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未来医療健康都市関西・第5回 Future Forum
-「生涯活躍のまち協議会」設立フォーラム- 開催報告

2016年7月29日

未来医療健康都市関西・第5回 Future Forum -「生涯活躍のまち協議会」設立フォーラム-を2016年4月21日(木)、大阪大学中之島センター 佐治敬三メモリアルホールにおいて、自治体様、企業様等から約120名の方々にご参加戴き盛大に開催させて戴きました。心より御礼申し上げます。

開会の御挨拶
株式会社健康都市デザイン研究所 代表取締役社長 井垣貴子
未来医療健康都市関西・第5回 Future Forum -「生涯活躍のまち協議会」設立フォーラムを開催致します。このような雨降りのなか、多くの方々に御参加戴き厚く御礼申し上げます。
少子高齢化が進む日本において、元気な高齢者をはじめ地域に住むあらゆる人々が多世代と交流しながら健康でアクティブなライフスタイルを創造し、新たな視点でまちづくりを進める「生涯活躍のまち」構想が、地方創生の視点から注目を集めています。折しも、4月20日に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に定められた事業を行う地方公共団体に対する交付金制度、地方公共団体に寄付を行う法人の課税に対する特例措置、生涯活躍のまち形成事業計画作成及びこれに基づく介護保険の事業者の指定等の手続きの特例等の措置について定めた地域再生法の一部を改正する法律が公布されました。本当にタイムリーな今日の日だと思います。私ども生涯活躍のまち協議会は、生涯活躍のまちを推進する又は推進しようとする地方自治体、大学、企業、金融機関、医療・福祉法人、NPO等多様な主体との情報交換、連携等を促進し、魅力溢れる事業化を支援し、高齢化が進む世界の国々のリーディングモデルになる生涯活躍のまちが日本各地に実現することを目的に設立致しました。当協議会は生涯活躍のまちに関連する情報、知見、経験交流のハブ機能を担い、超高齢社会に突入した日本の地域が国内外のベストプラクティスから学ぶと共に、各地域固有の社会資本や文化資本を活かし産業の創生と創造的な取組みが進むよう支援して参ります。当協議会は、単に生涯活躍のまちをつくる事だけを目的としている訳ではなく、この生涯活躍のまちの実現に向けた多様な取組みきっかけとなり、地域の魅力、地域の力の掘り起しや再発見に繋がり、他の政策や取組みとも連動させながら世界の中で日本の地域が発展していくことを目指します。当協議会の主な活動内容は、生涯活躍のまちを推進しようとする地方自治体、大学、企業、融機関、医療・福祉法人等多様な会員間の人的ネットワークを構築し、情報や知見の学び合い、ビジネスマッチングを促進するために会員ネットワーク会議や会員の為の産学マッチング交流会、テーマ別研究会等を開催して参ります。それと同時に、セミナー、研修、海外視察等を含めた国内研修等、人材育成、国内外の先進事業等を学ぶ研究会、あるいは大学、企業等の依頼によるセミナー研修の受託、講師の紹介、会員への国や自治体の施策の情報発信等を行い、会員の活動を支え推進致します。
当協議会の設立を記念し、当協議会のスペシャルアドバイザーにもご就任戴いております当該分野の第一人者の松田智生先生による基調講演をはじめ、大学、企業、金融機関等のトップ講師陣にご登壇戴くフォーラムを、どうぞお楽しみください。

