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「第2回夢洲IR&万博が未来を拓く産学公共創シンポジウム」開催報告

2018年4月9日

夢洲における日本万博誘致の機運を盛り上げ、未来志向のIRと万博がシナジーを起し、日本と世界の人々の心身の健康と幸せに貢献する一歩になることを願い、「第2回夢洲IR&万博が未来を拓く産学公共創シンポジウム」を2月17日(土)13時より、関電会館(関西電力本社ビル4階)において、株式会社健康都市デザイン研究所、学校法人滋慶学園グループ主催で開催致しました。
公益財団法人大阪観光局様、一般社団法人関西経済同友会様、大阪国際フォーラム様、関西公立私立医科大学・医学部連合様、一般社団法人医療国際化推進機構様からのご後援のご支援、丸一鋼管株式会社様、コクヨ株式会社様、塩野義製薬株式会社様、サラヤ株式会社様、株式会社大林組様、株式会社竹中工務店様、ユアサM&B株式会社様、がんこフードサービス株式会社様、岩井コスモ証券株式会社様、株式会社博報堂様、富士通株式会社様、凸版印刷株式会社様、相互タクシー株式会社様、日本コンベンションサービス株式会社様、株式会社ジーライオン様からのご協賛のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。経済界、学界、医学界、経済団体、行政機関等から320名近くの方々にご参加戴き、盛大に開催出来ましたこと、心より御礼申し上げます。
本シンポジウムでは、衆議院議員 西村康稔氏、公益財団法人大阪観光局理事長 大阪府・大阪市IR推進会議座長 溝畑宏氏、大阪商業大学総合経営学部教授 特定複合施設区域整備推進委員会委員 美原融氏に、グローバルな視座でのご講演を賜りました。

Ⅰ. シンポジウム

開会 開会の辞:浮舟邦彦氏 学校法人滋慶学園グループ 総長 本日は本当に大勢の皆様にお集まり戴き、産学公共創のシンポジウムを開催させて戴くことが出来ました。想定外の350名を超える方々にご参加希望のお申し込みを戴き、第2会場まで設けさせて戴いた次第です。第2会場では映像でご参加戴く形になりましたことをお詫び申し上げます。IRと万博。この大きな2つのテーマが本日のシンポジウムの議題でございます。
関西経済同友会の万博&MICE・IR推進委員会が昨年8月に『Well-Being新産業創造と世界最高水準の「日本型IR」に向けた夢洲まちづくりへの提言』を発表しております。本日は、IRにおいてキーマンである講師の皆様のご講演、また、IR事業者の代表の皆様にもご登壇を賜っております。皆様、本当にお忙しい中、本シンポジウムにご登壇戴きましたことを厚く御礼申し上げます。
本日のこのシンポジウムがIRや万博の推進、皆様の思いを一つにするというところからも、価値のあるシンポジウムになるだろうと思う次第でございます。
素晴らしいシンポジウムになりますことを祈念申し上げます。この大変短い期間の中で開催に漕ぎ着けました関係者の皆様、事務局の皆さんとりわけ井垣さんの尽力に敬意を表しまして私の開会の辞とさせて戴きます。

御挨拶:福島伸一氏 株式会社大阪国際会議場代表取締役社長
(一般社団法人関西経済同友会万博&MICE・IR推進委員会委員長 公益財団法人大阪観光局会長)
一般社団法人関西経済同友会万博&MICE・IR推進委員会の委員長を務めております大阪国際会議場の福島でございます。
まずは本日のシンポジウム、急な所用で欠席となり、メッセージでのご挨拶となりましたこと深くお詫び申し上げます。
本日は「第2回目の夢洲IR&万博が未来を拓く産学公共創シンポジウム」に多くの皆様にご参加戴き有り難うございます。このシンポジウムは関西経済同友会万博&MICE・IR推進委員会の委員長代行の(株)健康都市デザイン研究所と同副委員長の学校法人滋慶学園グループが主催され、他に多くの団体・大学・企業の皆様にご支援戴き、この様に盛大に開催されますことをお慶びとお祝いを申し上げます。
本日のプログラムは西村康稔衆議院議員様の招待講演の後、基調講演、IR事業者様のプレゼンテーション、パネルディスカッションと盛り沢山で豊富な内容でございまして、ご期待戴ければと思います。本日、超多忙な中、ご講演を快くお引き受け戴きました西村先生は、現在、内閣官房副長官として大活躍されている先生でございます。本日は「アベノミクスの今後〜観光・IRを中心に〜」と題してご講演戴きますが、私がご紹介するまでもないかとは思いますが、西村先生は経済・外交はもとより、観光・スポーツ・労働福祉等全てに渡り政策に長けたオールラウンドの先生でございましてこれからの日本の政治を支えるリーダーのお1人と期待し尊敬しています。本日は、本当にお忙しい中おい出戴きまして有難うございます。重ねて御礼申し上げます。
また、本日は世界のIR事業者のトップの方々によるプレゼンテーションもございます。皆様方の大阪・関西のIRに対する熱い思いと素晴らしいご提案をお聞かせ戴けるものと期待しておりますので宜しくお願い致します。
さて、私共、関西経済同友会では、IRは国際観光のキラーコンテンツであり、大阪・関西が世界有数の観光拠点へと更に発展し、関西の成長エンジンとして観光振興、地域経済の活性化、サービス産業の高度化に大変有効であるとの認識のもと、これまで「大阪・関西らしい世界初のスマートIR-City」や「IRの経済効果やギャンブル依存症対策」の提言、また、直近では昨年8月にウェルビーイングに関する新産業の創造や夢洲全体を特区にするという夢洲まちづくりの提言を行なって参りました。
一方、大阪府市では一昨年のIR推進法成立を受けて昨年8月に「大阪IR基本構想(案)中間骨子」を発表されました。この内容は、私共が提言して参りましたものと同じ内容や施策が多く盛り込まれており、大変喜ばしく思っています。
そしてもう1点は、2025年誘致を目指しています万博でございます。現在、官民あげての海外プロモーションが進められており、来月3月上旬には万博事務局BIEによる日本での現地視察があり、11月にBIEの総会で開催国が決定致します。是非、オールJAPAN、オール関西で誘致を勝ち取りたいと思いますし、そのためにも地元での機運醸成を皆様と共に一緒に盛り上げていきたいと思います。
大阪・関西でIRを開設する意義は、これは私の個人的な私見ですが、この万博との相乗効果・シナジー効果をいかに発揮させるかであります。これにより、課題である夢洲等への交通アクセスや基盤整備などのインフラの環境整備がスピーディに進むことが期待されます。
関西の強みであります、健康・医療・ライフサイエンスを活かした新産業を夢洲で創出することは、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」と関わりが深い、国連が掲げていますSDGs(持続可能な開発目標)への貢献にもつながるものでございます。
また、AIやIoT、ロボット、ビッグデータ等を活用した日本が目指すSociety5.0の社会を実現する実証実験の場として夢洲を活用すべきです。加えて、夢洲のまちづくりにおいては、長期的な視野が必要であるということは申し上げるまでもないと思います。
これらの取り組みを通じて、世界の他のIRとの差別化を図り、世界最高水準の、未来型の、大阪関西らしいIRを夢洲で是非実現したいと思います。
現在、大阪・関西はインバウンドで大変活況を呈しています。そして、1年後の2019年のラグビーワールドカップ、東京オリパラ、そして、アジアで初めての関西ワールドマスターズゲームズのゴールデンスポーツイヤーズが控えています。
更に、うめきた2期や中之島の再開発、なにわ筋線の開通、そして今日のテーマのIR、万博と、関西は大きなビッグプロジェクトやイベントが正に目白押しです。是非これらを成功させ、大阪関西を元気にして参りましょう。
最後になりますが、今日はこのシンポジウムがIRと万博の誘致成功、そして、これからの関西の新しい成長への起爆剤と活性化へつながることを祈念しまして、私の開会に当たってのご挨拶とさせて戴きます。

