライドの最後のほうに、できる限り皆さんが健康なまま天寿を全うされるというのが1つのゴールではないか、みんながピンピンコロリになるという意味だと思いますけど、それをどう成し遂げるかということからすると、今まで産業の成り立ちは、産業特性がばらばらなので、例えば、我々は薬を作っていますが、もうそれだけでは無理です。結局、情報、食、運動、全部パッケージにして、今の状態に対して何をオファーするのかということと、石黒先生もおっしゃいましたけど、一方では人によってはそういうサービスは受けたくない、お金も払いたくないという方も多分、出てこられますので、パッケージをつくるということと、それをオプションとして選択権を皆さんに持っていただくための仕掛けが重要な気がしています。我々も今、本当に薬を作っていますが、耐性菌をどう防ぐか、これは製薬メーカーだけでは絶対無理で、健康を見るという点では衛生の方、食の方、運動の方、もっと言えば住環境そのものをパッケージとしてどうオファーしていくかということを、新産業としてやらないといけない。これも石黒先生がおっしゃいましたように多分、エレメントや技術はもうかなりの部分はあると思います。どう組み合わせて、それを1つのパッケージとして皆さんが選択できるようなメニューにしていくのかということを、こういったところでモデルケースとして進めていければ良いと思っています。
齊藤氏:
手代木さんにお伺いしたいですが、澤先生の言われたジイザニア。こういう発想は産業界から見てあるいは製薬業界から見てどう思われますか。
手代木氏:
とてつもなく面白いと思います。実は医学界も製薬業界もみんなそうですが、認知症の原因療法に基づいた完治という点では色々な仮説があって、随分トライしましたが、正直、暗礁に乗り上げているというのが現状です。どのようにして元疾患を治すのかということのアプローチを諦めるわけではありませんが、現実的には出ている症状を含めて、どのようにハッピーランディングにもっていくかというのが、短期、中期的には重要だと思っています。そのデータすら現時点では取れないというのが我々の大きな悩みです。その中で1番困っていらっしゃる症状や周りの方からして、これさえちょっと消えればというのがあれば、認知症そのものは治せなかったとしても、その1番困っている症状1つであれば何とかコントロールできるかもしれない。そういう方ばかりおられるところというのがなく、しかも、それも健常者とのデータの比較においてどこが違うのかということで、初めてヒントが出るので、そういったデータを本当に取らせていただくような試みというのは極めて我々としてもご協力させていただきやすいと思います。
齊藤氏:
IRに例えば、少し認知症の方たちは無料で入れて、ゲーミングフロアのある一角にそういうコーナーを作って、マージャンと同じようなことを実験的にやってみる。そういうことは考えられませんでしょうか。これはIR事業者さんに賛同していただかないと駄目ですが、ギャンブリングに対する依存症の問題の解決にも繋がるのではという感じがしますが、それは荒唐無稽でしょうか。
手代木氏:
わが国の場合は特に個人情報のデータをどう取り扱うのかがすごく難しいですから、そこをどう解決するかという問題はありますが、そこのデータを継続的に取らせていただけるのであれば、正直、医学界、薬学界にとっては安いものだと思います。それは必ずやれると思います。ただ、そのデータが使用不可だと何にお金払っているか分からなくなってしまうので、ハードルはありますが、そのデータをパブリックあるいは新しい家、新しい薬等に対して使うということが許していただけるのであれば、投資としては正直、安いと思います。
齊藤氏:
是非、本日お見えのIR事業者の方もご検討いただければと思います。ロボットの世界から見た場合、PPK(ピンピンコロリ)、健康な天寿を全うする、そういうものにロボットがどう貢献できるのか、あるいはできないのか、そこはどう考えたら宜しいでしょうか。
石黒氏:
我々は高齢者用のロボットを色々な形でやっています。物理的な支援、例えば、歩けなくなったらロボットの力を借りる、対話サービスを通して認知症を抑制する、そういう使い方は普通に出てくると思いますので、むしろロボットが貢献できるのは、医学では対応できない機能不全や体の問題、それから認知症的なものの抑制というところに貢献はできるはずと思っています。
齊藤氏:
それでは、最後のパートに移りたいと思います。これまで議論してきました万博、IR、夢洲全体の開発。これは自治体、学会、民間だけでできるものではありません。その三者が連携、連帯してより良いものを作り上げる、こういうことが必要であると思います。大阪、関西は古くから産学連携の得意な地域であります。そこで皆様にお尋ねします。まず、産業界から、大学等、学の世界に何を望むのか。また、一連のプロジェクトが成功するにはどのような仕組み、条件が必要かをお話しいただきたいと思います。続いて、学の立場から、どのような連携が必要か、どのような仕組み、条件が必要かをお話し下さい。