第1部 講演・プレゼンテーション
以下にご講演要旨を紹介させて戴きます。

基調講演:株式会社三菱総合研究所 主席研究員 松田 智生 氏
「ピンチをチャンスに変える大学連携型等生涯活躍のまち」
日本の高齢化率は26%を迎えており、国の税収55兆円に対して医療は年間40兆円、介護費は10兆円と国の財政を圧迫している。巷では「介護難民」、「地方消滅」など元気の出ない四字熟語が氾濫している。このピンチをチャンスに変えるのが、生涯活躍のまちづくり(日本版CCRC)である。
ただし、生涯活躍のまちづくり(日本版CCRC)を巡り、多くの誤解や先入観がある。それは主語だと思う。「首都圏の介護が」と聞けば、地方は面白くない。「主語がわが街が輝くために」、「私が輝くセカンドライフ」とすれば受け取り方も違う。これは介護者の移住ではなくアクティブシニアの移住である。地域の抱える最大の問題は何か?それは雇用である。雇用がないから若者が流出し、Uターン出来ない。生涯活躍のまちは、逆転の発想だ。シニアをコストでなく担い手とみなし、介護で儲けるのではなく、介護にさせないことで儲ける。介護にさせないために、予防医療、食事、運動、健康ビッグデータの解析など付加価値の高い新産業が創出され、雇用が生まれ、若年層の県外流出の抑制や働き世代の流入を促すと共に税収の向上が見込める。また、予防医療に取組むことで健康寿命を延伸させ、介護で儲けるのではなく介護にさせないことで儲けるスキームへと変わり、財政を圧迫する医療費抑制へと繋がる。これは、移住者だけを優遇するのではなく、従前の住民にもメリットがある仕組みとすることが大切である。
生涯活躍のまちづくりは、ハード(施設・設備)だけではなく、ソフト(運営・プログラム・ライフスタイル)と制度設計(仕組み・金融)の組合せ型のビジネスである。ハコモノといったハードをつくるのではなく、多世代交流を促し承認欲求や貢献欲求をかきたて消費に繋がるようなソフト(仕掛け)が大切だ。そして大学連携型CCRCは、高齢者、子育て世代、大学生などの多世代視点となり、例えば高齢者が若年層と交流してキャリア教育に関わることで貢献欲求、承認欲求が満たされ自らの生きがいへと繋がる。事例としては、趣味の釣りのために高知の中心市街地に移住し、移住先で自らの発信力を活かし特任教授として地域社会の担い手となった人、若いころに赴任した長崎に恩返しの為に単身で移住し、地元の大学に再就職し、特技を活かし野球のコーチをするなど充実した日々を送っている人もいる。どちらも年賀状に書きたくなるようなストーリーがある。これまでの高齢者住宅と生涯活躍のまちでは、入居時の健康状態や動機が異なる。これまでは不安や健康状態の悪化から入居していたが、これからは元気なうちに楽しみたいから入居してくる。何よりも大きな違いは、支えられる人だったのが、これからは住民主導での地域社会の担い手となることだ。
「生涯活躍のまち」を形成するには、国(基本方針)・自治体(基本計画)・事業主体(事業計画)が連携し三位一体で推進してくことが重要である。地域再生法が改正され、今後「生涯活躍のまち形成事業」が進められていく。国は地方創生交付金による助成を行い、今年度も地方交付金等資金面の助成、企業版ふるさと納税による課税特例装置等のサポートが行われるが、実現させ活性化するためには今の政策から一層踏み込むべきだ。三菱総研では3分野25政策を独自に提言し、例えば住んでいる人が健康であれば医療費や健康保険料を安くする、居住者の自立度や介護度が改善されたら事業者に奨励金や補助金を与える、CCRCでプチ就労をしたらその時間が将来自分に介護必要になった時に使用出来る健康マイレージ等を提案している。今後、推進していく上で必要なのはCCRCの粗製乱造を規制するISOのようなハード、ソフト、ファイナンスの面での格付けを認証するような認証規格だ。
全国で約260の自治体が推進意向を示すなかで、今後アクティブシニアの誘致合戦がはじまる。自治体や事業主体は、数あるライバルの中でわが町、わがプロジェクトが選ばれる理由の先鋭化とターゲット戦略を行い、効果の多面的な推計を行う事が重要である。厚労省の試算によれば、一人移住すると年間200万円の消費が生まれ100人では2億円の経済効果がある。さらに雇用、建設、消費、移動等の経済波及効果がある。また、75~79歳の要介護者の割合は14%なので、シニアが全員寝たきりになるわけではない。介護にさせないためにデータやエビデンスに基づく仕掛けがビジネスチャンスに繋がると考えられる。自分が住みたくなるようなコミュニティを考えつくっていって欲しい。
「生涯活躍のまち」をきっかけに自分自身の生き方、あるいは街のあり方、これからのビジネスを考えるターニングポイントとなり、一歩踏み出す勇気となる事を期待する。一自治体、一団体、一企業だけではなかなか進まないが、今日ここに集まった志のあるたくさんの主体が、一歩踏み出せば、それは大阪にとって大きな一歩となる。それは5年後10年後に振り返って、今日がターニングポイントとなったという日となればと願っている。

講演1:同志社大学 教授 関根 千佳 氏
「学び続け、生涯活躍できる高齢社会へ 海外CCRCの紹介を中心に」
日本と海外の「高齢者施設」の一般的なイメージは、かなり異なっている。海外では引退をしたら「行きたい!」ところだが、日本では「出来れば行きたくないところ・・」ではないだろうか?海外のCCRCは、初期は病院やゴルフ場により運営されていたが、現在ではホスピタリティー溢れるホテルや学びの場である大学の運営する施設が人気である。日本では少し誤解されているが、決してシニアだけ、それも裕福な層だけのものではない。図書館やプール、レストランなどは、入居者からその家族、地域住民にも開放され、地域の核、市民の拠点となっている。施設運営の主体者もシニア自身であり、自分達でプログラムを企画し、運営し、課題を議論する民主的な「コミュニティ」なのだ。また、地域社会や若年層へ、どれだけ貢献できるのかも、常に模索している。
海外のCCRCは、バー、図書館、美容院が設けられており、居室には自分の家具などを持ち込むこともできる。施設内に設けられたリハビリや健康増進設備を、入居者は無料若しくは格安で利用できる。医療や介護も同じ敷地内で受けられ、出来るだけ早く自室へ戻ることが推奨される。高齢者はリハビリやスポーツに励むことで介護度が下がり、地域にはリハビリを支援する理学療法士や作業療法士などの雇用が創出される。
CCRCの機能を地域に展開した事例として、ヴィレッジモデルというものもある。ボストンの中心地であるBeacon Hillsで始まったものだが、住民たちが各地で小さなVillageという互助組織を作り、元気なシニアが年上のシニアを地域で支えるものだ。住民はこの街で暮らしていく上で、何が足りないのか、何を変えていけば良いのか、50代から常に市民として考える姿勢を持つのである。
生涯学習への参加への支援もある。高等教育機関に25歳以上が入学する割合は、OECD各国では平均21%であるのに対し、日本では1.8%と非常に低く、ダイバーシティは薄い。欧米の大学では、現役のビジネスマン、ワーキングマザー、障害学生を含め、多様な年齢層の学生が学んでいる。例えば米国では、多くの大学にLLI(Lifelong Learning Institute)が併設されており、高齢者は安くLLI独自の講座を受講できる他、一般の学生向けの講座も教授の許可があれば受講可能である。最新のITリテラシーや、起業の方法なども、誰でも学べるため、50代を超えて大学で学びたいという人は多い。シニアは大学へ通うことで、新しい知識や友人を得ることができ、地域や社会の課題を解決するためコミュニティビジネスやソーシャルビジネスを起業することもできる。そこで若年層の雇用も可能となる。若い人と交流することが、自分自身の生きがいへと繋がる。また大学連携型のCCRCでは、向学心の高いシニアを惹きつけ、不動産を購入してくれた上に学費も払ってくれる。また豊富な経験や知識を活かし、若い学生へのメンターや特別講義を安価で引き受けてくれる、更には遺産を大学に寄贈してくれる(!)など、たくさんのメリットがある。
京都でも、向学心や若年層への貢献欲求のあるシニアが学べる場は増えている。同志社大学には町家を利用した江湖館(政策学部町家キャンパス)があり、20代から70代までに対し、ソーシャルイノベーショングループの大学院講義を行っている。また、長浜バイオ大が運営する京都高齢者大学(烏丸キャンパス)や、京都SKYシニア大学なども活発に活動している。
京都を始めとする関西は、世界遺産が多数存在する文化・歴史の街、学問や医療の街であり、美味しい食べ物に溢れたコンパクトシティが多い。CCRCが成立するポテンシャルは非常に高い。大学や医療機関、文化団体と連携する多様なCCRCを組み込んだ街づくりが可能だ。シニアの学びたいという向学心、若者や社会に貢献したいという意欲が、地域の活性化に繋がり、CCRCを核として、関西がますます発展することを期待している。