第1部 ご講演 招待講演では、衆議院議員 西村康稔氏に「アベノミクスの今後〜観光・IRを中心に〜」、基調講演①では、公益財団法人大阪観光局理事長 大阪府・大阪市IR推進会議座長 溝畑宏氏に「IR、万博が関西・大阪の経済成長、都市政策に及ぼす大きな効果」、基調講演②では、大阪商業大学総合経営学部教授 特定複合施設区域整備推進委員会委員 美原融氏に「IR:制度構築の現状と課題」と題し大変貴重なご講演を賜りました。

招待講演:西村康稔氏 衆議院議員
「アベノミクスの今後〜観光・IRを中心に〜」
ご紹介戴きました衆議院議員の西村康稔でございます。
私も淡路島と明石市が選挙区でございますので、関西圏の代表の一人としてお声掛けを戴き、楽しみにしてやってまいりました。
本日はアベノミクス経済全体の話と、万博、IRを是非とも両方実現していきたいという思いを込めながらお話をさせていただきます。
現在、経済は非常に好調で、インバウンドの観光客は2800万人という多くの外国人が日本に訪れて下さるようになっております。TPP11は、アメリカ抜きではありますが、3月8日に署名することになり、EUとのEPAの合意がなされました。日本は色々な取引や貿易が自由に出来、投資や知的財産が保護され、高いレベルのルールに基づいた経済活動が可能な、良好なビジネス環境が整備された国であり、自由で公正な取引を世界に広めていこうとしています。今、アメリカ経済も非常に良いので、トランプ大統領もTPPや気候変動についてのパリ協定への参加を考えても良いという趣旨の発言をされています。日米の経済対話をし、アメリカも巻き込んだ形で、自由かつ公正な貿易、投資の環境を作っていきたいと思います。そして、新興国である中国も含めてそういったルールの中に入ってきてほしいと思っております。
経済が変革を遂げる中で、成長し、それを分配し多くの人が恩恵を得られる、それが成長と分配の好循環です。持続可能な成長というのが新しい世紀のキーワードの一つだと思っております。一時だけ儲かるのではなく、環境や人権といった色々なことに配慮しながら末永く成長を続けていくことが大事です。加えて、一部の人たちが富を独占するのではなく、多くの人が豊かで幸せな生活を分かち合えることがもう一つのキーワードだと思います。そういったことを安倍政権は成長と分配の好循環、「一億総活躍」という言い方もしながら、全ての人に成長を促すことを行なっています。
時代も大きく変化をしてきております。ビッグデータの可能性、AIは人間の知能を超える日が来るのでは言われており、実際一部では超えています。また、キャッシュレス取引は日本で約2割の普及率ですが、中国や韓国では6割以上がキャッシュレスで取引が可能です。測量に関してはドローンを使うことで、測量士の仕事がなくなるのではないかという話もございますが、より生産性のある仕事が可能になり、付加価値の高い仕事が出来るようになります。こういった技術で新しいことにチャレンジして戴きたいと思います。また、今は、補助金申請の書類は薄くなり、オンラインで申請が可能になりました。それを徹底して実践していこうとしています。行政手続きにおける添付書類は撤廃して、マイナンバー制度、法人番号制度を使い、一回登録されればそれを使えるようにしようとしています。引越しに伴う手続き等を一回の手続きで済むようにしようという「コネクティッド・ワンストップ」というようなことも含めて、今年、法律を出そうとしています。行政も変わります、民間の皆様にも変わっていただき、人手不足のピンチをチャンスに変え、新しい分野へのチャレンジをしていただきたいと思っています。
レジュメに書いておりますが、トヨタのギル・プラット氏は、日本の企業のものづくりは地道な努力で改善していき技術を磨いていく、トヨタと組んでイノベーションを起こし、新しいものを作っていきたいと思い、この会社を選んだと言われました。イノベーションを起こし、新しい商品・サービスを是非、大阪から生み出してほしいと思います。その足掛かりとして大阪万博、IRを成功させてほしいと思います。オリンピック後の経済が心配される中、日本の力を発信してほしい、その一つが大阪万博です。皆の力を合わせて是非とも成功させてほしいと思います。東京オリンピック、大阪万博、札幌オリンピックを目指してほしいです。
外国人も大いに日本で活躍してもらいたいと思います。日本で働く外国人は5年前に比べて飛躍的に増加しており、ポイント制を使うとご家族を連れて来日が可能であると共に、ポイントによっては、1年で永住権を得ることが出来ます。必要な分野で必要な技能を持った方々が日本で働けるような環境をこれからも作っていきたいと思っております。
大きな時代の変わり目に、是非チャンスを掴んでほしいと思っています。ビザの取得も簡単になっており、免税店も沢山増え、民泊も法律の整備を致しました。
ただ、一点、課題であるナイトタイムエコノミーというところを何とかしていかなければいけません。そこで期待されるのがIRです。国際旅客観光税も導入しますが、国際会議場や展示場も日本では規模が小さいことが課題の為、IRの中で整備されることを期待しています。ギャンブル依存症対策を先にやるべきだという意見もありますが、パチンコとIRは違う種類だと思います。カジノ部分の面積をどう考えるのか、上限規制を設けるべきだという議論があり、一定の基準を設けるつもりであります。バランスをどうとっていくのか、また展示場の大きさも地方でも対応できるように考えていきたいと思っております。政府内で案を作り、国会審議を得て成立するわけですが、頑張ればあまり時間をかけずに認定を受けられるような手続きを考えていきたいと思います。
変革の時代に、日本の技術を世界に発信できる新たな商品やビジネスモデルを、この関西から是非発信する機会になることを期待したいと思います。