手代木氏:
関西は恐らく、日本の中でも、もともと産学連携はうまくいっていると私は思っています。例えば、製薬会社と大学という点で、コンパクトに非常にレベルの高い大学の方々が、どちらかというと産業界と胸襟を開いてお話しをいただけるという点においては、極めて恵まれた環境だと思っています。
あと1つは、こういった場のご提供ですが、別の仕事をしておりますので、一緒になってたまに同じ言語をしゃべっているかどうか、同じ言葉を言っても、意味することが一緒なのかどうかということを確認するという意味では、場の提供をしていただきながら、お互い同じようなことを考えているのかどうかというのを確認して進める。これは万博に向けても、これから新産業を創っていく上でも大事だと思います。最後はやはり人口減少期になって、もちろん海外の方にももっと来ていただいて、学、あるいは産をサポートするというのもありますが、その中において効率は段々大事になってきて、澤先生がおっしゃったように、私共は学の方には教育、それから基礎的な研究、これは必ず我々が手の届かないところとしてお願いをしたいと思いますし、我々はそういった方々の思いを受け取って、アップライトサイエンス、アップライトテクノロジーの方にどうやって人、金、ものが落ちるのかということで、お互いに仕事をだぶってやらないような枠組みというのは、産業界にとっては非常に重要度が高いと思っています。
深野氏:
学に期待するところは大変大きいですけれども、関西経済同友会のベンチャー委員会の活動で海外を見ておりますと、日本の大学と海外の大学でいくつか違う点があって、1つは自分たちのやった研究成果をどう世の中に見せていくかということについて、若干アプローチの違いを感じます。イスラエルの大学では自分たちが開発した技術が、実際、社会にどう実装されているか、開発した先生の紹介も含めて、非常に分かりやすく映画や展示物にして公開をするような施設を持っておりまして、日本の大学でそこまで自分のところの研究開発成果というのがどう社会に実装されたというふうに見せている例というのはあまり承知をしていないですけれども、例えば、もう少しそういうことをやると社会に対するインパクトというのがよく理解されるのではと思っておりまして、例えば、万博なんかもそういう場として使ったら良いのではというのが1つでございます。
もう1つは、やはり大学の先生方がそれぞれに非常に面白いことをクリエイティブにやっておられる。ただ、それについて産業界から見て、どの先生がどういうことをやっているかというのは、必ずしもよく理解できていない、よく繋がっていないところがあります。そこをうまく間を繋いでいただくような仕組みがあると、物事が動いていくと思っております。これは誰がやるかというのは難しく、やはり研究についても十分経験があるし、一方で企業の活動についても経験があるような人が出てきてやらないとこれはできないので、人材は非常に限られていますが、そういう橋渡しの機能というのがもう1つないと産学連携がうまくいくことにならないと思います。それを実現していく1つのプロセスにこの万博が活用できたらという気がしております。
石黒氏:
常に、非常に難しい質問で、私も自分でベンチャー企業を立ち上げたりした経験ありますが、やはりアメリカとはかなり事情が違います。アメリカの友人の立ち上げ方とはもう社会的な構造まで違っているので、同じにはいかないと。日本型のやり方があるだろうと思う一方で、日本の大学の良かったところはそれほど産学連携が得意ではなかったことが、もしかしたら日本の大学の良さだったのかもしれないとも思うわけです。もっと大学が自由に何でもやれるような、大学もどんどん規制等が厳しくなってきて、大学の自由度を産業界の方でもっと容認してもらえるか、許容してもらえるようなそういう雰囲気になると良いなと。あとはやはりみんな東京へ行きます。大阪にいたいと思えるような場が創れないと良くないと思います。もう今、あんまり東京へ行く意味ないはないのではと思います。交通手段も通信手段も発達しています。なぜ大阪を選ぶのかというところの理由付けができるようになると素晴らしいなと。答えがないですが、日本独自の、大阪独自の産学連携を考え直すチャンスかもしれないというふうに思います。
澤氏:
かつてどの都道府県も藩で縦割りのなか、大阪だけは藩ではなくて自由の世界で、町人の世界だったというポテンシャルは、教えられたわけではないですが今でも息付いているような気がします。他の医学部の成り立ちは大体藩校で、藩校が藩主の下に厳しい教育をしていたのが、明治維新で医学部になり、大学になっているのがほとんどですが阪大だけ私塾、適塾という私塾です。これから始まった。塾のようなスタイルから始まって、しかも帝国大学になるときに国には拒否されたのに、民間の方々が巨額の寄付を下さって帝国大学になった。この歴史を振り返っても、現在の流れを見ても、そこの力は大きいのかなと思います。縦割りではなく横に自由に広がる。よくラテン系と言われたりしますが、大阪人の自由な空気は、これは1番大きなエネルギーになるかもしれないというのが、私がいつも考えているところで、そういう意味で大阪にある大学は、それぞれが自由な中で繋がっていけば良いのかなと思います。産学連携も、私たち、実はクロスイノベーションイニシアティブというのを3年前につくっています。産学連携はみんなやってきましたが、上から目線で医者の態度が悪く、企業の方々はどうしても下からとなるような連携になってしまいなかなか深掘りできません。私が考えたのは、少なくとも30社ぐらいの会社が集まって、コミュニケーションがすごく生まれると。オープンイノベーションで私たちが真ん中に一緒にいて、みんなでバリアフリーにして、同じ釜の飯でフェアにやりましょうということになった途端に、そういうふうな雰囲気が出てきたのもありますので、産学連携というのは、立て付けを壊して、もう1回フリーにしてやり出すと大きな繋がりになるのではと思います。それは大阪の気風かなと思いますし、そういう流れが万博に繋がれば良いと思います。万博は一つの通過点のシンボルであって、そこから先々までそんな仕組みが大阪から発信できれば良いと。そういう意味での産学連携というのが、やはり長続きするのではないかと思います。
齊藤氏:
先程、石黒先生からすぐ東京に行ってしまうというお話がありました。戦後、大阪で生まれた新産業、成功するとみんな東京へ行く。これが戦後の大阪を駄目にしてきた原因の1つと思います。だから、大阪独自の産学連携の在り方を考える良いチャンスだというご発言が石黒先生からあったと思いますが、これについて手代木さん、如何ですか。
手代木氏:
私どもは全く動く気もなく、ずっとおります。問題はマーケットとして、例えば、東京・関東と、ものを作る基盤をどこに置くかという根っこの部分の切り分けができているかどうかだと思っていて、我々は本当に、阪大、京大含めてこれだけ優秀な大学があって、素晴らしい学生さんがおられて、研究開発からものが出ないと薬屋なんか潰れてしまいますから、そういう方々をどうやって集めるのかというと、安定的に関西でずっとやって、関西から世界に薬出しませんかというメッセージはすごく響きます。その上で、作ったものを売るときには東京に売りに行ったら良いけれども、人口が多いので、根っこはここに置いとく方が効率高い。そういうモデルをもっと強調することによって、関西にベース残してもらえるというのは可能性あると思いますが、マーケット、特に許認可等が絡むとどうしても、霞ヶ関の近くの方がというふうに思いますが、それもそこに人を置いておけば何とかなるということで、そこは、私は是非関西にその良さ、特に人の良さ、学生の良さというのを考えた上で、ベース戻していただけないかなとずっと思っています。
齊藤氏:
東京と比較して関西の医学、医療、これはどちらかというと私は西のほうが優勢ではと思いますが、医学、医療の方も何となく東にどんどん向いていってしまう、そんな感じがあるのでしょうか。
澤氏:
必ずしもそうではなくて、バイオサイエンス、ノーベル賞、医療のチャレンジングなものはほとんど西です。正直、東京と心臓外科の領域で比べても、関東は施設が多過ぎて、そのサバイバルな経営の方に力を入れざるを得ないのであんまり余裕がないです。ところが関西は比較的そういうところが少なくて、むしろチャレンジングにいろんな臨床試験等をしやすい状況にはあると思いますし、何よりも研究開発への取り組みも、どちらかというと実用化の方は関西の方がより強いと思います。
齊藤氏:
有り難うございました。万博の中身はこれから具体的検討が急ピッチで始まります。本日示されたアイデアが反映されるように、私共、ここにお集まりの皆様が様々な場面で関係者に働き掛けていっていただきたいと思います。
本日は有力なIR事業者3社のトップの方もご参加していただいております。ディスカッションの内容を計画に反映していただくと同時に、夢洲全体のまちづくりにも応分の責任を果たしていただくことを、私個人としては希望致します。夢洲を訪れた人々が心身共に健康になって帰っていく、スマートでウェネスなIR、ウェルビーイングなIRの実現。そして、産学公が連携して新産業を創出する場としての夢洲の実現に向け、本日ご参会の皆様もご一緒に是非行動していっていただきたいと思います。

===== 第1部終了・休憩 =====

第2部 IR事業者プレゼンテーション 第2部では大手IR事業者の内、プレゼンを希望された3社様(合同会社日本MGMリゾーツ、ラスベガス・サンズ社、メルコリゾーツ&エンターテインメント社)にプレゼンテーションを行っていただきました。