講演2:高知大学 副学長 受田 浩之 氏
「地方から見たCCRCの意義~「高知版生涯活躍のまち」の実現に向けて~」
地方では人口減少・少子高齢化が進行しており2040年には896の自治体が消滅する可能性があり、高知県の市町村も半数以上消滅すると予測されている。高齢化を全国よりも10~15年問題を先取りした高知県は課題先進県である。その課題を解決し、日本を、そして世界を救えるよう課題解決先進県となるべく、経済の活性化、教育の充実、日本一の健康長寿県づくり、中山間対策の充実・強化、少子化対策の抜本強化と女性の活躍の場の拡大等、まちづくり全体において対策の施策が張り巡らされている。地域の問題をドベネックの樽(植物の成長を桶の中に張られる水に見立て、桶を作っている板を養分・要因と見立てる。これならば、たとえ一枚の板のみがどれだけ長くとも、一番短い部分から水は溢れ出し、結局水嵩は一番短い板の高さまでとなる。)で例えて考えると、①桶の中に入っている物を漏らさないようにする、②より魅力的な桶を設え惹きつける、③それらをしっかりと受け止める、これらをいかに地域が政策、施策で管理していくかが大切であると分かる。地方を開発していくには、行政と大学が同じ志を持ち、力を一体化させ、一蓮托生で推進していくのかが重要である。
高知大学では土佐フードビジネスクリエーター人材創出事業として、高知県の食料産業の中核を担う専門人材の育成及び食料産業の拡充に資する人材育成を行っている。年間約3万円程度の安価な学費で年間160時間、実技を含めて夜学で自ら開発したいことをマンツーマンの指導のもと学んでいる。9年間で約350人の人材を輩出し、育成された人材による間接的な効果を含む売上げは10億円に達し産業・雇用の創出へと繋がっている。また、高知大学インサイド・コミュニティ・システムでは、高知県庁と高知大学が一枚岩となり対話に基づく地域課題解決のサイクルとして、県内4カ所に大学のサテライトを設け教員を常駐させ、多様化する地域の課題を掘り起し解決する支援と、県中央部以外の地域への生涯学習の場の提供を行い、各地域で求められている多様な産業人材に応じてオーダーメードでプログラムをつくり各地域における産業振興推進に貢献している。さらには、平成27年4月より地域協働学部を開講し、少子高齢化、産業の脆弱化、中山間地域の疲弊に起因する高知県の地域課題を解決する担い手を県内各地でフィールドワークを実施し育成している。限界集落をはじめとする地域コミュニティの再生、耕作放棄地の利活用、商店街の活性化、地域特産品の販売など学生自らが企画を練り上げ、地域住民と協働しながら、組織・人を動かす力を身につける。まさにキャンパスは地域、テキストは人であり、エリア全体が多世代交流の場となる。また、高知大学の第3期中期計画では、年度計画にCCRCプログラムの実施を明記すると共に、「地産地消地検」という概念のもと、地域の誇りである健康維持・増進に役立つ食材を活用し、地域の住民自らが積極的に検証する取り組みと融合させ「健康まちづくり」を行っている。地域で採れたものを地域で摂取し医学的に検証することで、例えば「機能性表示食品」とするなど付加価値を与え他との差別化へと展開する。そして、高知の魅力が都会のアクティブシニアにどれだけ魅力があるのか試すべく、定年退職者が「第二の人生」に向けた準備をするためのシニア合宿プランを三年前より企画・運営し、結論として地方は宝の山であり魅力があり吸引力を持っていることが分かった。
高知型CCRCでは、郊外と中心市街地タイプの2通りをつくり、その異なる拠点の間を自由に行き来の可能なライフスタイルを提案したい。そこに大学のサテライトを設ければ、それぞれの地域で暮らす地域住民にも学びの場を提供ができ、自己実現の可能性に満ち満ちた生涯学習教育をテーラーメードで提供出来る。このようなコンセプトに基づいて、高知版大学連携型CCRCの構築を目指していく。