基調講演①:溝畑宏氏 公益財団法人大阪観光局理事長 (大阪府・大阪市IR推進会議座長 )
「IR、万博が関西・大阪の経済成長、都市政策に及ぼす大きな効果」
先日、平昌オリンピックの聖火ランナーを務め、帰って参りました。
大阪は東京一極集中に対して二極を作るという大きなミッションを背負っております。2007年をピークに低迷している大阪の総生産を上げるためには、生産性と収益性を上げていき、第4次産業革命、観光産業、地方創生を大きな柱にし、リスクを冒してでも前に進まないと国際競争には勝てないと考えております。
民間の経済性、収益性を上げる仕組みをしっかりと作り、行政と民間で協力し成長戦略を打ち出すことが今後の大阪の経済政策のテーマであります。特に、大阪の経済成長の追い風になっているのがアジアの経済成長です。先程、観光立国の中でビザの緩和という話が出ていましたが、今ビザの緩和を進め、外国人の労働者を受け入れながら、如何にアジアを中心として外需を積極的に取り込んでいくかが大阪、関西の大きな経済政策のテーマになっています。
追い風は、平昌オリンピック、2019ワールドカップオリンピック、2020東京オリンピック・パラリンピック、2021関西ワールドマスターズ、北京オリンピック等、世界の耳目が集中する国際的なスポーツイベントが続くと共に、大阪・関西は有数のスポーツメーカーが集積しており、まさに第4次産業革命、スポーツ、食、観光等々、我々が成長戦略として戦える強い分野を有しています。インバウンドは驚異的な伸びを示していますが、関西の持っているポテンシャルを考えるとまだまだ伸びる余地があります。アジア圏からの人気は高く、東京と比較して、特に東アジア4か国は圧倒的に大阪が多くなっています。ただ問題は量ではなく、消費額が大切で、それに伴う雇用が増加、税収の増加が大事です。観光消費というのは一次、二次、三次全てに波及していきます。驚異的なのが百貨店の免税売上です。リピーターだけでなく新規が多いと共に、関西国際空港の努力によってベトナムやオーストラリア等の新しい便が増加しています。国が2020年インバウンド消費額を8兆円にすることを目指していますが、大阪は2兆円にすることを目指していかなければいけません。2014年~2020年の間に2兆増え経済効果は4兆増になります。第4次産業革命とインバウンド消費というものが、おそらくこの関西、大阪の経済を牽引していくことになると思います。
関西の強みであるスポーツ、健康、文化(お笑いや伝統等を含む)、科学技術、イノベーション、人材力に加えて、IRの誘致、万博が開催されれば、海、空、陸が連携をとることにより瀬戸内や中国地方、北陸地方との連携が促進されます。関西国際空港、伊丹空港、神戸空港が連携し、国とも連携調整することにより、羽田、成田を凌駕するアジアのハブ空港になれるのではないかと思います。
観光立国というのは単純にインバウンドだけでなく、交通政策、都市政策、文化政策と連携をとることによってトータルで経済効果を生み出します。これは大きなテーマでありスピーディな対応が求められるのではないでしょうか。特に、大阪梅田駅では、うめきた2期開発や官民一体となった整備により、新宿駅に負けない西日本の玄関口を目指しています。
また、戦略の一つとして、24時間観光都市、ナイトエコノミーという考えがあります。関西国際空港は24時間営業ですが、夜間経済がそれに対応していない課題があります。大阪の周りにあるゴールデンシティと連携を取らなければいけません。また、Wi-Fiや表示板の多言語化等、観光インフラを官民一体になって推進していかなければいけません。経済性生産数を上げるには、消費の時間軸を伸ばし、消費の選択肢をあげ、サービスの質を上げ、高付加価値の観光施設を作っていくことが大切です。
MICEについて、シンガポールのような10,000人規模の国際会議場、50,000㎡~100,000㎡の展示場が一体となったMICE施設がナショナルスタンダードとなっている今、日本はMICEのハード、ソフトを整備し、国際競争力を高める必要があります。その中でIR・万博というのは重要なプロジェクトになっていくというわけです。
皆さんに10年後のイメージをして戴きたいと思います。2020年東京オリンピックが終わった後に、関西大阪は天下の分け目が待っているということです。万博には、オリンピック後も成長を持続させるという大義があります。大阪で万博を開けば、「ウェルネス」「健康」「ものづくり」「食」「医療」に磨きをかけ世界に通用するものにし、生産性収益性を上げていくことに繋がります。
IRについて、カジノ施設は一部であり、メインは国際観光、MICE、地域経済の活性化です。IRの弊害と言われている依存症対策をしっかりして進めていこうとしています。施設が点ではなく線として運営していくことに意味があります。世界で一流のMICE施設を誘致し、ランドマークとなるような都市政策として大阪に最先端のスマートシティ創る、こうしたことをセットにして進めていくことになります。
私は、「夢洲」は開発ポテンシャルが大変高い地域であると思っています。都心と近接した広大な用地が可能であり、関西国際空港、大阪梅田駅とのネットワークもあり、関西の主要都市とも連携が可能です。
IR推進局のIR推進会議の中で議論を重ねながら方向性を見出す中で、世界最高水準の成長型IR、世界から投資を呼び込む経済成長のエンジンとなっていくということや将来を見据えて初期投資だけでなく持続し経済効果が続くものだと思っています。これに伴う効果は、はかりしれないものがあります。ぜひ皆さんと世界最高水準のIRを目指していきたいと思います。