●合同会社日本MGMリゾーツ 代表執行役員兼社長
ジェイソン・ハイランド 氏
2025年万博の大阪誘致に成功した今、やらなければいけないことは山積みですが、MGMは100%大阪の夢洲にコミットし、夢洲にIRを実現したいという情熱に関しては誰にも負けないつもりです。
MGMリゾーツインターナショナルはアメリカ合衆国で株式市場に上場する大企業の1つです。8万1000人を超える従業員を擁し、アメリカではネバダ州、ニュージャージー州、ミシガン州、マサチューセッツ州並びにワシントン周辺で事業を展開し、その他では中国本土、マカオでもリゾートを経営しており、2018年夏にはMGMスプリングフィールドをマサチューセッツ州でオープンしました。全施設を合わせると、合計で4万8000のホテル客室数、470の飲食関連店舗、リテール関連ですと330店舗、MICE関連では国際会議、展示会場等の展示スペースは合計で36万㎡にのぼり、アリーナを含む25個以上のエンターテインメント施設を保有、運営しています。このようなゲーミング以外の事業からの売り上げがラスベガスでは全売り上げの70%近くを占めています。
MGMはこれまで過去5年に渡って、日本に注力してまいりました。その中で関西と大阪の人々に触れ合い、豊かな文化、経済界の絆の強さに感銘を受け、先日、MGMが持つ全ての能力をここ関西に集中させることを決定し、年が明けてすぐ、大阪ファースト方針を宣言致しました。私はこれまでのキャリアにおいて多くの時間を関西で過ごしてきました。まずはアメリカ政府の一員として、今は日本でのMGMを代表とする者として、関西の経済界の皆さまならびに地域の皆様との交流を深めるにつれ、今後はより多くの時間をこの地域で過ごせることに大きな喜びを感じております。
MGMはこの数年の間、数多くの文化や教育分野のイベントに参加しました。例えば、岸和田だんじりや、よさこい踊り大会のスポンサーにもなりました。このことからもMGMが地域とのパートナーシップをただのスローガンに終始するのではなく、実際の行動を伴っていることがお分かりいただけるかと思います
では、ここからはMGMの大阪ファースト宣言の目標について具体的にお伝えします。関西の経済を拡大することは、大阪ファースト方針において非常に重視している目標であり、それを支える4つの柱があります。まず1つ目として、イノベーションはIRのDNAとして組み込むべきであり、サステナビリティーの取り組みも考えています。また2つ目に、人類のウェルネスは不可欠な要素であり、大阪万博2025年のテーマでもあると思います。そして3つ目は、日本政府にとって観光産業の発展は大きな指針の1つで、関西経済の発展にも繋げることが重要だと思っています。4つ目に、中小企業を中心とした地元の企業の人々と一緒に連携し、持続可能な地域形成を見出していきたいと思います。
関西各地から集めた新しいアイデア、革新的な技術、サステナビリティー技術をIR、ホテル、MICE、観光振興センターの中に取り入れていきたいと思います。MGMはサステナビリティーを企業文化の1つのコアバリューとして掲げており、環境へのインパクトをなるべく減らすような施策を取り入れ、サステナブルな運営方法を模索し、資源の節約や廃棄物の処理に取り組んできました。
そして、設計、建設の方法にもサステナブルな手法を取り入れています。スマートでサステナブルであることが大阪IRには不可欠で、日本のサステナビリティー関連の技術を様々な施設の中で取り入れていきたいと思います。建物はスマートで革新的なデザインにし、大阪にある蓄電池の再生技術やクリーンエネルギー施策も取り入れていきたいと思います。
そしてまた、我々は業界トップの責任あるギャンブルを促す技術も持っております。ギャンブルの愛好者が節度を持ってギャンブルに参加できるようにゲームセンスというプラットフォームをMGMのリゾート全てに導入しております。全ての方々に気軽に相談をしていただき、適切なギャンブルとの付き合い方をしていただきたいと考えております。
そして、「いのち輝く未来社会のデザイン」という大阪万博のテーマに沿い、ウェルネスやホスピタリティーの精神を取り入れ、スパや客室、MICE、医療機関で提供していきたいと思っています。特にMGMはステイウェルミーティング、健康的な会議をテーマにし、健康的にワーキンググループや、新しいアイデアの発想会議ができるような場をつくり、最新の技術を用いながら人々が物理的にもバーチャルにも繋がるような人間工学的な場所を考え、ステイウェルというプログラムも実施し、大阪の企業様とも連携をしていきたいと思います。