講演3:積水ハウス株式会社 課長 彌重 功 氏
「豊かなライフスタイルで暮らす住まいづくりと生涯活躍のまち」
リタイア後の20年間の可処分時間である10万時間をどう過ごすのか、「どこで(住まい)、だれと(パートナー)、どのように(生き方)」という視点において、50代以上の大人世代夫婦の距離感調査を行った。調査・研究の結果から、夫婦が心地よい距離で過ごせる居どころ、趣味・好きなことを楽しむ暮らし、好きなモノ(本物素材等)へのこだわり、地域・コミュニティとの繋がり、健康への配慮、将来の安全・安心等が住まいづくりのキーワードであると分かった。
積水ハウスの大人世代への住まい提案として、1:「ふたりの暮らし」、2:「好きなコト 好きなモノ」、3:「ずっと住む」の3つをテーマとしている。
テーマ1:ふたりの暮らし。ふたりのほどよい距離間での暮らしを、「いっしょ」、「ゆるやか」、「それぞれ」の3つ距離感のタイプに分けて暮らしのシーンを演出し提案。事例としては、二人で一緒に作業が出来るセパレートキッチン:「いっしょ」、1つの空間で、お互いが好きな場所を居どころとして緩やかに繋がるLDK空間:「ゆるやか」、こだわりのホームシアターがある空間:「それぞれ」。
テーマ2:好きなコト 好きなモノ。今まで、したくても出来なかった“好きなコト”、ずっと憧れていた“好きなモノ”。そのための空間を提案し、本物素材にもこだわる、豊かさ、生きがいに溢れた空間づくりの提案。事例としては、好きなコト<趣味のスペース>:趣味の車やバイクのガレージに居どころをプラスした空間や趣味の旅の思い出を「しまいこまず、飾る」アーカイブ収納、好きなコト<招く(地域や人とつながる)>:玄関脇に設けられた「こしゃべりコーナー」、好きなモノ<本物素材>:和の美しさを彩る自然素材の珪藻土や手隙の和紙、本物の木や石の質感あるフローリングや壁、手技のぬくもりある建具や手すりなどの設え。
テーマ3:ずっと住む。住み続けるためには、「住まいの技術+サポート体制」が重要であり、今も将来も、健康・安全・安心にずっと住み続けられる暮らしを提案。事例としては、将来の身体の変化に備えた操作がスムーズな引戸、段差のないフルフラットサッシ、空間になじむ手摺や家具と一体化した腰掛等アイテムの提案。3つのテーマである心地よさ、安心・安全、使いやすさを充たしたスマートユニバーサルデザインへと繋がっている。
大人世代が豊かなライフスタイルを持つための秘訣は、「趣味、学び等の好奇心を持つこと」、「コミュニケーション、幸せ感等の人との繋がりを大切にすること」、この2つが重要だ。これを実現するには、大学連携型CCRCは非常に重要な仕組みのひとつであると考えられる。
積水ハウスの集合住宅・まちづくりの実例展開として、「マストライフ古河庭園」は子育て支援施設併設の多世代交流型賃貸住宅があり、野菜教室を催す等の世代間交流促進のソフトを導入し多世代交流に取り組んでいる。また、進行中の「江古田プロジェクト」では、こどもたちの成長を通して未来へと続く街をテーマに、子育て世帯向け賃貸マンション、多世代向け分譲マンション、サービス付高齢者向け住宅、有料老人ホーム、保育所やまちのコミュニティスペースを整備し、こどもを軸にした多世代により育まれる持続可能なまちづくりを仕掛けている。
大人世代が若者世代の見本となり、自分たちが住みたい「生涯活躍のまち」となるよう、豊かに住み続けられる“住まい”と生涯活躍のまちの“しくみ”を連携・連動させ、関西で成功事例が出来ることを期待している。

講演4:ジャパン・シニアリビングパートナーズ株式会社 代表取締役社長 藤村 隆 氏
「生涯活躍のまち~事業成功例のポイントと資金調達」
ヘルスケアリートの1社であるジャパン・シニアリビング投資法人は、昨年7月に上場し、全国の14施設に300億円ほど投資している。ヘルスケアリートは施設の「家主」の立場であり、施設のオペレーターにとっては、資金調達の1つの仕組みといえる。保有している14施設のうちCCRC型の施設は4施設ある。日本ではCCRC型の施設は少なく、大半は介護をメインにした施設であるのが現状だ。保有している4施設を紹介する。
アーバンリゾート型CCRCのアクティ琵琶(富裕層向け)は、京都からJR湖西線で30分ほどに位置しリゾート的でありながら京都市内からも近い場所にある。設立して約30年の施設で、自立向けに300室、介護向けに84室と日本でも最大規模の大型の有料老人ホームである。介護施設部分は設立から20年後に介護者が増えた為に増設された。団地再生・地域交流型CCRCのゆいま~る聖ヶ丘(アッパーミドル向け)は、多摩ニュータウンにあり運営事業者が開発段階から入居者と対話を重ねながらコンセプトとコミュニティを作り上げていった団地再生のモデルケースである。1階に要介護者、2階以上に自立向け高齢者の居室が全部で71室配置されている団地の中のコンパクトなCCRCである。大都市近郊型CCRCのジョイステージ八王子(アッパーミドル向け)は、八王子市近郊の住宅街に約20年前に開設以来、自立者から看取りまで一貫したサービス提供が行われている老人ホームである。地方都市の街なか居住型CCRCの天(富裕層向け)は、札幌の街なかにある高層の施設であり、地元の富裕層向けのラグジュアリー感ある街なかのCCRCの事例である。
施設型日本版CCRCを成功させるための5つの条件は、①移住したくなる魅力があること:環境、施設、コミュニティの魅力、②自立者を中心とした終の棲家であること:居室の割合は自立者向け8割介護者向け2割程度が良好な循環ペースをもたらす。自立者を中心とし姥捨て山ではなく、経済力がありアクティブでプラスの効果をもたらすアクティブシニアがメインターゲットであり、介護と医療がセットされ看取りまできちんと行うことが必要不可欠だ。③スケールメリットがあること:移住促進の観点で考えると300~500人規模ではないと成功したとは言えない。魅力あるハード面、コミュニティ面の創造に採算的にも一定規模が必要である。④アッパーミドル層を対象とすること:今までは富裕層をターゲットとしていたがマーケットが非常に小さい。アッパーミドル層をターゲットすることでマーケットが広がり、経済的にも余裕がある層のため移住先でも消費貢献し地域活性化へと繋がる。一定層の人が集まることで、コミュニティの多様性と同質性の共存が生じ居心地の良さにも繋がる。⑤事業継続性のある事業者が運営すること:長期安定した事業運営には安定した財務基盤と信用力が大切である。
開発段階では開発事業者が事業を立ち上げ、国・地方自治体の補助金と銀行からの開発融資によって資金の調達を行い、土地を購入し建設し、利益を上乗せして一括売却され、これを購入するのがヘルスケアリートである。ヘルスケアリートは調達資金の半分を投資家から集め、残り半分は銀行から融資を受け施設を買い取り、施設を運営事業者に一括賃貸する。運営事業者は入居者を募集し入居契約を締結し、入居費用を得て賃料を支払う。受領した賃料で固定資産税や修繕費を支払い、残りを銀行や投資家へ配当するという仕組みである。
大切なのは施設の魅力を高め、入居者の生活を豊かにする為に、大学、リゾート施設、テーマパーク、公共施設、地域コミュニティ、役所の移住支援といった地元関係者との連携が不可欠だ。仕組み作りがきちんと出来ていれば、必ず資金は集まると考えられる。