基調講演②:美原融氏 大阪商業大学総合経営学部教授( 特定複合施設区域整備推進委員会委員 )
「IR:制度構築の現状と課題」
制度の現状や課題、政治の動きをお話させて戴きます。
IRの法案は情報開示されている部分が少なく、複雑な法律構成になっており国民にとって非常に分かりにくいものです。今、議論の対象になっているのは特定複合観光施設区域整備法案です。複雑なのはこれに関連するギャンブル等依存症対策基本法案であり、昨年の特別国会で既に3つの案が7会派から出されています。この法案自体は与党内で法案審査が行われ、推進会議を招集し賛成を得て閣議決定し国会へという形になりますが、その前にギャンブル依存症の方を先行すべきという声が公明党や野党内にも強くあります。
2月にギャンブル等依存症対策基本法案の協議が与野党で開始されましたが、立憲民主党はIR推進法案廃止法案を出しており、立憲民主党が反対し、審議が遅れてしまうという可能性があります。実施法案は党内審議をしており、3月初旬を目途に意見調整をしてまとめようとしていますが、公明党の同意を得て、どのタイミングで2つの法案の審議を始めるかというのは非常に微妙な状態になっているのが実態だと思います。この実態が国民に明確に示されない為に、全体のスケジュール感が分かりにくくなっているのではないでしょうか。
法案の論点はカジノ施設の規模、中核施設要件と基準です。大阪のような大規模な自治体が抱えている事情と地方の自治体が抱える事情が基本的に違います。大阪は大規模施設を作ることを考えていますが、地方は違います。変わらないのは、IRは2つの施設類型で一体的な設置運営をする、その構成要素は集客施設とカジノ施設から構成され、カジノ施設は全体の一部であるということです。カジノ施設の規模を規制するべきだという考えが推進委員会でも議論されました。問題とされているのはゲーミングフロアの規制で、カジノをする施設の規模を絶対値で規制するか延床面積の一定比率で規制するべきかという考え方です。
次のポイントは中核施設の要件です。MICE施設の構成要素をMIとCEに分ける、大阪はMICE全体を作る、地方ではCEの代わりに一流のミーティング施設あるいはインセンティブツアーを可能にするような施設を作るということが議論になっています。
IRの区域の認定数も課題であり、地方の公共団体はこの認定数により左右される可能性があります。
区域整備計画の認定手順はタイミングが課題です。地方公共団体が時間をコントロール出来ない仕組みになっており、大きな方針を定め自治体が事業者を選び、整備計画を提出して認可を受けることによって初めて区域が認定されるというプロセスになっています。このプロセスをどのように公平、公正かつ透明な手順でやるかという課題もあります。
監督と規制も複雑な問題を抱えています。国土交通省とカジノ管理委員会は民間事業者と認定施設運営事業者、認定都道府県の両方を監督する一方、自治体と民間事業者は契約行為に基づいて自治体が契約上の管理監督権を持つので、カジノ部分は別の機関、IR全体は国土交通大臣が所管するという非常に複雑な状態になります。認定制度を設け更新制にし、カジノライセンスも更新制になることで認定都道府県の立ち位置がサンドイッチ状態になり、公的主体となって国土交通大臣と一緒に民間と対峙するのか、民間と一緒になって国土交通大臣に対峙するのかという非常に微妙な問題になってきます。
売上に対する特別納付金ですが、固定と売り上げ変動の二つに分かれます。固定納付金は、カジノ管理委員会の費用を固定分割で複数の事業者に振り分けるのですが、売り上げが小さければ負担が増し、地方の自治体について不利になると思います。一方売上変動納付金ですが、政府ではこれを売り上げに対し固定ないしは逓増で30%以上を考えています。あまり高いと投資減価償却ができるキャッシュフローが生まれず、投資意欲を削減しかねない状況をもたらすわけで、全ての国の公租公課を実行税率で考え事業者にどのくらい負担を課すべきかという議論が行われています。
カジノ事業の事業者規制というのはカジノ管理委員会が定めた規則ですが、前例のない厳格な制度になるので規制の深さと範囲をどう設定すべきかに課題があります。顧客消費を抑制する施策が考えられており、一つは入場料賦課、もう一つが、入場制限規制と本人確認方法です。入場料は顧客の負担ですから、賦課すれば、顧客は減るという効果をもたらします。一方、政府はマイナンバーカードを利用し、本人確認と入場回数カウントを同時に実行しようと考えています。マイナンバーカードで入場回数を把握し、一定回数に達するとカジノ事業者に排除通知がいく、このシステムを複数の事業者からの情報を国が一括管理して行うことを考えています。民間事業者は別途、不適格者特定排除システムを設け、マイナンバーカードから暴力団構成員や反社会勢力の情報を自らが取りまとめ何らかの排除システムを考えることも前提です。マイナンバーカードを使えば入場回数規制が効果的になると政府は考えていますが、エクスポージャーを減らせばカジノの依存症患者が減るという科学的根拠のない理屈から考えられているのではないでしょうか。但し、未成年を入場させない為にも本人確認は必要です。入場回数制限をやっても良いと思いますが、やり方として国民の約10%程度しか持っていないマイナンバーカードを使うというのは望ましくないと思います。日本人の入場を極度に抑制するような政策になることは間違いありません。
国の動きを注視しながら、地方として主張することは主張し、どのようにして万博、IRを成功させるか、ご議論を行って戴きたいと思います。