日本政府はIR法に、「わが国における各地域の観光の魅力に関する情報を適切に提供し、併せて、各地域への観光旅行に必要な輸送、宿泊、その他のサービス手配をする」と書いています。観光地の活性化ですが、例えば、ラスベガスではラスベガス地域からさらにグランドキャニオンや、アリゾナ、ユタ、カリフォルニアに人々が旅行に行くハブとなっています。このように関西のIRが日本に観光に来るお客様の窓口となるよう関西地方全般をIRの中で紹介し、お客様には是非関西各地、日本各地にも足を延ばしていただきたいと思います。そのために、既存の旅行会社とも連携しながら日本らしい、そして四季を通じた様々な日本の体験を提供したいと思います。
地域社会というのはIRに必要不可欠であり、IRは地域中小企業にプラスな影響をもたらします。我々は数百億円規模が毎年地域のベンダー、その多くが中小企業に投じられると見ております。例えば、MGMの資本投下のおよそ2割が地元の多様なベンダーに対するものです。ラスベガスのシティーセンタープロジェクトにおいて資本投下は10億米ドルを上回りました。そして、このプロジェクトにより8000もの建設雇用が生まれました。IR運営にはホテルの客室やレストランでよく見られるものから、特殊なオペレーションサービス向けのものまで相当な数の商品、サービスが必要となります。それらを中小企業に担っていただくため、全力を尽くして地元および地域の中小企業の皆様と関係を構築します。例えば、我々のワシントンD.C.近郊のナショナルハーバープロジェクトにおいて、地域社会との合意目標をはるかに上回る建設費の32%に当たる2億9500万ドルを、SME103社に投じました。
我々は大阪IRを関西の心を称えるものにしたいと考えています。これを実現するため多くの関係者と話をし、遊び心に加えて関西の重要な遺産を尊重するようなものを考えています。最も重要なことはIRで関西の地域社会全体を繋げるということです。大阪、そして関西、日本の商業の中心であり、また、エンターテインメントと文化の中心です。大阪のお笑いから文楽、食べ歩き、その他にも数多くの伝統的芸術が京都にあります。
大阪でIRを開発することは、大阪、そして関西地域に大きな利益となります。まずIRは関西地方全体を多くの新規観光客、特に訪日外国人に対してプロモーションします。夢洲は絵葉書になるような必須観光スポットになり、多くの新規観光客を関西に集客することができます。また、夢洲のIR投資によって、夢洲、その周辺のベイエリアの投資が促進されます。そして、IRはIR以外の観光地も含め、新たなナイトライフ観光やエンターテインメントの体験等、非常に多くのビジネスの機会を大阪経済、関西経済にもたらします。そして、大阪のIRは年間最大でおよそ1000億円に上る歳入を大阪府、大阪市に提供します。これらの収入は教育の資金から市の主要なインフラ改善に至るまで様々な分野で活用できます。さらに、大阪のIRは多くの雇用を生み、関西経済成長の一助となることでしょう。大阪IRは関西から日本全国へと観光客を誘うゲートウェイとなるのです。

●ラスベガス・サンズ社 グローバル開発マネージング・ディレクター マリーナベイ・サンズ 社長兼CEO
ジョージ・タナシェヴィッチ 氏
大阪IRは、IRが文化、社会、ウェルネス、生き生きとした生活に対してどのように貢献できるのか、その価値を世界に知らしめていく理想的なフォーマットです。ウェルネスプログラムを大阪で成功させるためには全てのステークホールダーの協力が必要です。IRはもちろんビジネスの企業でありますが、色々な要素が集まっているものです。我々は、IRというのは多くのコミュニティー、社会、人々の熱意、マーケットの熱意、政府の熱意も巻き込んでいくことが必要だと思います。健康な生活にはステークホールダーの中でどのような相乗効果を見ていくのかということが大事です。
IRは、万博の弾みを生かしていくというもので、色々なステークホールダーの中で行われるべきです。政府、医療業界、民間部門、ビジネス、コミュニティーグループ、IRリゾート等、それぞれにオペレーターがいます。我々はこういった相乗効果を見て、大阪がゴールを達成できるようにします。
大阪が万博に選んだテーマは素晴らしいと思います。なぜなら、大阪は既にこのマーケットに力があるからです。日本のトップ10の製薬会社が大阪に基盤を置いています。トップの大学も非常に強い医療プログラムを持った大学もあります。民間部門、学術部門がこの地で素晴らしい進展しており、ここにIRが弾みをつけることができると思います。さらに、舞洲に近いということもあります。夢洲と舞洲は近いですから、共同してやっていくこともできます。IRが大阪の今ある特徴を強めていくということです。
IRをウェルネスのための駆動力と見て下さい。入札、建設のとき、メディアは非常に注目するでしょう。意識を高めるというプロセスも必要で、大阪は今ある評判、ウェルネスであるという目的地、アクティブリビングというところを見ていきたいと思います。