第2部 パネルディスカッション

◆講演者同士のQ&A 藤村氏:関根氏に質問です。自立型からのCCRCというのは、開設当初は70歳ぐらいの方々が入居し、その後10~20年は賑やかであると思うが、80歳ぐらいを過ぎてくると徐々にアクティブさが失われコミュニティの質や使われ方が変貌してくると思う。常に魅力のあるアクティブシニアの住まいであるためには、コミュニティの全体的な高齢化をどのようにアメリカでは解決しているのか、もしくはやむを得ないことなのか?
関根氏:88年ぐらいから毎年1~2ヶ所のCCRCを訪問や滞在したが、何十年たっても元気いっぱいなCCRCはたくさんある。設立段階では50歳ぐらいから入居し流動は激しい。必ずしもずっとそこで住んでいるのではなく、購買タイプとレンタルタイプが組み合わされている。例えば2ヶ月だけ住む人も多く、ずっと住む人と組み合わせることで常に人の循環がある。入居当初はパートナーと住んでいたが、死別して単身となるケースもあり、そこに新しく若い入居者が入ってくるので絶えず循環している。設立時に同じ年代の人を集めるのではなく、枠を決めて多様な年齢層を集める必要がある。全てを一度に売ってしまうと、衰退した多摩ニュータウンみたいになってしまうのではないかと思う。
藤村氏:住み替えのタイミングが、どのタイミングで起きるのかは、50歳でハッピーリタイアすることが夢であるアメリカと、60~65歳の定年まで勤め上げてから漸く定年後に老後の生活を考え出し住み替えの動機が出てくる日本では文化が異なるのだと思う。住み替えを考えるタイミングが日本の社会では同じような年齢となってしまい、入居者の年齢層をバラつかせるのは難しいと思う。要は、世間の価値観が変えることや、提供する施設の魅力づくりを行い、なるべく設立時からバラけた年齢層を入れていけば良いという事ですね。
関根氏:そうです。日本が定年頃にならないと老後の生活を考えないという姿勢を変えていきたいと思う。40歳で企業を退職し、その後は自分で何とか生きていくという人がもっと増えてくれば、ずっと変わってくると思う。知り合いの新日鉄の人は、日本各地を色々と回ったが最終的には最初に赴任した大分が一番好きだと東京本社への栄転を断り早めにハッピーリタイアし好きな地に移住した。このような人が、どんどん増えていけば世の中の価値観が変わってくると思う。結局は人を引き付ける土地の魅力であり、人を吸引出来るような魅力を磨いていけば良いと思う。