ご講演後終了後、話題提供として、大阪大学医学部医学科5年生 inochi学生プロジェクト代表 WAKAZO.ONLINEプロジェクトマネージャー 清元佑紀氏に「若者による万博を誘発する活動」のプレゼンテーションを戴きました。
清元佑紀氏 大阪大学医学部医学科5年生(inochi学生プロジェクト代表 WAKAZO.ONLINEプロジェクトマネージャー)
「若者による万博を誘致する活動」
私達は若者による万博誘致を行っております。課題を解決しながら実際に万博で何をするか、若者の力で課題解決を行うという活動を続けて参りました。inochi学生プロジェクトという団体は関西を医療拠点都市に、そして関西で命(inochi)の万博を実装するというテーマのもと、2015年より活動を始めました。若者の力でヘルスケアの課題を解決し関西から盛り上げていくことを念頭に考えております。2017年は万博の誘致を目標とした、「WAKAZOプロジェクト」、 新しい技術の医療への応用および医療技術の市民への運用を行おうというGENSEKI(原石)プロジェクトの2つを行ってまいりました。 WAKAZOプロジェクトでは、大阪府に対して100の提案を行い、また経産省の基本検討委員会で発言し、WAKAZO.ONLINEというアイディアを集約したプラットホームを創りました。
現在の活動は、万博を誘致する為に BIEに対して若者の可能性を如何にアピールするかということを考えております。既に辞退しているフランスは100名の若者がアンバサダーとして活躍していました。ロシアもグランドデザインに若者が起用される等、多世代で万博を考えるというイベントが行われ、特に若者の新しい文化を取り入れるということが行われています。私達はこれに勝ちたいと考えております。3月8日にはBIEの調査団に対してプレゼンテーションを行うことが決定しており、 外身、中身ともに若者が発案したWAKAZOパビリオンのプレゼンテーションをしたいと考えています。
最後に万博の誘致、夢洲に対して若者として提案したいことは、グランドデザインを考える時に是非若い人達を起用して頂きたい、ということです。若者独自の文化やイベント、SNS等様々な発信媒体を使って他国に対抗していく必要があると考えております。

第2部 IR事業者プレゼンテーション 第2部では、Caesars Entertainment Corporation/シーザーズエンターテイメントプレジデント、インターナショナルデベロップメント スティーブン・タイト氏、MGM Resorts Japan LLC/合同会社日本MGMリゾーツ代表執行役員兼CEO エド・バワーズ氏、Melco Resorts & Entertainment Japan Limited/メルコリゾーツ&エンターテインメントジャパン株式会社日本オフィス社長 白男川亜子氏、Las Vegas Sands Corp./ラスベガス・サンズ社グローバル開発マネージング・ダイレクター マリーナベイ・サンズ社社長兼CEO ジョージ・タナシェヴィッチ氏にプレゼンテーションを戴きました。

●スティーブン・タイト氏
Caesars Entertainment Corporation/シーザーズエンターテイメントプレジデント、インターナショナルデベロップメント
古い歴史持ち、ゲーミングやホスピタリティ、エンターテイメントにおける世界のリーダー的な存在として、様々な取り組みで常にリーダーシップをとってきたことのプレゼンテーションを戴きました。業界初のロイヤリティプログラムの導入や、業界初の自己排除と自己抑制のプログラムを開発する等の責任あるゲーミングのみならず世界で初めてゲーミング以外の環境づくりをとり入れて実践すると共に、MICEに関してもリーダー的役割を担ってきており、今後シーザーズフォーラムを立ち上げるとご説明戴きました。また、企業倫理を業界で初めて公約し、男女の雇用に関して管理職の男女比を2025年までに完全に均等にするコミットメントを発表する等、男女雇用においてもリーダーシップを担っており、大阪・夢洲を、ウェルビーイングをテーマとした世界で初のIRにし、万博が誘致されればIRと相互補完性を持って実現可能であると自社の実績や取り組みを交えた力強い説得力のあるプレゼンテーションを戴きました。

●エド・バワーズ氏
MGM Resorts Japan LLC/合同会社日本MGMリゾーツ代表執行役員兼CEO
米国で運営しているIRだけではなく、マカオに新しくオープンしたMGMコタイについて世界で最も革新的なリゾートになった実例としてご説明戴きました。カジノは事業を回していくエンジンのような位置付けであるとし、IRの実施法案が国会を通過していない現状では未知なところも多いとしながらも、大阪のIRにとって必須と考える10の命題(施設のデザイン・サービス・エンターテイメントを通じ「大阪の心意気」と「日本の神髄」を体感、年間を通じて周辺環境に対応するよう完全に機能的に運営されるべく配慮されたサスティナブルな開発プロジェクト、大阪の既存のビジネスや商業施設との協業を実現しダイナミックかつ明白な形でそのコラボレーションを強調し活用、ポジティブで観るものを「ワクワク」させ公共に資する新たなエンターテインメントを提供、大きな強みであるハイ・クオリティなデザイン性を最大限活かした施設、等々)を軸としたプレゼンテーションを戴きました。