また、IRは素晴らしい機会を提供できる場所があります。様々なテーマに基づいて多様なイベントが開催できます。例として、我々はヘルシーリビング、ウェルネスに関係する何百というイベントを毎年行っています。大きなエキシビション、企業の会議、国際会議、それからお客様にベースを置いた技術、IT、自動車産業、財政業務、医療業務関係の会議等もあります。これは我々のMICEビジネスの大きな要素となります。
また、各IRリゾートには素晴らしいリテールモールがあります。例えば、マリーナベイ・サンズはツーリストに焦点を当てた郊外のモール型で260の店舗があります。小売店でお客様に支払っていただく額が非常に高いのです。漢方薬やビタミンのショップ、シンガポールのローカルな会社など全てが成功をしています。同じような小売のオペレーターがショッピングモールの経験を生かせると思います。
また、我々は多様なスペースを持っており、スポーツイベントや、プロモーションイベントをします。オリンピックバスケットボールチームの練習試合や、博覧会、テニスマッチもやりました。また、プロモーションイベントに使える場所も色々とあります。
我々のヘルスウェルネスコミュニティーに対する貢献ですが、例えばマリーナベイ・サンズは多くの人が集まれるようになっており、コミュニティーを巻き込んでイベントができます。また、セレブリティーの方や各国の大使の方々に対してのイベントもできます。そして、ビルは素晴らしいプロモーションとなっています。世界有名なスカイパークのプールがあり、オリンピック競泳選手が来てくれたり、バスケットボールのデモンストレーションをしたり、子どもたちを集めたこともあります。タイガー・ウッズも何度もコミュニティーイベントに参加をしています。デビット・ベッカムが来たイベントでは、子ども達のサッカー上達のために彼の経験をシェアしてくれます。デビット・ベッカムに大阪にも来てほしいですよね。コミットメントを示して、スポーツ、エンターテインメント、素晴らしいスターを招くということも素晴らしいことだと思います。
イベント以外にも、ヘルシーリビングをクラブ活動で促進をしています。マリーナベイ・サンズには1万人の従業員がおり、色々なクラブがあります。チーム内で士気を高めることは大事ですし、彼らが楽しんで競争しているのを見るのは楽しいことです。
次に、IRがビジネスに与える影響ですが、例として、シンガポールでは中小企業に機会を与え、彼らのビジネスレベルを上げていきました。我々は、全て購買はローカル企業から行うことにしています。特にマリーナベイ・サンズは88から90%の調達はローカルで行っています。つまり、全ての人々が経済的な成長から利益を得る機会があるのです。もし我々が大阪でやるチャンスをいただければこのようなプログラムをやっていきたいと思います。
また、雇用にも焦点を置いています。1万人の従業員がいると言いましたが、様々なレベルの仕事があり、専門知識、教育、年齢、様々な人々がいます。つまり、全ての人々に雇用のチャンスがあるということです。雇用の66%がシンガポール人です。もう少し高くなってほしいと思いますが、課題として、フード・アンド・ビバレッジやハウスキーピングの仕事をシンガポール人はやりたがらないので、外国の方々にやっていただいています。我々はシンガポールの人々にオファーする仕事に対して拒否をするという権利を与えています。マネージメントの仕事ではシンガポール人は76%と非常に高くなっており、ほとんどの人々がマリーナベイ・サンズで働けるということを嬉しく思っています。そして、8年半働いている人々がほとんどです。我々は彼らに素晴らしいキャリアの成長の機会を与えています。
そして、ヘルシーリビングに関しては、環境に大きな焦点を当てています。ラスベガス・サンズでも、強い責任を持って開発プログラムに参加をしています。ラスベガスのプロパティーが世界中の気候分野で大きな地位を付けていますが、グリーンマークプログラムではシンガポールがこれを得ています。最近トップの会社の1つになり、気候変動分野Aリストに載りました。7000社の2%のみがそのAリストのステータスを獲得できるのです。このように我々は環境を真剣に考えています。
我々が夢洲でできることはウェルネスを新しいレベルに上げていくということです。
健康、医療の分野で新しい取り組みの例として、BDMSで、バンコクの49の病院のネットワークで健康医療の総合サービスを提供しています。皆さんが寿命を長く、生き生きと社会に参画しながら幸せに暮らせることが目的です。そのために、実際に健康評価のプログラムを行っています。例えば、栄養状態によって、どのような補助食品が必要ということを一人一人に合わせて作って提供します。
