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「未来医療健康都市関西・第3回 Future Forum」開催報告

2016年1月6日

「未来医療健康都市関西・第3回 Future Forum」を2015年11月20日(金)、大阪大学中之島センター 佐治敬三メモリアルホールにおいて、自治体様、経済団体様、企業様等から160名を超える方々にご参加戴き盛大に開催させて戴きました。心より御礼申し上げます。

国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 理事長 橋本信夫先生に「国立循環器病研究センターの将来展開と健都医療クラスター形成への期待」と題してご講演戴きました。
西日本唯一のナショナルセンター(国立高度専門医療研究センター)である国立循環器病研究センター(国循)は、平成30年度を目指し、新大阪駅近郊への移転建替に取り組まれています。国循を核として、市民病院、商業・宿泊施設、医療系企業、ウェルネス住宅、健康広場等を集積させ、約30haに及ぶ健康・医療のまちづくり「健都医療クラスター」を進める“夢の大プロジェクト”です。健都医療クラスターを中核に循環器病予防、健康寿命延伸、ビッグデータ解析等、関西の新たなビジネス展開等について、ビジョンや考え方を軸に大変貴重なご講演を賜りました。
ご講演後の意見交換では、橋本理事長先生と参加者の皆様との有意義な意見交換がはずみ、誠に有難うございました。

以下にご講演要旨を紹介させて戴きます。

●国立循環器病研究センターについて
 1977年に西日本唯一のナショナルセンターとして日本で2番目に吹田市に国立循環器病研究センターとして設立され、2010年に独立行政法人国立循環器病研究センター、2015年4月より国立研究開発法人国立循環器病研究センターに改称された。センターでは、我が国の脳卒中、心臓病等の循環器病対策の中核的機関として、循環器病についての調査、研究、医療技術の開発、医療の提供及び医療従事者の人材育成が行われ、心臓移植・人工心臓開発の先駆的、中核的な役割や、脳卒中医療の先導的役割、心臓血管手術における治療法の改良・開発、世界が注目する新規生理活性物質の発見とその臨床応用などが行われている。

●将来設計に関するVision、そのための基本認識
循環器病制圧と国際戦略としての医療イノベーション推進のために、循環器疾患分野の予防・医療・研究で世界をリードする拠点を目指し、地域に密着しつつナショナルセンターとしてのミッションである「循環器病の予防と制圧」の拠点を形成することと、オープンイノベーションにより最先端医療・医療技術の開発で世界をリードすること、そしてオープンイノベーションに連動したエリアの産業活性化により、国際級の複合医療産業拠点(医療クラスター)を形成することをVisionの核とした。
将来設計は様々な視点で考えなければいけないが、以下の4つの視点の重要性について述べた。すなわち、Comparison、Bottle neck、Reverse innovation、Big dataの4つの視点である。
Comparison:真意を見極め、表面上だけの情報に惑わされないよう留意する必要があり、実態を理解すれば最善な対応を行うことが可能となる。違う職種、違う世界(業種)同士であればコミュニケーションをとることが非常に困難ではあるが、イノベーションセンター・パークでは医師をはじめとする医業者と医療機器や薬を開発していく技術者とのコミュニケーションを円滑にしていくことで、意識の乖離の解消や新しい技術の創出、今までに越えられなかった様々な障害を乗り越えられると期待されている。
Bottle neck:発展の阻害となっているボトルネックは何かということを見極めることが重要である。そして、ボトルネックの解消ということに力を集中させることが改革に最も重要である。
国立循環器病研究センターの利点(advantage)は、心臓血管と脳血管領域の施設を最初から併設しているセンターであること、そして研究型の大学と異なり課題解決型の研究施設を併設していることである。東京とは離れていていることは不利な条件であるが、離れていることの利点を生かすことが重要である。建物の老朽化も新しく建替えることによって内容的にも新しいセンターをつくることができる千載一遇のチャンスであると考えるべきである。
Big data:情報源であるデータの量が異なることで本質が変化してくる。今までは因果関係からの考え方であったが、ビッグデータを取り入れることで相関関係の考え方となり、今までには見えなかった世界が見えてくる。人の生活習慣は非常に煩雑で複雑である。ビックデータを取り入れることにより、ある個人に対する生活習慣、行動変異に介入していくことが可能となりその集積・解析は、今後は非常に大きなマーケットなるであろうことが期待される。
Reverse innovation:先進国で製品を開発し、それを新興国のニーズに適した形にローカライズ化していくことが従来のイノベーションの手法ではあった。近年は新興国で開発した製品を先進国に展開するリバースイノベーションという概念が注目されている。オープンイノベーションセンターでは、開発する技術者は医師や医業者などの現場の人達と話し合うことで、新しい発想が生まれ今までにない新技術や新製品が創出されることが期待される。

●国立循環器病研究センターを核とした医療クラスター形成
国立循環器病研究センターを核とする医療イノベーション創出のための産官学民連携拠点とし、健都医療クラスター形成を目指す。
移転地であるJR岸辺駅近郊を「北大阪健康医療都市」と名づけ愛称「健都」とした。医療クラスターでは、国立循環器病研究センター内にオープンイノベーションセンターを設け企業等との共同研究拠点とし、センター近隣に設けられる約4haのイノベーションパークには企業や大学、研究機関等を誘致する。
オープンイノベーションセンターの最大の利点は研究拠点と同じ屋根の下に現場(病院、研究所)があることであり、先端的医療機器・医薬品・再生医療等製品、健康関連製品等様々なものの創出が期待される。またイノベーションパークでは、国立循環器病研究センターの近くにあることで、タイムラグなく相談や意見交換が出来るような密接な関係若しくは緩やかな関係の中で周辺街区と連携した研究開発・試作等による新製品、先端技術の創出が期待される。

●国立循環器病研究センターでの具体例
巨大タービンと同様の技術を活かした世界最小の人工心臓装置や、「やさしくおいしく」をテーマに減塩に関するレシピ・商品など国立循環器病研究センターを中心としたヘルスケア事業が展開されている。今後は、健都エリアにおける医療機関とスイミングスクールなどが連携し行う運動指導サービスや、医療機関と外食・配食事業者が連携して行う栄養サービスなど、医療と介護の中核領域は「保健」で支えつつ、周辺領域に「産業」として拡大させることである。

医業者と技術者との垣根を取り除きオープンでフラットな組織作りを行っていくことで、新たな発想が生まれ新たな技術、産業が創出されることで、大阪、関西のますますの発展と、循環器病の患者さんを減らしていけるのではないかと期待している。

講演会後は、同大阪大学中之島センター 交流サロン/サロン・ド・ラミカルにおいて多くの方が参加され、情報交換会が盛大に開催され、講師を交えて参加者による活発な意見交換が行われました。誠に有難うございました。