●白男川亜子氏
Melco Resorts & Entertainment Japan Limited/メルコリゾーツ&エンターテインメントジャパン株式会社日本オフィス社長
自社のご紹介やこれまでのIR開発、その開発によって獲得した様々なパートナーシップと実績、大阪の方々とのパートナーシップの可能性についてプレゼンテーション戴きました。特に会長兼最高責任者であるローレンス・ホー氏からのメッセージを交え、プレミアム・マス層をターゲットにしたエンタメ・ナイトシーンを彩る施設、ファミリー層をターゲットにしたアトラクション、現地のニーズと特性に応じたIRや国や地域におけるパートナーシップについてのご説明を戴きました。また、地元の企業と協力して画期的なデザインをとりいれた事例として、今年半ばにオープン予定のシティ・オブ・ドリームス4番目のタワーホテルになるモーフィアスのご紹介を戴きました。大阪はスマートシティを実現する知と技術の結集である場であるとし、利用者に安心・安全でより良い体験を提供する為の技術革新に積極的に投資を行う事例を交え、夢洲で夢が咲き、夢が舞う取り組みを実現したいとプレゼンテーション戴きました。

●ジョージ・タナシェヴィッチ氏
Las Vegas Sands Corp./ラスベガス・サンズ社グローバル開発マネージング・ダイレクター マリーナベイ・サンズ社社長兼CEO
IRの法案が通ることにおいて何が大事でIRはどのような意味があるのかということについてサーベイ結果を用いてご説明戴きました。IRについて特にMBSのようなIRは日本人の半数以上が支持しているとし、その背景にはIRに対する説明を十分に行なったことが要因の一つであるとお話戴きました。また、カジノについて日本人が規制された形での運営を支持しているのはカジノに対するアクセス制限についてまだ十分な理解が成されていない結果であると考えられ、日本の方々のギャンブルの現状に対する理解がより必要であること、IR=カジノではない、カジノはIRのごく一部であり、IRは経済・雇用に対して大変重要な意味があることをしっかりと説明し、理解を深めていく重要性をご説明戴き、これらのことを解決していく為には、政府・事業者・オペレーター・メディア・学術会・コミュニティグループ等、それぞれの働きかけが不可欠であるとプレゼンテーション戴きました。

第3部 パネルディスカッション 第3部ではパネルディスカッション形式とし、座長に大阪商業大学総合経営学部教授 特定複合施設区域整備推進委員会委員 美原融氏、パネラーは第2部に引き続き、Caesars Entertainment Corporation/シーザーズエンターテイメントプレジデント、インターナショナルデベロップメント スティーブン・タイト氏、MGM Resorts Japan LLC/合同会社日本MGMリゾーツ代表執行役員兼CEO エド・バワーズ氏、Melco Resorts & Entertainment Japan Limited/メルコリゾーツ&エンターテインメントジャパン株式会社日本オフィス社長 白男川亜子氏、Las Vegas Sands Corp./ラスベガス・サンズ社グローバル開発マネージング・ダイレクター マリーナベイ・サンズ社社長兼CEO ジョージ・タナシェヴィッチ氏、そして、公立大学法人大阪市立大学理事長兼学長(特定非営利法人大学コンソーシアム大阪理事長) 荒川哲男氏にご登壇戴きました。

●モデレーター  美原融氏
 大阪商業大学総合経営学部教授 ( 特定複合施設区域整備推進委員会委員)

●パネラー ・荒川哲男氏
 公立大学法人大阪市立大学理事長兼学長( 特定非営利法人大学コンソーシアム大阪理事長 )
・スティーブン・タイト氏
 Caesars Entertainment Corporation/シーザーズエンターテイメントプレジデント、インターナショナルデベロップメント
・エド・バワーズ氏
 MGM Resorts Japan LLC/合同会社日本MGMリゾーツ代表執行役員兼CEO
・白男川亜子氏
 Melco Resorts & Entertainment Japan Limited/メルコリゾーツ&エンターテインメントジャパン株式会社日本オフィス社長
・ジョージ・タナシェヴィッチ氏
 Las Vegas Sands Corp./ラスベガス・サンズ社グローバル開発マネージング・ダイレクター マリーナベイ・サンズ社社長兼CEO