また、ラスベガスで始めたキャニオンランチも有名だと思いますが、これも健康医療リゾート経験をしてもらうための施設で最高レベルのものが提供されており、日本でも同様のものが可能だと思います。また、ウェルネス銭湯としてはタイで最も有名なチバソムは、バンコクから3時間かかりますが、それでも有名なのはサービスの質が良いからです。大阪でも同じようなアプローチをとりたいと思います。
ウェルネス自体がこれから伸び、社会に対して貢献し、新しい市場が開かれると考えています。我々は医療健康ツーリズムによって日本に新しい市場をつくることができると考えています。大阪は特に健康医療関係が発展していますので、そのウェルネスの地盤を生かして、IRでも是非貢献していただけるようにしたいと思います。十分な土地がありますので、アクセスを十分に提供すれば大きな機会が広がると思います。そして、万博との相乗効果を是非期待したいと思います。万博とIRの2つでもって世界から注目され、大阪をウェルネスツーリズムの中心にしたいと考えています。

●メルコリゾーツ&エンターテインメント社 ブランド・エンターテインメント・リテール最高責任者 エグゼクティブ・ヴァイスプレジデント
フレデリック・ウィンクラー 氏
では、メルコではこの機会をどう考えているかを7つの章でお話します。まず第1章は、大阪は1番ということです。我々は1年前に事業者として1番に大阪に事務所を開設し、そして万博招致のサポートをしました。そして、昨年の自然災害の後の義援金も率先してお送りし、関西でのCSR活動にも第一線に立って取り組んできました。そして、CEOのローレンス・ホーはメルコのグローバル本社をここに移転するということをお約束しております。
第2章は、関西と大阪を観光において日本で一番の目的地とするということです。万博はその起爆剤にはなりますが、それだけでは十分ではありません。万博の成功には2024年までにIRのインフラ設備が不可欠です。また、万博で得る実りを長期に渡って受け継ぐ必要があります。万博の来場者は2800万人、毎年IRの訪問者は3000万人と期待しています。この3000万人というのは東京のディズニーランドと大阪のUSJを合わせたぐらいになります。これだけの方が毎年来ることは素晴らしいですが、どのような方がいらっしゃるかが重要です。大阪には、長期で滞在し、多くのお金を使ってくれる人々こそがふさわしいとメルコでは考えています。2018年、訪日外国人観光客が10%増えたという喜ばしい数字の一方で、消費金額の伸びは2%に留まったという気になる数字がありました。つまり、来訪者は増えたけれども、1人当たりの消費金額が下がったということです。我々はこの流れを変えていきます。メルコはマカオでプレミアムマーケットという市場を開拓致しました。どうやって実現しているのかといいますと、カジノはわずか3%です。残りの97%のIRがどのようなお客様を引き付けるのかを決めるのです。そして、これまで我々が学んできたプレミアムゲストに関する学びとしましては、このようなお客様は最高のおもてなしを要求されるということです。だからこそ、メルコのリゾートは全てフォーブスの五つ星評価を受けています。また、世界最高の食も求められるため、我々は事業者で最も多くミシュランの星を持つレストランを抱えています。エンターテインメントでも同様です。そして忘れてはいけないのが、ゲストが求めるスタイルです。我々の新しいホテル、モーフィアスはオープニングのたった1カ月でタイム誌が選ぶ世界の最も偉大な場所トップ100に選ばれました。
そして第3章、実は夢洲は単なる島ではありません。夢洲だけを見て、島として捉えているとインパクトは現定的になってしまいます。これからお迎えしたい3000万人のゲストはもっと特別な何かを求めています。それは、皆さんのお膝元、関西にあるのです。国際会議の参加者は会議場があるから夢洲に来るのではありません。会議が終わった週末には観光や散策ができるからお越しになるのです。つまり、IRだけではなく地域全体のイメージをつくることが重要です。そして、IRから魅力に富んだ周辺地域へ足を延ばしていただくことです。ただ、今後訪日してもらいたい方々は関西のことをまだあまり知りません。京都と大阪が近い、神戸、奈良、和歌山がどれほど近いかもご存じないのです。つまり、IRの成功にはパートナーシップが欠かせないのです。メルコはパートナーシップを基礎としています。また、大企業とのパートナーシップだけを追求しているわけではなく、調達の機会に地元の企業にも大きなものをもたらすことができます。さらに、メルコは地元の中小企業と共同で投資をし、共同で所有を行うことによってパートナーシップを築き、企業の成功を後押し致します。そして、民間企業のパートナーシップは重要ですがそれだけではなく、行政、商工会議所、その他の諸機関とも手を携えます。マカオ政府の中間報告ではメルコは1位にランクしており、最近もマカオ政府の方から、メルコはマカオをグローバルエンターテインメントのひのき舞台へと引き上げたと評価されました。
