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「つぼみ保育園」と特別養護老人ホーム「高殿苑」を見学させて頂きました。

2009年12月25日

社会福祉法人「邦寿会」理事長鳥井信吾様(サントリー株式会社副社長)のご厚意で、「つぼみ保育園」と特別養護老人ホーム「高殿苑」を見学させて頂きました。

「邦寿会」はサントリー株式会社創業者、鳥井信次郎様が「事業の利益は社会に還元すべき」の信念に基づき、1921年(大正10年)、貧困者のための無料診療所を開設されて以来今日まで、90年近い歴史をもつ社会福祉法人です。ノーマライゼーションの考えを基本に、「高殿苑」は、1974年(昭和49年) に設立された大阪市内で初めての特別養護老人ホームで、制度に先駆け、ショートステイや寝たきりの方への入浴サービスに取り組むなど、入居者の方々の生活に温かく寄り添う介護を実践されておられます。同一敷地内にあって扉一つでつながっている「つぼみ保育園」は1975年(昭和50年)に開設され、一貫して地域に根差し、子どもたちひとりひとりの“つぼみ”を愛情いっぱいに育て、未来に素晴らしい花を咲かせるような保育をこころがけられています。

この施設の魅力は何と言っても保育園と老人ホームの複合施設であるということ。昨今ようやく注目されるようになった2つの用途の複合であるが、ここでは昭和50年の時点で既に出来上がっていることに驚かされます。

「つぼみ保育園」で、まず案内されたのは、何と、お茶室。
このお茶室では、5歳児の園児たちが、月2回お茶を体験しているということでした。
お茶室を作るのは開設時からの条件であったそう。
園児はお茶の体験を通して行儀作法やお運びの作法、そして心の安らぎなどを自然と習得していくそうです。また、隣接する「高殿苑」のお年寄りにお茶をふるまったり、野点をしたり、お年寄りと園児たちが自然な交流が生まれる仕掛けが様々工夫されています。

他にも、古い建物であるが故の工夫や、月に1度のバイキング給食など、園児たちの創造力をかきたてるような楽しいアイデアがいっぱいでした。園内を見学させていただく間中、園児たちの元気いっぱいの笑顔とあいさつが絶えず、都会の中心にある保育園にもかかわらず、もやしっ子のようなひ弱なイメージとは無縁の、自由でのびやか、心身ともに健やかに育つ子どもたちの姿に感動しました。

園長先生は、「『核家族が増えて最近のお子様はお年寄りとどう接していいかわからない園児が増えた』と他園の保育士さんから聞くことがありますが、この保育園では全くそのようなことはなく、子どもたちはお年寄りにごく当たり前のこととして接しています。」と話しておられたのが印象的でした。

また「高殿苑」でも、「(大人では無理なのに)子どもたちがお年寄りに話しかけると、お年寄りから自然と笑顔がこぼれます。それが本当に素晴らしいことだと思います」と話しておられました。本当に子どもの力はすごい。高齢者と子どもたちが同一敷地内で生活することから生まれる相乗効果とは、まさにこういう日々の営みなのだと実感しました。
「高殿苑」では、常に園児たちの無邪気に遊ぶ賑やかな声が伝わってきていました。
廊下の窓越しから園庭で遊ぶ子供たちを眺めるだけで、気分が晴れやかになります。
特別養護老人ホームで生活されているお年寄りの方々にとって、子どもたちとの豊かな交流はどんな薬にも代えがたい良薬だろうと思いました。

建設時から長い年月が経つているため、建物としての課題ももちろんあります。
しかしながら、使う方々の工夫や思いやりで、改善されている部分も多く、保育士さんたちの発案で室内の安全柵がつかまり歩きの柵を兼ねてオリジナルにデザインされているなど、日々保育を実践されている視点ならではの創意を園長先生から色々教えていただき、私たちの仕事分野である施設企画や設計、環境デザインにおいて大変勉強になりました。私たちも微力ながら、子どもたちやお年寄り、働く保育士さんや介護職の方々にとって身心ともに健やかで幸せ感を感じる環境づくりを目指し、2つの施設の見学から学んだことを役立てていきたいと思います。

見学でお世話になったサントリー株式会社と「つぼみ保育園」と「高殿苑」の皆様には、貴重な時間を親切にご説明して頂き、本当に感謝でございます。どうも有難うございました。