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「未来医療健康都市関西・第4回 Future Forum」開催報告

2016年4月25日

「未来医療健康都市関西・第4回 Future Forum」を2016年1月25日(月)、世界文化遺産 総本山 醍醐寺において、産学官の方々にご参加戴き、盛大に開催させて戴きました。心より御礼申し上げます。
「新春特別企画」とし醍醐寺 霊宝館を会場に醍醐寺の国宝や重要文化財が鎮座する中、真言宗長者であられる醍醐寺第百三世座主 仲田順和猊下とエイジング医学の権威の京都府立医科大学学長 吉川敏一先生に「人・企業・都市の健康が関西を拓く☆☆☆医学界と仏教界の重鎮による新春特別対談」と題し、天下人太閤秀吉をも虜にした醍醐寺千年の教えと、最先端の医学のサイエンスがクロスオーバーする刺激的かつ大変貴重なご講演・ご対談を賜りました。
以下にご講演要旨を紹介させて戴きます。

講演1
講演者:醍醐寺第百三世座主 仲田順和猊下
●醍醐寺千百余年の祈りの伝承と管理経営哲学
醍醐寺は聖宝理源大師が上醍醐山上に准胝観音像並びに如意輪観音像を安置し開創され、そののち醍醐・朱雀・村上三帝のご信仰がよせられた。醍醐天皇の御願による薬師堂が建立され、五大堂も落成するに至って上醍醐の伽藍が完成した。それに引き続き下醍醐の地に伽藍の建立が計画され、釈迦堂が建立。醍醐天皇崩御の後、醍醐天皇の良縁・隨縁・尊縁の三つの祈りを表現し宇宙全体を表す五重塔が朱雀・村上天皇により落成し、下伽藍が完成された。
時代の移り変わりと共に平安時代~鎌倉時代は皇族・貴族に、南北朝時代から桃山時代では豊臣秀吉などの武家に守られ、江戸時代からは民衆に開かれ、開山以来多くの人々の祈りの中に歴史を育み、文化が伝承された。
莫大な寺宝・文化財は開山以来、歴代の座主や無数の僧侶達の不断の活動と、多くの祈りの中に尊重され、守り続けられてきた。明治38年以降100余年に渡り、寺独自の努力により醍醐寺の志を大切にしながら、調査・目録作成を進められている。年を追うごとに学術資料としての重要性を高く評価されるに至り、文化財管理の基礎となった。現在では、伝承される古文書・仏像・美術工芸・建物物など全ての文化財についてデータベース化を基に管理システムが構築され、保存、管理、調査の基本方針に修理、公開が加えられ、文化財の積極的な管理を行っている。

●こころの健康、いのちの尊厳 ホスピス緩和ケアの提唱「臨床宗教師」
世の中では「生きる」ことと「死ぬ」ことを別々に考えている方が多くいるが、それは間違いであり、人間の生き方・いのちは輪のように廻っている(輪廻転生。)「臨床宗教師」は祈りの中の実践であり「実修実証」とし、醍醐寺の祈りを心から心の伝導として、24時間の看護体制の中において患者を手で癒し、耳で患者の苦しみを知るべく「あなたのお話お聞きします」という活動を行っている。醍醐寺の1000余年の祈りの伝承を活かし、その方のお話を聞き、その方の人生を聞くことで、人生の終焉において、御本人のこころの整理だけではなく、その方をきちんとお送りすることにより、後に残された方とお医者様との潤滑油になり、こころの緩和ケアに役立てて欲しいと願っている。

講演2
講演者:京都府立医科大学学長 吉川敏一先生
最先端医療を行う大学病院等では「こころのケア」が遅れており、医療の現場では、延命することが正しいのか疑問視されている時代となっている。京都府立医科大学では日本に先駆けて、緩和ケアの啓蒙と実践を行ってきた京都府立医科大学緩和医療検討会の活動をベースに、「疼痛緩和医療部」が中央部門の一つとして設置され、講座を開設し緩和ケア教育の充実、そして看護・治療においても、痛みの緩和だけでなく、精神面も含めたケアを実施している。
今までの壮絶な死ではなく、最期の患者様が瞑想する部屋、家族で過ごす部屋、患者様を見送る部屋等、患者様本人、その家族が穏やかな気持ちで終焉を迎えられるような場所を大学病院の中に作った。患者様、そしてその家族からから喜びの声や感謝の声を聞いている。
命を一分一秒でも長く延ばすことを目指していた医学の認識が覆させられようとしている今日では、現在の最先端医療でも治療の手が及ばないような患者様には心のケアが重要となってくる。また、超高齢社会を迎え課題である認知症対策においても、地域の取り組みとして医療だけではなく、弱者を温かく見守る体制が必要である。

●最先端ヘルスサイエンス
アンチエイジング・ヘルスとは、加齢という生物学的プロセスに介入し、加齢に伴う動脈硬化や癌のような加齢関連疾患の発症を下げ、健康寿命を目指す医学である。酸化ストレスの老化影響は全ての臓器に及ぶが、見た目の老化においては、ストレス負担が密接に関係しているように考えられている。ブレイン・ヘルスがアンチエイジングの次に注目を浴びている。ストレスが体に悪いことは周知されており、認知症は脳にタンパク質が溜まること生じる。脳に異常なタンパク質を溜めないためにはストレスが大敵であり、心が安定し安らかな状態であるリラクゼーションは非常に重要である。また、瞑想・マインドフルネスは、脳を活性化させ、瞑想によりストレスにダメージを回復させることが科学的根拠として分かってきた。
一方で脳機能の解析が加速度的に進んでおり、莫大なデータであるビッグデータを用いることにより自覚症状がないうちに対処する方法が見いだされてきている。このことにより、認知症状のない時期から予測診断を行い、予防・早期治療などの認知症の超早期診断が可能となる。
更に、プレシジョン・ヘルスでは、西洋医学のように画一的な治療ではなく、オーダーメードな個々に応じた診断、治療が行われるが、ビッグデータ分析によりプレシジョン医療が可能となる。

●関西を“世界健康首都”へ
関西が世界から医療健康産業と高度人材が集結する国際医療健康産業イノベーション拠点となるべく、関西圏の医科大が連携し、新たな技術や分野の組合せによる日々の健康増進の実現や、関連産業がシームレスに連携できる環境を整備し、医療を包括的・総合的にマネージメントできる次世代の人財育成を行い、医療産業の活性化や創生等、未来健康医療の創生による関連ビジネスの拡大・成長及び健康増進による社会と企業の発展を目指す。関西が世界の健康医療・健康長寿社会を先導する“世界健康首都”となることを願う。

講演後には、醍醐寺第百三世座主 仲田順和猊下 と 京都府立医科大学学長 吉川敏一先生との大変貴重な対談が行われました。宗教家としての視点、医学者としての視点において、医療現場における心のケア問題、地域との連携の重要性等についてお話戴きました。

第1部の講演・対談後には、重要文化財である「純浄観」にて仲田総務部長様による「心修行」が行われました。御講和後には、大変趣のある室内のしつらえや非公開エリアである美しい御庭の夜景を楽しみました。
第2部では、重要文化財である「白書院」にて多数の方に御参加戴き、新春醐山料理を楽しみながら交流が和やかに行われました。
お食事後には、「修証殿」にて「新春祈願写経」を行いました。その後、非公開エリアである「三宝院弥勒堂」にて、「特別法要」が厳かに行われました。

醍醐寺様の御高配を賜り、大変有意義なフォーラムを開催出来ましたことを深く感謝申し上げます。