第4章、21世紀の価値ということです。IRはエキスポとともに手を取っていかなければなりません。大阪のIRはこの新しい世紀に大阪を引き上げなければなりません。過去を尊敬しながらも、新しい世代に向かい未来をつくっていくということです。IRオペレーターは非常に規制されていますが、我々はしっかりと規制に従っています。キプロス、フィリピン、マカオでIRを運営し、香港に本社があります。ニューヨーク、香港、それからマニラで株式取引所に上場しています。そして、4つの株式市場のルール、そして証券法3つ、それからゲーミングの規制3つをしっかりと順守しています。コンプライアンスが我々の企業としての文化の要であると考えています。そして、我々はサステナビリティを中心に置いている企業です。ソーラーパネルの採用数はホスピタリティ企業において世界最多です。また、顔認証技術を使って、責任あるゲーミングに対処しています。この技術で検知率が1500%上がりました。また、日本においても、マイナンバー制度と一緒にメルガードを独自開発し、導入する考えです。同時に、以前から大事なことは変わりません。しっかりとした財務管理に重点を置いています。堅牢なキャッシュフロー、それからレバレッジは最小で、堅牢な財政状況を保っています。
第5章は、我々がすべきことは日本、関西を輸出し、人々に来ていただくということです。ディズニー、シルク・ドゥ・ソレイユは既にあります。よくインタビューで、マカオで人気のショー、ザ・ハウス・オブ・ダンシング・ウォーターをこちらに持ってくるのかという質問を受けますが、その答えは残念ながらノーです。我々は他に類を見ない大阪、夢洲にしかないものを見ていただきたいのです。人々が実際に来て、見たいと思うものをつくるべきです。日本のベストを世界のベストとマッチングさせることで日本を輸出し、訪日客を増やすということです。ONE PIECEは世界中でも最も売れているマンガ本です。私のホームタウンのパリの一番クールなコンテンポラリーな美術館はパレ・ド・トーキョーです。ニューヨークのクールなレストランは日本のZumaです。1番売れているビデオはスーパーマリオです。人々はこういったものに魅了されます。そして、日本が本当に大好きになります。何か日本を素晴らしくエキサイティングにするものをつくらなければなりません。
第6章は、皆さんの街を未来の街にするということです。2024年までに準備するため、技術、健康、環境、全てを統合することが大事です。MICEの要素としては全てを一つに集めるマイステインメントを考えています。エキサイティングで、技術を駆使し、そして環境や健康のことを十分に考えて、コンベンションや、エキシビションを開催するときに、どうしても行きたいところになることが必要です。ヘルス&ウェルネスはクリニックでの健康だけではなく、これをリゾートに統合してホテルの客室内でも提供できます。環境も大事です。我々は世界で最もサステナブルなリゾートにしたいとしています。技術だけを見ているわけではなく、自然も重視しています。日本には特に自然の大切さ、それから庭園というものの素晴らしさがあります。
最後となる第7章で言いたいことは、お金が全てではないということです。関西を輝かせていきたい、そのために我々は皆さんから助けを得たいと思います。皆さんのご意見、皆さんのご希望、何をされたいのか、そういったことをもっとお聞きしたいと思います。それから、未来の街を共につくっていきたいと思います。福島さんが夢の島をつくると言われました。シティー・オブ・ドリームス、夢のまち、そういったものをつくっていきたいと思います。

閉会の御挨拶

福島 伸一 氏
株式会社大阪国際会議場 代表取締役社長、(公財)大阪観光局会長、(一社)関西経済同友会 万博&MICE・IR推進委員会委員長
ご登壇いただきました皆様、本日は誠に有難うございました。冒頭、本シンポジウムは長丁場と申し上げましたが、個人的には非常に内容が濃いシンポジウムであったと感じます。特に、パネルディスカッションでは来たる万博の切り口が議論、提起されたと思いますし、万博とIRのシナジー効果をどう創り出していくのか、我々大阪・関西にとっては最高のチャンスでもありこれからの6年を考える上で、本日のシンポジウムが大きなムーブメントの1つになったのではないかと思います。そして大阪、関西がもっともっと元気になることを皆さんと共に祈念致しまして、御礼のご挨拶とさせていただきます。本日は誠に有り難うございました。

シンポジウム後は、301号室において、ご登壇者の伊藤忠商事株式会社 常務理事 社長特命(関西担当)、(一社)関西経済同友会 常任幹事 深野弘行氏の乾杯の発声のもと、情報交換会が盛大に開催され、講師も交えて多くの参加者による活発な交流と意見交換が行われました。