美原氏:
それでは始めたいと思います。実は、世界トップのIR事業者の方々を招いて一緒にパネルをするというのはあまり例がありません。限られた時間の中ですが、大阪の為に、皆さんとディスカッションしていきたいと思います。まず、荒川先生に本日のテーマでもある「産学公」、なぜアカデミアが万博やIRの連携に必要なのか、お考えを伺いたいと思います。
荒川氏:
本日は関西経済同友会の万博&MICE・IR推進委員会の副委員長、またアカデミアの立場としてこのパネルディスカッションに呼んで戴いたと思っています。先程、IR事業者様のプレゼンテーションを聞き、非常に素晴らしい構想をお持ちだと感じました。私は万博の推進委員もやっていますが、万博とIRとUSJは三位一体になっています。特に万博というのは2050年の未来社会を創造するような夢・夢・夢で良いと思っています。また、半年という短期のイベントなのでその後の利用の問題もあるとは思いますが、永続的に国際的に人を集めるような位置付けで考えておかないといけないということで、地に足のついた構想が必要であると思っています。万博のテーマの一つに健康寿命を伸ばすということがありますが、他にもITやロボットテクノロジー、AI等デジタルの最先端のものが入ってきます。それは既にあるスマホ依存症やギャンブル依存症と繋がるものがあります。ギャンブル依存症はそういうデジタル社会の依存、あるいはそれだけではない健康を害することにも繋がっていくことへの警告であることがカジノの話題が出たことによって全国に認知をさせたことは非常に大きなことだと思います。
美原氏:
ウェルビーイングという共通テーマが万博とIRにはあります。IR事業者の皆さんに伺いたいのは、大阪の良いところばかりではなく欠けていることは何か、ここを強くしたらもっと良い等、大阪をどのように見ているのか、我々大阪の人に要求することについて聞いてみたいと思います。
タイト氏:
我々は大阪が提供してくれる大きなベネフィットや強みをものすごく熟知しています。チャレンジとしてはこの開発には大規模な投資が必要だということです。特にインフラに関して海外の事例ではある程度のインフラがあり資金の調達も既に整っているということが多いので、ゼロからやっていかないといけないという点は大変だと思いますが、そのインフラ投資に複数の組織が色々な形で参加するということはピースフルであると思います。
バワーズ氏:
タイト氏の話に賛同します。これは大阪だけの問題ではないのですが、IRを議論する時に政府関係者はショートタームで考える傾向がやや目立つと感じることがありますが、やはりIRの計画は長期的にみるということが最も利益をもたらすと考えております。インフラにおいても同じことが言えると思います。
美原氏:
確かに長期的な視座で政策を考え、どのようにあるべきか、ということこそが政策の根本にある必要があると思います。
白男川氏:
広大な土地に大きなインフラが必要ということは認識していますが、ローレンスがいつも申していることを踏まえるとそこはあまり大きな問題ではないと思います。次元の違う話かもしれませんが、私は今東京に住んでおり世界に誇れる日本のIRを作る時にどのようにして大阪のカルチャーを発信していくか、例えば、たこ焼きやお好み焼きは海外の方に非常に人気のある食べ物ですが、大阪の「おもろい」をどうやって発信していくか、日本から発信する時に大阪・関西の面白さをどうやって発信していくか、ここを皆様と一緒に色々と議論していきたいと思っています。
美原氏:
日本人は一般的にプレゼンテーションや自身の売り込みがあんまり得意ではないので、大阪の強力な自己主張、活力と意思を持って考えるべきでしょう。
タナシェヴィッチ氏:
先程のコメントと同意するところがあります。夢洲が抱えるチャレンジはコンテナポートとソーラーパネルの2つの存在だと思います。敷地面積が広大なので、もし万博が大阪に決定した場合、IR開発とどう関わってくるかという点もあります。また政府はIRの価値を効率的に作っていくためにはインフラの整備と共に、その中心に我々が存在するということが大事だと思います。日本政府も日本国民の方々もIRについて観光業を駆動するものだという見方をして戴きたいです。インフラ投資の為の資金を注入するものでは無いと思って戴きたいです。我々の資金を最善に使う方法は、我々が世界で最も素晴らしいIRを創り、設計し、プログラムをして、しっかりやっていくということです。観光業が大きくなるということ=繁栄がもたらされるということが非常に大事だと思います。観光業が有益になると税収が入ります。それを利用してインフラ整備を行えば市民の方々にも喜んで戴けると思います。
美原氏:
サンズさんはシンガポールにおいて、巨額のお金を鉄道部分等のインフラ整備に投資していますよね。その背景とお考えを伺いたいです。
タナシェヴィッチ氏:
シンガポール政府が地下鉄を建設した際、我々は駅を作りました。それは我々の施設に直結した駅は実用的だと考えたからです。その資金に関しては工事完了後、政府から補償されました。
美原氏:
全て還ってくるということですね。夢洲において万博とIRという点はどのように考えておられますか。万博とIRについて皆さんのご意見を伺いたいと思います。
タイト氏:
万博では何百万人の人が訪問をするわけですから、その隣にIRを作ることが出来るのは、ツーリストであろうとホスタピリティであろうとクリティカルパスが作られ、善意という一言でしかないと思います。万博で経験出来ることと、IRのエンターテイメントで経験できるということは差別化が出来ると思います。万博は短期間で終わるので、万博が終わってからに課題があります。万博の施設を再利用しないといけないと思いますので、IRとどのようにコーディネートをしていくかを考えなければいけないと思います。施設を適切に再利用出来るかということを上手く考えていけば、IRのエンタ-テイメントの部分も強化できる機会になると思います。また、建設のタイミング、これは非常にセンシティブな問題だと思います。IRを創る多くの資金や時間を要すると思います。万博も着々とその準備が整う必要があります。万博とIRの建設が干渉しないようにという点も考えていかなければいけないと思います。
荒川氏:
万博は2025年と決まっていて、その時点でIRがあるというのが大事だと思います。コンセプトの内容は、万博とIRは補完し合う関係であると思いますし、万博は夢を追求し、IRは夢もありつつ地に足のついた構想が必要です。万博の時に多くの方が来られるので、エンターテイメントだけではなく国際会議等のイベントが出来るMICEを含め、是非IRは万博よりも先に完成すべきだと思います。そうすることで、多くの人をサスティナブルに継続的に世界から呼んで来ることが出来る都市になってくると思います。大阪・関西・日本のメリットの為に、タイミングを逃すと結局万博の単発で終わってしまうということにもなりかねないのでそこが非常に重要なところだと思います。それから機能を活かすというところでは、「癒し」と「回復」、「ヒーリング」と「リカバリー」という機能をIRに持たせるということがこれからの第4次産業革命における負の部分、新しい疾患や精神的な部分も含めたものを癒す機能をIRの中に継続的に持たなければならないと思います。
バワーズ氏:
いくつかシナリオがあると思います。法案が通りその中身を見てみないとどういう時間軸になるのかわからないというところがあると思います。一般論として、万博とIRというのはお互いに相乗効果があるという感じがします。コンテンツが万博とは違いますが、万博があることでIRに何を入れようかということがオペレーターとしては考える材料になるわけです。それ自体がイノベーションを呼び込みことになると考えています。ただ、考えなければいけないのは万博で使われた施設をどう再利用していくかということ、またこのような大きなイベントをどう組み込んでどのようなマスタープランを描くかということを考えていかなければいけないと思います。
白男川氏:
2つのものを1つの土地につくるということで非常に大きなシナジーがあると思います。IRというものは進化するものです。それを考えると最初は2つのものづくりですけれども、万博というのは当然テーマが決まっていて半年間色々な国々の知恵が集結し、新しい体験等を提供します、そこで培ったものを今度は大阪IRのコトづくりに役立てていく、考えていくことが重要だと思います。
タナシェヴィッチ氏:今述べられた意見に同じ意見です。しかしながら、日本としての大きな課題も一緒に考えていくべきだと思います。2020年に東京オリンピックが開催されます。そうすると東京・日本に大きな注目が集まると思います。しかしそこで成功したとしても、その後5年間ギャップがあり、世界の注目という弾みを逃してしまうようなことがあれば非常に残念な結果に繋がると思います。私の希望としては、その5年というギャップをIRが埋めていくということ、2020年の東京オリンピックと2025年の万博、そこの間の弾みをずっと維持できるように、また観光源になれるようにと思っています。
美原氏:
非常に貴重な意見を有り難うございました。最後にメッセージをお願いします。
タイト氏:
政府に対しては、速やかに対応して戴きたいと思います。そこには大きな機会があるわけですから。そしてゲーミングの部分に制約をかけるというような権限に関しましては出来るだけ速やかに適切に対応して戴けるように議員の先生にもお願いしたいと思います。
荒川氏:
ギャンブル依存症について、国がこれまでそうしたことに策を打ってこなかったという裏返しになると思います。IRが実現すると対策がうたれて、反対に依存症は減少すると考えています。
バワーズ氏:
タイト氏が仰った内容の繰り返しになりますが、速やかに進めて戴きたいということ、大阪府・大阪市がこれまでされてきたことに感謝しておりますが、引き続き尽力をお願いしたいということ、そして、私達オペレーターに対しても必要なことや知りたいことは聞いて戴きたいと思います。日本も他の国も同じような状況であり、ギャンブル依存症に関して抱かれている懸念の多くは、これまで蓄積したノウハウと実践を活用して対応可能なものであると思います。医師やオペレーターの力を合わせIRが出来れば懸念されている事項の大半は解決できるものと考えております。
白男川氏:
昨年から大阪オフィスの準備に着手し、桜が咲く頃までには皆様にもご覧戴けるようと考え、4月9日(月)開設が決定しましたので、皆様を御招待させていただきます。それから皆様、視察はシンガポールやラスベガスへ行かれると思いますが、マカオ直行便で、特に関空からでしたら4時間半で行けますので、是非皆様マカオへもお越し下さい。そこで様々な意見交換ですとか大阪の皆様と情報交換をしていきたいと思います。
タナシェヴィッチ氏:大阪府・大阪市の方々には本当に御礼申し上げたいと思います。熱心に取り組んで下さり、この産業や意味に関して十分に理解して下さっています。また、知事や市長からもIRが観光業を促進していく為に重要であるという強いメッセージを出して戴いております。これを続けてやって戴きたいと思います。また、我々オペレーターとの対話も引き続きやって戴きたいと思います。何か決定をする為に情報がいるということであれば是非仰って戴きたいですし、また我々も色々な市場での経験がございますのでシェアをしていきたいと思います。全てに対して対応可能というわけではございませんが、出来る限りやっていきたいと思います。何が上手くいって何が上手くいかないのか、課題は何か、課題に対してどのように適正に対応していけば良いのかというところを一緒に考えさせて戴ければと思います。
美原氏:
本日は色々なことを学びました。大阪府・大阪市に対する期待と共に今後大阪がどのようになっていくのかということについて貴重なお話を戴きました。政府の動きを見ながら大阪の皆様と一緒に考えていきたいと思います。一つのテーマである「産学公」の連携が成功して初めてIRや万博が成功するのではないかと思います。本日は皆様有り難うございました。