彌重氏:受田氏に質問です。我々は住むということで住宅の研究を行っています。先程の講演で地域の魅力づくりや街としての取組みを大学と連携し環境やCCRC的なものを整えようと努力されているが、肝心の住まい手の気持ちが、移住して幸せになるぞという住み替える覚悟やマインドを変えるのは、高知の魅力ということに繋がると思うが、そのあたりどうお考えか?
受田氏:どういう方々をターゲットにするかでマインド形成は異なってくる。例えば、松田氏の講演で高知に移住してきた黒笹氏の話があったが、もう少し補足すると黒笹氏は映画釣りバカ日誌のモデルとなった方で小学館の編集長を経て、どこに移住するかを現役の時代からずっと考えられ、趣味の釣りをするには高知が1番と考えて移住された。黒笹氏は、釣りバカビレッジという言葉を使われているが、非常に発信力があるので高知大学地域連携推進センターで特任教授に招き街づくりを一緒に取り組んでもらっている。この事例は特徴的な趣味の世界であり、彌重氏の講演にもあった車やバイクといった趣味と同じで、釣りといった趣味を通じてヴィレッジをつくっていくというのも一つの方法であると思う。一方、今日の講演でのシニア合宿プランでは、立教セカンドステージ大学のアクティブシニアの方々に高知に二年前から合宿してもらいどう感じるのか試行したとお話した。これは明らかにマインド形成という意味で自分達がどう貢献できるのかを感じていく瞬間だったように思う。マズローの欲求5段階説の自己実現欲求、コミュニティの幸せに自分自身がどう関われるかという承認欲求を訴求し、志を胸に人生の二毛作としてこの地で貢献していこうという思いが高知移住に繋がる。この思いに添ってヴィレッジ、さらには住居が今後、具体的にデザインされていくのではないかと思う。
松田氏:私自身が立教セカンドステージ大学の方と高知へ行ったときに思ったことは、リタイアしてからこのような機会があるのは良いことだが、本来であればリタイアする前に機会があれば良いのではないか。40~50代の現役で一度自分のキャリアを振り返り、住み替えや自分の本当にやりたいことなどについて考えるべきではないか。現状は50代になるとセカンドキャリア研修が行われ、あなたの給料はこれからこれだけ減ります、ポストはこれだけなくなります、老後はいくらかかりますといった研修終了後にげっそりとたそがれ研修だ。30、40、50歳の早いうちから助走期間として第二モラトリアムが必要である。
受田氏:藤村氏に質問です。本日の講演で資金調達の話が大変勉強となった。施設型に関して、今ヘルスケアリートが非常に効果的で資金調達において実現性が高いという事がわかった。その上で2点質問がある。1点は、こういうヘルスケアリート用いて投資や融資をしてくれる方は、投資家や銀行とのことだったが、このCCRCを通じて利害関係(メリット)を享受できる側として地方創生の推進役である行政に相当メリットがあるように思う。ところが行政側のメリットに対応し、ディベロッパーの建設補助金の交付はあったが、その後の運営には関わっていないように見受けられた。行政がこのような施設型のCCRCにコミットをしていく必要性をどのようにお考えか?ソーシャルインパクトボンドや行政コストを圧縮する様々なファンドがあるが、そのようなファンドの活用についてもお教え願いたい。二点目は、施設型の建設において土地代がネックとなって建設コストが高くなることが予測されるが、地方では土地代が安くなり、さらには借地権といった方法が施設型の時には考えられるが、建設する際の土地代はネックにならないのか?
藤村氏: 1つ目の質問のCCRCを立ち上げるのに行政がどのような関与が考えられるかだが、開発段階において建設補助金が交付されれば土地代を含めた開発コストが安く出来、ヘルスケアリートが購入する価格にも反映される。そうすれば、運営事業者へ賃貸料も安くすることが出来、入居者に負担してもらう入居費用も安く出来る。正にお金は全て繋がっている。
私は、ヘルスケアリートは広義のソーシャルインパクトボンドだと理解している。ヘルスケアリートでは取り組めないような地元密着型の案件については、地元の金融機関が融資し、地元の証券会社が地元の企業や富裕層からお金を集めて投資し、地元のオペレーターが施設の運営をするといった、地元の地元による地元のための「ご当地ヘルスケアインフラファンド」をソーシャルインパクトボンドの仕組みで立ち上げることが有益と考えている。
2つ目の質問の土地代の問題は、建設費は全国で大差ないが、土地代は地域によって随分異なってくる。土地代の違いが入居者の支払う家賃の違いとなって明確に現れ、土地の安い施設では月額費用20万円ぐらいで、土地の高い首都圏では月額費用30万円ぐらいになってしまう。その解決方法として一つは土地を普通借地権で行うと土地代が圧縮できる。もう一つは少子化による小学校の廃校、機能しなくなり老朽化した公民館、公営住宅団地の取り壊し等で出来た公有地を安く提供してもらえば土地代を大幅に削減できる。土地代が高いエリアであればあるほどこのような形態で行わないと一部の富裕層向けの価格設定以外成り立たなくなってしまう。
関根氏:受田氏に質問です。高知大学地域協働学部が、キャンパスは地域、テキストは人と講演されましたが、CCRCでも実は家の中、敷地内をキャンパスと呼ぶので、学ぶ場としてCCRCと非常に近いと感じた。CCRCをつくってくれるのであれば、ぜひ入りたいのですが、つくって頂けるのでしょうか?そこには、LLIみたいに年齢を超えて市民は学ぶことが出来るのか?その講義を全国何処にいても受講できる仕組みを作れば、高知の素晴らしいコンテンツになるのではないかと思う。
受田氏:今、高知でCCRCをつくるつもりで行っている。高知県や土佐町では加速化交付金を頂いており、これから新型交付金にも複数の自治体がチャレンジし、CCRCをつくるつもりだ。今後、多くの自治体がCCRCを各々の地域で企画し、設立されれば競争が熾烈になってくる。マーケティング戦略を練り、Uターン者をいかに我々がつくろうとする高知型のCCRCの中に呼び込めるかがキーとなる。「Uターン者を呼び込むには先ずはIターン者」という言葉があり、Iターン者が魅力を感じることによりUターン者が非常に気になり戻ろうという気持ちになるケースがあるので、しっかりと戦略を練り実現に向けて動いている。そして、生涯学習の件は、私もより価値を高めていきたいと考えている。オンライン学習のメニュー提案としてより洗練されれば、価値が向上するのではないかと思っている。今回紹介した産業人材の育成に関して、より発展させていくように働きかけをしており、県内在住の方を対象に高知県から毎年1250万円頂き寄付講座の形でも運営している。県民以外にも開かれた受講メニューにすることについては、将来オンライン学習の価値あるプログラムを設えたいと考えている。
関根氏:オンラインで座学の部分は受講し、フィールドワークは現地でとすると、必ず高知に2週間ぐらいは滞在する事とになるので、そういう形態で進めていくのも良いと思う。

◆これを関西で進めていくときに、関西の魅力とは何か? 松田氏:関根氏、関西に住んで分かった関西の魅力とは?
関根氏:一生に一度、世界遺産の上に住んでみたいと思っていた。やはり食べ物が美味しいこと、歴史と文化あるというのはシニアにとっては、いくらでも勉強する価値があり魅力がある。任期5年の間に、熊野古道を全部歩いてみよう、桜は全部見ておきたいとやりたいことは多くある。将来は横浜の自宅を賃貸し、京都と別府に小さなワンルームを借り、そこを行き来する暮らしも良いのではと思っている。
松田氏:回遊型居住ですね。生活コストはいかがですか?
関根氏:横浜で暮らしていたので、それほど変わらない。ただし、交通に関してはコンパクトシティな関西の方が楽だ。例えば関東ではコンサートを見て食事をしないで帰宅しないと終電に間に合わないが、タクシーに乗り数千円で帰宅できる等、文化的な価値を享受できるという点では、関西は本当に凄いと思う。
松田氏:彌重氏、関西人からみた関西の魅力とは?
彌重氏:関根氏の言われた文化的な魅力はもちろんある。今日の講演テーマで移住とあるが、関西の中で住替えても誰も移住とは言わないのではないか。何故かと考えると、今度大阪のここへ引っ越します、奈良のここへ引っ越しますと言った時に、関西圏感覚でいうと気候や文化等その街の魅力を皆が知っているので、移住というよりも新しい住みはじめだと認識され、「今度ここに住みます」と話すと「新しい住みはじめですね。いいですね」という返答となり「いいですね。」がつく。今日も多くの行政の方が来られているが、街の魅力というのは様々な人が知り評価されるポイントがあるので、そこを認識して魅力出しを行っていけば良いのではないかと思う。関西の中での住み替えが起こるのは面白いことになるのではと期待している。
松田氏:「住みはじめ」と言われるのですね。

◆自治体からみた魅力 受田氏:地域の中では何かが不足していて、その多くはやはり人であり、最も重要で宝である人材を我々は喉から手が出るほど求めいている。この人材の誘致にCCRCを積極的かつ有効に活用したいと思う。その対象の年齢層はどのぐらいかという議論があるが、松田氏と一緒に行った政府の議論の中でも様々あり、当初はサービス付高齢者住宅対象の60~65歳以上だったが、今はアクティブシニアである50代もメイン対象となっている。結局は、ある年代層に限定し狭く設定すると、様々な意味で持続可能性が心もとなくなっていく。不足している人材誘致を若い世代から考え、若い世代が定着していけば、いずれはアクティブシニアになりシニアになるのだから、老年期の人生設計をしっかり担保するという観点でCCRCを考えていきたい。例えば高知県は1丁目1番地の政策として産業振興計画を平成21年度から進め、そこに移住の重点化について数値目標を掲げて行っており、平成27年度の数値目標500組を達成している。これから4年間が第3期の振興計画であり平成31年度の数値目標が1000組である。これは今後、継続して増えていくので、相当の受け皿を充実させていかなければならないし、そこに占めるCCRCの寄与率は数%でなく数十%コンスタントに担わなければならない。そなると300人、500人の施設型のCCRCを単体で設けても仕方がなく、エリア全体で受けとめていかなくてはならず、移住政策の一環としてCCRCを相当重く受け止めいていかなければならない。
松田氏:私自身も多くの自治体と接点があるが、シニアを呼ぶと医療介護費が上がるだろうという根強い先入観がある。その良い事例が北海道の厚沢部町という小さな町でCCRCを行い、移住した人の介護度が全員改善されたという例がある。全員が寝たきりになるのではなく、きちんとしたケアを行えば改善される。また、金持ちの街となることで新住民と旧住民の軋轢を生むのではないかと懸念されるが、プラチナタウンの作者である楡周平先生がとある講演で、金持ちの街で結構、そこで新住民と旧住民の間で争いが起こるわけではないし、新住民は住民税や社会保険料を支払い、元気であれば消費し、雇用が生まれる。そこで得られた税収は地元市民の将来の介護や福祉に使われるので、あまり金持ち、金持ちと気にすることはないのではないかと話され納得した。

◆企業からみた生涯活躍のまちへの期待 彌重氏:企業的な面で考えると新しいことへのチャレンジは障害が多くてなかなか進まない。従前からあるように何らかの調査を行い過半数が賛同したから実行するのではない世界がここにはあると思うので、チャレンジを受け入れるような視点、支えるような仕組みをつくり、プロジェクト自体にリートでき、評価され融資がつくような形態が必要だと思う。そこが課題であり克服していきたいと思う。
松田氏:チャレンジを受け入れる姿勢が大切ですね。ファイナンスの面での課題、期待は藤村氏いかかがでしょうか?
藤村氏:課題は4つばかりあります。1つ目は、CCRCを行ってくれるような信用力、財務力、責任感があり、きちんとしたサービスを提供できる実績がある運営事業者がなかなか見つからない。2つ目は、立ち上げのスピードで、民間事業が運営する場合には、赤字垂れ流しという訳にはいかない。この手の施設の損益分岐点は、入居率で70%ぐらいであり、70%までは赤字、そこを超えて黒字になる。大まかなイメージは、約1年半の期間に入居率70%まで上げないと事業としては難しい。いかにスムーズに入居率を上げるかであるが、下手をすると同じような年齢の人ばかりを集めてしまう事に繋がり難しい。第1期、第2期、第3期と分けて行うとか、待機期間を短くする工夫が必要である。3つ目は、料金設定であり入居のスピードにも影響してくる。設置エリアや開発コストにも関与し、適切な料金設定のバランスが難しい。4つ目は、地方案件では地方移住を前提としおり、Uターン、Jターンの人はハードルが低いが、Iターンとなると高齢になってから今まで築いてきたコミュニティをリセットして住替えを決断するのは相当にハードルが高い。このハードルをいかに超えさせることが出来るのかが非常に大きなポイントだ。
松田氏:自治体の基本構想が動いているが、運営主体が見つからない。お手伝いであればしたい企業はいるが、開発して運営しリスクを享受する事業主体が出てこないのは、私も大きな問題だと思う。こんどは、大学連携モデルを大学から見た期待と課題について受田氏、関根氏お願いします。