閉会 閉会の辞:井垣貴子氏 株式会社健康都市デザイン研究所 代表取締役社長 美原先生、大変素晴らしいパネルディスカッションをどうも有り難うございました。海外から来て下さったIR事業者の皆様、大阪・日本の為に素晴らしい知恵を出して戴き、有難うございました。
夢洲はオープンクロスイノベーション、まちづくり・産業づくりをグローバルに、地域の知恵と世界の知恵をミックスして創っていく実験場です。本日はIR事業者様や講師の皆様にお話を伺いましたが、まちを創るのは私達、産業を創るのは私達です。先程、西村内閣官房副長官様が一歩一歩、更にイノベーションとお話して下さいました。IRと万博のハッピーチャンスを活かすかどうかは私達がまちづくり・産業づくりを考えて、我が事として未来を創ることにかかっています。是非次回は、我々がIR事業者様に提案するということをしていきましょう。
実は、本日のパネルディスカッションに台本はございませんでした。台本があるとイノベーションは起きないという美原先生のお話の通り、打ち合わせをしないパネルディスカッションであった故に、エキサイティングでクリエイティブな議論になったと感じております。美原先生に改めて御礼申し上げます。また、IR事業者様がお互いライバル同士であるにも関わらず、大阪・関西の為に知恵を出して戴きました。本日は公共、アカデミア、産業界・経済界の名だたる企業がお越しです。産学公がオープンクロスイノベーションで夢洲の未来・大阪の未来・日本の未来、世界から憧れる素晴らしい日本を創る為に、世界の知恵と日本の知恵を出してきましょう。夢洲を実証フィールドにして日本の未来を考える、軍事産業以外の全ての産業=ウェルビーイング産業です。大阪の力を世界に見せつけようではありませんか。是非、皆様の夢洲を創る為、新産業創造研究会にご興味がある方はアンケートご記入戴ければ幸いです。
最後に、本シンポジウムは多くのご後援・ご協賛を賜り、心から御礼申し上げますと共に、これからも是非ご支援を宜しくお願い申し上げます。本日は誠に有難うございました。

シンポジウム閉会後には、関電会館・エルガーデンにて、講師やIR事業者・関係者も交えて多くの参加者による活発な交流と情報・意見交換が行われました。