◆大学からみた生涯活躍のまちへの期待 受田氏:大学としては設置形態や所在地により最終に抱くゴールイメージが異なってくると思う。個人的な考え方であるが、大学の敷地内に学生寮があるが、本学の学生の立場でアクティブシニアやシニアが住む。その方々は大学の提供する教育メニューや履修証明制度の一定のプログラムを履修する事ができ、産業を自ら立ち上げていくのだとアントレプレナーとしての志を持ち受講していく。時には、他の学生に対して今までの経験を基に教育する側にも回り、その対価はとして何らかのインセンティブ与える。何らかの役割を与える。更には大学内でシナジー効果が生まれるような立場を考えていきたい。やがて寮住まいのその方々は、地域協働学部の活動や大学から派遣しているサテライトの教員らと共に、地域で求められる役割を担いつつ、最適な場所に移住するという2段階での移住を行う。入れ代ることで地域に対して貢献の度合いがシステムとして見えてくるのではないかと思う。この会場にお越しの大学関係者の皆様は意識しておられるように、「2018年問題」という18歳人口が25年にかけて10万人減少する時期に入る。進学率50%が維持されても学生のなり手が5万人減ることになり現在ある大学の淘汰が熾烈になり、18歳人口だけにぶら下がって大学経営を行う時代は終わった。県民全員がうちの大学生だというぐらい経営のあり方を早急に考えていく必要がある。今日、関根氏の講演の中でのOECDのデータは正に示唆的で、どのように考えるかをしっかりと議論していけば自ずと「生涯活躍のまち」が解決策のきっかけにとなるのではないかと思う。
関根氏:講演の中のOECDのデータは、もの凄く典型的であり、私達がもう一度大学に戻れば2018年問題は解決する。40歳になったら、もう一度若者に戻り100歳まで生きるとして残り60年の人生をどう生きるのか考える節目となれば良いと思う。そういった意味での大学の課題は、生徒は若い人のみという大学の思い込みであり、認識を完全に払拭するべきだと思う。そしてシニアの皆さんが、ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスを学び、どんどん起業していけば、若い人を雇用でき、ソーシャルイノベーターとして世の中の課題を解決する側に立てると期待する。これを支援するのが大学の果たすべき役割であり、この循環が起きていないことが一番の課題だと思う。

◆関西版生涯活躍のまちの実現に向けてのキーワード 松田氏:最後に生涯の活躍のまちづくりを実現するにあったてのキーワードを一言ずつお願いします。
藤村氏:住み替えたくなるようなコミュニティの創造。
彌重氏:至福の時間。そのためにハードがあり、街がある。
受田氏:ローカルイノベーター待望。地方に誘致される人材はローカルイノベーターであって欲しいと思う。
関根氏:シティズンシップ。リタイアメントコミュニティは、誰かがつくってくれお膳立てされた中に入っていく患者さんのような世界ではありません。自分達でこの世の中をこれからどう変えていこうかという意識の高い市民の集まりであるべきである。日本に必要なのはシティズンシップエデュケーションを受けた人々が集まり各地域に移住しCCRCを自分達で運営していくことだ。そうなれば、色々な企業が参入してくれると期待される。
松田氏:将来活躍のまち協議会を設立する意義を三点あげたいと思う。ビジョンとプロセスとプロジェクト。ビジョンとは好事例や課題を共有して関西ビジョンのモデルを示す。プロセスは実現するための仕組みづくりと産学連携、パートナー戦略、あるいは制度設計を考えるといったプロセス。最後はプロジェクト、ビジョンやプロセスがあっても具体的なものがないと動かない。それは、ある地域をターゲットしたモデル事業やケーススタディを進めていくというビジョン、プロセス、プロジェクトが三位一体となって進むということが大切だ。

閉会の御挨拶
株式会社健康都市デザイン研究所 代表取締役社長 井垣貴子
御参加戴きました皆様、お忙しい時期に誠に有難うございました。関西広域圏は、生涯活躍のまちづくりが大変遅れております。なっちゃってCCRCではなく、日本が世界に誇るような関西型モデルを沢山つくりたいという志で我々は集まっております。今回は公開型で講演会を開催致しましたが、これからは会員になって戴いた方々でのネットワークで研究会等色々な事を行って参りたいと考えております。入会金無料、年会費に関しても今年は特別チャーター会員という事で無料にさせて戴きます。志を共有して下さる方々、ビジョンを共有して下さる方々、志があれば必ず道は開けます。関西の行政、経済界、大学、金融、皆で力を合わせて、関西人の底力をみせましょう。ぜひご入会戴き、誰かがするのではなく私達皆で邁進していくきっかけとなり、今日のこの日がキックオフへとなればと願っております。本日は、誠に有難うございました。

講演会後には、同大阪大学中之島センター 交流サロン サロン・ド・ラミカルにおいて情報交換会が盛大に開催され、講師を交えて参加者による活発な意見交換が行われました。誠に有難うございました。